提言にあたって
　福岡市は豊かな自然や充実した都市機能を有し世界でも住みやすい都市の一つとして高い評価を受けており、さらに、九州新幹線の全線開通やクルーズ船の博多港寄港、国際コンベンションの増加等、交流人口の拡大が見込まれ、さらなる成長が期待されている。
　一方で国内外との都市間競争が激化する中、地域の成長を実現させるには、地域の強みを活かした地域活性化の推進により、地域の浮揚やヒト・モノの集積・交流と、それを通じたパイ拡大を図ることが肝要である。あわせて、その基盤となる、地域経済の担い手である中小企業の活力強化、都市・交通インフラの一層の整備が不可欠である。
　こうした観点のもと、福岡商工会議所は、福岡市政に対し次の事項を提言する。
　福岡市と福岡商工会議所は「車の両輪」の関係と云われるとおり、これまでも多くの事業を連携して実施し成果を挙げているところであり、今後もより一層強固な関係を構築し、これらの事項を「共働」して取り組む所存である。

Ⅰ．地域経済・産業の振興
１ 「グリーンアジア国際戦略総合特区」の推進
　アジアの活力を取り込み、環境を軸とした産業の競争力を強化することを目指す「グリーンアジア国際戦略総合特区」構想は、地域経済の発展に寄与するものと大きな期待が寄せられている。
　特区活用による成果を数多く生み出すためにも、東アジア海上高速グリーン物流網構築のほか各種事業について早期に実現するよう特段の配慮を図られたい。あわせて、事業者や市民など広く普及啓発を図ることが肝要であり、情報発信を強化されたい。

２ 観光の振興
（１）ＭＩＣＥの推進
　福岡の国際的な知名度の向上と交流人口の拡大に向けて、国際会議やイベントなどを通じた情報発信は大きな効果が見込めることから、今後も大規模な国際会議等、これまで以上にＭＩＣＥ誘致を図られたい。
　とりわけ、年々開催数が伸びている国際コンベンションの需要に対応することはもとより、積極的に大規模な国際コンベンションや見本市を誘致・開催し、アジアに最も近い大都市としてわが国の経済発展に資するためにも、これらに対応できる大規模コンベンション施設の整備を早急に図られたい。

（２）大型スポーツイベントの招致
　ユニバーシアード（1995 年）、世界陸上グランプリファイナル（1997 年）、世界水泳（2001 年）などの世界レベルのスポーツイベントの招致・開催は、地域の活性化に大きく寄与してきた。さらなる活性化のため、今後も市で取り組んでいるフィギュアスケート「グランプリファイナル」の誘致等のスポーツイベント招致が重要である。
　こうした中、今年度、「ゴールデンオールディーズ・ワールドラグビーフェスティバル福岡」がアジアで初めて開催されることを踏まえ、2019 年の日本開催が決定している「ラグビー・ワールドカップ」の福岡での試合開催を招致されたい。
　あわせて、ニュージーランド最大の都市オークランドと姉妹都市であることから、世界最強と言われる同国代表「オールブラックス」のキャンプ地に是非立候補されたい。

（３）クルーズ客船の受入れ体制の整備
　外航クルーズ客船の博多港寄港は地域経済に大きな経済効果を及ぼしており、今後も、寄港数の増加や船の大型化により、大きな需要が期待されている。
　拡大するクルーズ需要に対応できるよう、岸壁やボーディングブリッジの早期整備、ＣＩＱの人員体制や施設強化による入国審査手続きの迅速化を図られたい。また、冷泉小学校跡地を活用し、地元の土産品等の物販機能と大型観光バス駐車機能を兼ねた施設の整備について検討されたい。

３ ファッション産業の振興
　地域の優れたポテンシャルを最大限に活かし、福岡がアジアにおけるファッション産業の一大拠点となることを目指して、関連企業・団体、学校、行政などが「福岡アジアコレクション（ＦＡＣｏ）」開催をはじめ各種事業に取り組んでいる。ファッション産業のみならず、交流人口増や流通活性化等、波及効果に広がりが出始めた同コレクションの一層の拡充はもとより、海外プロモーションなどの情報発信、人材育成、展示商談などの取組みに対し、引き続き積極的に支援されたい。

Ⅱ．魅力と活力ある街づくりの推進
１ 都心・副都心等の活性化
　九州・アジアを繋ぐ交流拠点となる福岡都心については、「特定都市再生緊急整備地域」の整備計画の充実を図り、天神・渡辺通地区、博多駅地区、ウォーターフロント地区が相互に連携しながら都市開発や規制緩和を進め、国際競争力の強化を図れるよう取り組まれたい。あわせて、都心部の老朽化ビルの建替え促進のための容積率緩和策の見直しを図り、活用を促進されたい。
　また、北天神の賑わいづくりに資するべく須崎公園や拠点文化施設等が一体となった街づくりが図られるよう整備されたい。さらに、博多区役所・商工会議所を含む街区が、立地特性を活かし都心の回遊性向上に資するとともに拠点性を持った街区となるよう、一体的な整備について検討されたい。
　このほか、香椎駅周辺土地区画整理の整備や、九州大学箱崎キャンパス跡地利用の将来ビジョン策定について早急に取り組まれたい。

２ 環境・省エネの促進
　電力の安定供給に不安を抱える中、市民生活や経済への影響を最小限に抑えるためには、企業・市民が主体的に不要不急な電力使用を抑えるよう取り組まなければならない。
　事業所や一般家庭へ省電力の取組みを促すため、積極的な広報活動を通じ啓発を図られたい。また、事業所の照明や空調をはじめとした省エネ設備の導入が促進されるよう支援されたい。

３ 地域の賑わい創出への支援
　お祭りやイベントは地域の賑わいと活力を創出することはもとより、伝統文化や食といった地域でしか味わえない体験などを観光資源として活用することで、誘客と消費による大きな経済効果が期待される。
　地域経済の活性化のため、福岡市民の祭り「博多どんたく港まつり」における「はかた駅前通り」の「どんたく広場」設置など賑わいづくりのための取組みへの支援のほか、野球・サッカー・相撲・バスケット・ラグビー等の福岡を拠点とするスポーツ競技への支援、市民マラソン等の拡充に努められたい。
　また、博多座に代表される文化施設や「博多をどり」等の芸能に対する支援、街歩きによる商店街活性化策の拡充を図り、賑わい創出を図られたい。
　更には、鴻臚館跡や福岡城址、元寇防塁等、市内に残る重要な史跡の整備に加え、中世博多をモデルとした景観整備や周辺環境と一体となった河川の浄化・改修、音楽ホール等の文化施設の建設により、新たな賑わいや魅力創出にも努められたい。

４ 安全・安心なまちづくりの推進
　安定した経済活動を営むためにも災害に対する安全性の確保は不可欠であり、学校・病院などの公共施設の耐震化や集中豪雨など水害対策、歩車道の分離等生活道路の整備、災害発生時に緊急車両の通行の妨げとなる電線の地中化等を推進されたい。
　また、「治安なくして経済の発展はない」との認識に立ち、飲酒運転撲滅や暴力団排除等の取組みを一層強化し、安全・安心なまちづくりに努められたい。

Ⅲ．中小企業の活力強化への支援
１ 中小企業のアジアビジネス・海外展開支援
　国内需要が低迷する中、成長著しいアジアをはじめとした海外にビジネスチャンスを求める中小企業が多い。中小企業による海外へのビジネス展開をサポートし継続的な取引ができるよう、海外バイヤー招聘による商談会の開催、世界各地で開催される展示会・見本市への出展等、販路拡大に向けた取組みに対する支援を強化されたい。

２ 中小企業の金融対策の充実
　セーフティネット保証制度や各種融資制度によって中小企業の経営安定に一定の効果を挙げているものの、長期にわたる景気の低迷により、中小企業は依然として非常に厳しい経営を強いられている。
　こうした中、中小企業金融円滑化法の期限が本年度末となっており、今後、急激な資金繰りの悪化や倒産の増加を招かないよう金融対策を講じられたい。

３ 中小企業の人材確保の支援
　企業経営において重要な経営資源の一つが人材であるが、中小企業においては、単独での自社ＰＲや会社説明会の実施は、ノウハウやコスト、効果の面で限界がある。中小企業が求める人材を採用できるよう、福岡市と共催で実施している「会社合同説明会」をはじめとした支援策の拡充を図られたい。
　また、中小企業においてもグローバル化が求められる中、国際展開に必要なグローバル人材の採用支援の強化が不可欠であり、あわせて福岡で就職を希望する優秀な留学生の確保や留学生が地元に定着できる環境づくりを図られたい。

４ 中小企業支援施策の拡充・連携強化
　中小企業は地域経済の活力の源泉であり、中小企業支援施策は地域経済と雇用を守るセーフティネットである。また、中小企業の支援ニーズは、起業から安定期、成長期、事業承継時などの成長段階に応じて多様であり、きめ細かな対応が必要である。
　これらの多様なニーズに効果的・効率的に対応するため、支援施策の一体的な実施を含め、一層の連携強化を図られたい。

Ⅳ．市民生活向上や地域活性化に資する基盤整備
１ 福岡空港の早期整備とＣＩＱ機能の充実
　九州・西日本地域の主要地域拠点空港として国際・国内ネットワークを形成する福岡空港は、容量限界に近づいていることや離発着の遅延が常態化しつつあり、地域間競争や多様化する航空需要に対応するためにも、福岡空港の滑走路増設に早期着手するとともに、平行誘導路の複線化についても早期整備を図られたい。
　また、国際線については、新規就航や便増の影響により旅客数が増加傾向にあることから、交通アクセスの利便性向上策並びに地域の安全確保と空港利用者の利便性向上のための税関、出入国管理、各種検疫業務を行うＣＩＱ機関について、開始時刻の繰上げや増員などにより機能拡充を図られたい。

２ アイランドシティの整備推進
　アイランドシティ地区は、アジアのゲートウェイとして競争力のある港湾の整備が図られるとともに、新しい産業の集積や良質な住環境の形成など先進的な都市づくりが進められており、市民生活や地域経済の活性化に大きく寄与するものと期待されている。アイランドシティの整備推進にあたっては、市が設置した「アイランドシティ・未来フォーラム」の提言を考慮し、施策の具体化や情報発信の強化を図られたい。
　特に、港湾機能については、着実に増加している博多港の国際海上コンテナ取扱量やコンテナ船の大型化に対応するため、新たなコンテナターミナルについて早急に整備されたい。
　また、新青果市場や新こども病院の整備等多様な都市機能の強化に伴う交通需要の増加に対応するため、早期に自動車専用道路のアイランドシティへの本線規格による延伸を行い、幹線道路ネットワークの強化を図られたい。

３ 地下鉄七隈線延伸の早期整備
　本年６月に事業許可された地下鉄七隈線延伸については、市民の利便性はもとより、九州の陸海空の玄関口である福岡の魅力を高め市の発展に資するものと大きく期待されており、早期の整備を図られたい。

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