ロンドンオリンピックで、五輪史上初の銀メダルを獲得した女子サッカー日本代表。決勝戦で王者アメリカに敗れたものの、なでしこジャパンの誇るパスサッカーで、ファンを存分に魅了した。準々決勝、準決勝では、ブラジル、フランスを相手に、組織的な守備が光った。内容では劣勢ながら、泥臭く勝利をもぎ取った。
個々人では欧米の選手に比べると、高さ、シュート力、当たりの強さなどで見劣る。しかし、組織力では上回っている。個では負けるのに、なぜ、組織では勝てるのか。
なでしこジャパンの連携の良さに見る、組織の強さとは何なのか。指揮官や各選手たちは、どのように機能したのか。
<組織で"連動"する>
セットプレーで、日本の選手と欧米の選手が一線に並ぶと、アメリカのエース、ワンバックやカナダのFWシンクレアは、日本の選手より頭一つ飛び抜けている。ロンドンオリンピックの決勝で再三、日本ゴールを脅かしたモーガン、ロイドも、ずば抜けたスピードに、日本選手を上回る肉体的な強さを持ち合わせている。
なでしこジャパンは、その王者アメリカやフランス、ブラジルなど欧米、南米のチームと5分以上に渡り合い、銀メダルに輝いた。
細かいパスワークから生まれる攻撃、連動する守備力のなせるわざ。昨年、ドイツで行われたワールドカップの決勝戦で、アメリカと対峙し、取られては追い付き、最後まで走り続け、食らいついてPK戦での勝利を呼び込んだ粘りが印象に残る。精神力も武器だが、言わずもがな、世界と互角に戦う強さの秘訣は、パスを細かく正確につなぐチームワーク、組織力だろう。ピッチに立っている11人が意思を疎通し合い、攻撃でも守備でも、組織的に連動する。
<戦略を遂行する>
スポーツなどの勝負事で組織が勝ち進んでいくための必要な条件の一つに「選択」がある。
なでしこジャパンが、今回のオリンピックで見せた戦略的な選択の一つに、予選リーグの3試合目、南アフリカ戦がある。初戦でカナダに勝ち、2戦目、スウェーデンと引き分けた日本は、格下の南アフリカに勝てば、予選1位。引き分けなら予選2位で通過することが決まっていた。
指揮官の佐々木則夫監督は、この試合を引き分けで乗り切り、予選グループを2位で通過することを選んだ。中2日で戦うハードスケジュールの中で、1位で通過するとグラスゴーまで約8時間の移動をしなければならず、2位の方が試合会場を移動せずに済むため、選手たちの疲労を考えると有利だからだ。そのことを選手に指示。試合会場を移動せずに次の試合に臨み、選手たちの体力を温存することを選択した。引き分け狙いに対して一部批判もあったが、ここで打った戦略が、猛攻にさらされた準々決勝、準決勝でのゴール前での踏ん張りに生きることになる。
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