外食産業界で米不足が懸念されている。現在、大手外食チェーンをはじめ、中小の飲食店が、安心で安全な日本の米の確保に力を注いでいる。今まで当たり前だった日本の米が外国産の米に変わると、特にどんぶり物などを取り扱うチェーンにとっては、食感や味、風味などが微妙に変わる可能性もあり、国産米の確保は死活問題ともなっている。
日本の米自給率は今までほぼ100%で、食材の多くが外国産であっても、米はほとんどが国産であった。過去に1993年の凶作時で75%まで落ち込んだ時期があるが、農林水産省も平成23年産の米の予想収穫量を813万4,000tとしており、福島の出荷制限米を除いても米の生産量は800万トン以上あり、数字上は例年と変わらず、米が不足するような事態とはならない。関係者によると、2011年産は原発事故の影響で福島県産の米の一部が出荷制限(国の基準値で放射性セシウムが1キロあたり100ベクレル以上)となった。出荷制限米が数万トンあるものの、100ベクレル以下の米はすでに生産者の手から離れ、米業者が買い付けをほぼ完了している状況という。
では、一体何故、不足しているのか?関係者に話を聞くと、様々な要因が浮かび上がってくる。
まず、1つは米農家が今まで以上に備蓄分を増やしていること。「米農家は自分たちが食べる備蓄米に加え、今まで以上に親族や知人、友人から『米を売ってくれないか』と言われていることで、生産量は例年並みであっても、市場に出す米の量をぐっと減らしている」と指摘。
次に前述の福島の米が、生産者の手から離れても、すべてが市場に出回っていないということがある。福島県産は年間の生産量が35万tあり、全国の4~5%を担っている。出荷制限米を除いても、買い付けされた米は30万t位はあると言われている。だが、国の基準では安全とは言っても、売る側も買う側も慎重になっているため、なかなか市場に出てこないという見方が有力だろう。
このような事態を先読みして、一部スーパーでは先行して中国産米を販売。外食の一部も試験的に外国産米を利用しているところもある。これは外食に限らず、今後、家庭用の米にも少なからず影響が出てくる可能性が高い。国産米が不足すれば、今後、国産米を利用した商品は値上げとなり、外国産米を値下げするといった事態も起こりうる。しかし、米不足に際して皮肉にも日本政府は減反政策を行なっており、主食用作付面積は平成22年産と比べ全国計で約5万1,000haの減少となる152万6,000haとなっている。現状、米不足を改善できる余地は少ないのだ。
このような事態に際して、我々は、今まで当たり前だった国産米を有難いものとして食べなければならない、そんな時代がすぐそこまで来ていることを、まずは理解しなければならないだろう。
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