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SNSI中田安彦レポート

「維新の会」の"維新"とは自民党の世代交代のことかもしれない(3)
SNSI中田安彦レポート
2012年9月21日 07:00
SNSI(副島国家戦略研究所)研究員 中田 安彦

<維新のカメレオン戦略>
 私は維新の会というのは、状況に応じて体の色を変えることができるカメレオンのような存在だと考えている。

img.jpg 維新の会が東京にも伝わってきたのは、橋下氏が「大阪都構想」を掲げて、先の統一地方選挙で、これまで小沢一郎元民主党代表と連携することで中京圏で人気を博してきた「減税日本」が震災後の自粛ムードで失速した直後のことだった。その後に、橋下氏は今も維新の会の「御意見番」を務める元通産官僚の堺屋太一氏との共著で『体制維新』という本を出した。直後に大阪市長選挙と府知事選挙のダブル選挙で大勝利し、これも話題を読んだ(体制維新とは英語で言えば、レジームチェンジになる)。

 いわば、これがカメレオンの「第一形態」である。私もこの大阪都構想自体は、震災時のバックアップ都市を目指した戦前の「大大阪(だいおおさか)」と似たようなものであり、地域活性化のために、是々非々ではあるが、評価したいと思っていた。

 その後、震災から一年たとうとして、震災後、次々に停止した原発の再稼働が議論され、消費税をめぐる政局で永田町が緊迫化した今年の春先から夏までは、橋下氏はブレーンの自然エネルギー運動家の飯田哲也氏や元経済産業省の古賀茂明氏らを軸にした、大阪市の「エネルギー戦略会議」を通じて、大飯原発の再稼働反対運動を市長自ら行ない、増税についても「マニフェスト違反」だという言い方で民主党政権を批判した。

 このいわば「弱者の味方」路線というべきリベラル路線が「第2形態」である。ところが、大飯原発再稼働については、途中で自ら敗北をあっさりと認めるかたちで、再稼働を容認するに至った。消費税についても、「地方税化」を打ち出してはいるが、増税の是非にはほとんど触れなくなった。

 今度は、「第3形態」としては、「従軍慰安婦の強制連行」問題を始めとする歴史認識問題でマスコミに発言が取り上げられたほか、集団的自衛権、9月13日には、集団的自衛権の行使を認め、靖国参拝も行なうと会見で述べるなど、旧来の自民党保守派のような主張を行なった。これは橋下氏個人の個性も関わっている。

 そして、今後は、「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)」への参加を協力に推進するということを軸にしていくだろう。民主党を離党した松野頼久氏は元々は民主党ではTPP反対派の「TPPを慎重に考える会」の幹事長だったが、あっさりと翻している。維新のブレーンには竹中平蔵元郵政民営化担当大臣(ダヴォス会議理事)もおり、日米同盟強化とTPP推進というアメリカ共和党が喜びそうな政策を掲げている。当選するかは分からないが、共和党候補のミット・ロムニーの経済アドバイザーは竹中平蔵に影響が強い、グレン・ハバード(コロンビア大学教授)ということもあり、注意を要する。

 そして、維新八策を見るとわかるが、維新の政治改革プランをすべて実現するにはどうしても今の憲法では難しい。したがって、維新の最終目標は「憲法改正」なのである。この点も、戦後レジームの脱却を目指す安倍元首相と共通しているといえる。

 前にも書いたかもしれないが、維新の会やそれにお鉢を奪われた「みんなの党」や自民党の上げ潮派である中川秀直元幹事長らは、アメリカ共和党の経済政策を日本で実行していきたいとする勢力であり、この人々を政策ブレーンとして支えてきたのが上山信一慶応大学教授(元運輸官僚・米プリンストン大学留学)や高橋洋一嘉悦大学教授(元財務官僚・元金融庁顧問・同じくプリンストン大学留学)といった、脱藩官僚たちである。それらの人脈を束ねているのが竹中平蔵氏ということであるから、要するにこれは小泉構造改革の人脈をそのまま受け継いでいる。

 アメリカ国内でも民主党政権が続いている間は、これらの共和党系知日派や日本側の受け皿も活動を水面下に潜らせていたが、アメリカでオバマ政権への批判が予想通りに高まっているなかで、前線復帰のチャンスを探している。むろん、アメリカ政府の対日要求やTPP推進は超党派の政策なので、民主党政権が継続しても日米財界はTPPによる日米経済の結びつきの強化を主張すると思う。

(つづく)

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<プロフィール>
中田 安彦 氏中田 安彦 (なかた やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。


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