当然ながら、福島でも風評被害が発生した。いや、「した」と言うよりも、「している」と表現した方が正しかろう。米穀を例にとってみよう。
「何よりもショックだったのは、スーパーの棚から『福島』の文字が消えたことです。関東、関西、中部でも販売してきたのですが、逆風は今も強く感じています」と、JA全農福島米穀部に電話取材した際、担当部長が厳しい現状を語ってくれた。
福島の米は、全袋放射線検査が行なわれている。したがって、市場に流通する米はすべて、少なくとも安全基準を満たしたものであることは間違いない。しかしながら、市場の反応は違うのである。『福島』と冠されたあらゆるものに対して、アレルギー反応を示しているのだ。これが『風評被害』である。
福島では、例年44万トンの米が生産されている。それが昨年は35~36万トン程度に下がった。これは、津波の塩害や地震による水路の崩壊などによるもので、原発由来のものではない。しかし、天災による被害に加えて風評被害である。「つくれない」「つくれても売れない」「売れたとしても安い」と、まったく悪夢のようだ。
「それでもやっと、収穫された米は全量売り切れるメドが立ちました。今年は米が不足気味だったため、福島にもお声がかかった、というのが実情だと思います。価格は一昨年の価格から1割ほど安くなっていますが、それでも一安心しました」。
今年の米の価格は、一般的に上昇傾向にある。そのようななかでも、福島の米だけは1割引かれてしまっている。その差額分は東電に請求することになるが、それでも農業従事者各位の不満は払しょくできない。
まず、差額を埋めてもらえたからといっても、それで利益が生まれるわけではないからだ。発生した損害をただ埋めてもらうだけのことで、それによって生活が豊かになるわけではない。「ほかの地域の米価は上昇しているのに、なぜ自分たちだけ」という気持ちは理解できる。
次に、損害請求には精神的苦痛などは含まれていない点も挙げられる。福島ブランドを傷つけたことに対しては、今のところ何の賠償も考えられていない。この1年、米を販売するために右往左往して苦心に苦心を重ねてきた、その努力はまるで報われないのである。
最後に、先行きに対する不安だ。昨年の収穫分は、「米不足」という追い風を受けて、何とか販売するメドが立った。だが、来年は?再来年は?――この風評被害は何年続くか、誰にもわからない。それが、農業関係者を悩ませているのである。
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