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「日本直販」が粉飾決算で倒産~通販再編、アマゾンジャパンの衝撃
コダマの核心
2012年11月15日 10:25

 2012年、通信販売業界の再編が相次いだ。今度は、テレビ通販の「日本直販」である。
 テレビショッピングの草分け、日本直販を運営する総通(大阪市、喜多俊憲社長)は11月9日、民事再生法の適用を大阪地裁に申請した。負債総額は174億円。法人向けにコールセンター代行を営む東証1部上場のトランスコスモス(東京・渋谷、奥田昌孝社長)がスポンサーとなり通販事業の再建を図る。

 倒産の原因は、10年以上にわたる粉飾決算だ。今年6月、金融機関に元本猶予など返済スケジュールを要請するとともに、監査法人によるデューデリジェンス(財務状況の精査)を行なったところ粉飾決算が発覚した。架空の在庫を50億円以上計上して資産を多く見せていたほか、商品などの仕入れ代金を支払う買掛金を少なく計上するという手口。帳簿上は総資産から負債を差し引いた純資産は48億円だったが、実際は106億円の債務超過に陥っていた。

 同社は1961年5月に喜多進氏がペン習字の通信教育を手がける東洋ペン学会として創業した。72年10月に総合通信教育センター(現・総通)として法人改組。テレビショッピングのパイオニア的存在だった。
 過去には、庭木の手入れに使う最大3メートル伸びる「高枝切りばさみ」、掃除機の先につけて、はたきとほうきで細かいゴミを掃除する「スーパーはぼき」などのヒット商品を連発。95年9月期は売上高525億円を計上した。最近はヒット商品を生み出すことができず、11年9月期の売上は256億円まで半減。インターネット通販に押されて業績が悪化していた。

<2012年は通販再編の当り年>
nimotu.jpg 通販市場はネット通販の拡大で成長しているものの、テレビ通販やカタログ通販は停滞している。2012年、ネット通販の台頭に押されカタログ通販やネット通販が再編に動いた。
 口火を切ったのは、業界5位のカタログ通販大手、ニッセンホールディングス(京都市)。今年3月、コーヒー大手のユーシーシーホールディングス(UCC)の完全子会社でギフト販売のシャディを買収した。

 また、UCCは45億円で議決権の20%に当るニッセン株を取得して、持ち分法適用会社に組み入れた。UCCグループ入りしたニッセンは、シャディ買収で想定売上高は2295億円に増加。業界2位の楽天と並ぶ規模になる。

 5月には、業界3位のアスクル(東京・江東)のM&A(合併・買収)があった。ソフトバンクグループのネットサービス最大手、ヤフーはアスクルの第三者割当増資を引き受けて42.6%を取得した。取得価格は329億円。アスクルはヤフーの関係会社になった。

 アスクルは、オフィス家具のプラスの通販事業が分社化した。オフィス用品を中心にBtoB(対企業取引)の通販事業を展開しており、10年からはBtoC(対消費者取引)の通販事業子会社のアスマルを展開している。ヤフーは、BtoB通販トップのアスクルの買収によって、2年以内にオンライン通販事業で圧倒的なナンバーワンになることを目指すという。

 7月のテレビ通販大手、ジュピターショップチャンネル(JSC、東京・港)のM&Aは今年最大だった。親会社の住友商事が、JSCの株式50%を米投資ファンドのベインキャピタルグループに譲渡した。譲渡額は1000億円弱にのぼった。JSCは約4000億円規模の国内テレビ通販市場の約3割を占める最大手で、通販業界では7位だ。

<アマゾンが導入した無料配送の衝撃>
 通販業界が再編に走り出したのは、アマゾンジャパン(東京・目黒)の衝撃である。ネット通販で世界的に急成長した米アマゾン・ドット・コムは、2000年11月に日本語サイトを開設して、日本市場に参入した。日本法人のアマゾンジャパンは当初、書籍、雑誌のネット通販からスタート。現在は、ファッション、家電、食品など幅広く扱う総合ネット通販に急成長した。商品点数は約5000万点。業界紙の通販新聞社によると、売上高は約4800億円と推定しており、業界トップを独走している。

nimotu_3.jpg 業界に衝撃をもたらしたのは2010年に、アマゾンが全品配送無料を導入したことだ。アマゾンが自社で在庫している商品なら、100円、200円の品を1個買っても配送料は無料。「絶対に儲かるわけがない」。業界が驚いたのも無理はなかった。アマゾンは配送料を300円(1,500円以上購入した場合は無料)にしていたから、全品無料にすると、間違いなく赤字になるからだ。
 米アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスCEO(最高経営責任者)が、ライバルを引き離すために導入したのが無料配送だった。短期的に損をしても、リピーターが増えれば、長期的には成功する。一歩、間違えれば、巨額の赤字に転落する危険な戦略だ。

 スタート当初、米国の流通アナリストたちは否定的な見解を示していた。米アマゾンは赤字を垂れ流し続けていたが、ネットバブルが弾けて、同業のネット通販会社が脱落していくと、爆発的に売れるようになり、高収益企業に変貌した。米国で成功した「全品無料配送」の手法を日本にも取り入れたのである。

<通販各社に広がる無料配送の困惑>
 アマゾンの無料配送が通販業界にもたらした衝撃は大きかった。ファッションの通販サイトZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイ(千葉市)の前澤友作社長が、ツイッターでお客に暴言を吐く騒動を引き起こした。

 事の発端は、ツイッターユーザーによる「1,050円なくせに送料手数料入れたら1,750円とかまじ詐欺やろ~ゾゾタウン」というツイートだった。
 前澤社長は、12年10月20日のツイートで、「詐欺??ただで商品が届くと思うんじゃねぇよ。お前ん家まで汗水たらしてヤマトの宅配会社の人がわざわざ運んでくれてんだよ。お前みたいな感謝のない奴は二度と注文しなくていいわ」と応酬した。
 これがネット上で批判の対象になり、株価まで下落。10月31日、前澤社長は謝罪に追い込まれ、原則399円だった送料を無料にすると発表した。

 アマゾンに追随してスタートトゥデイが無料配送に転換したことで、通販業界に困惑が広がっている。もともとネット通販は利益がとれなかったうえに、送料まで無料にしたら、赤字経営に陥り、バタバタ破綻する通販会社がでてくるからだ。

 アマゾンショックに押し出されて通販業界の勢力図は大きく塗り替わる。アマゾンジャパンに次ぐ2番手は、通販事業者に場所を貸す楽天市場の楽天、ヤフー=アスクル連合、UCC=ニッセン連合が競う。現在業界4位のテレビ通販大手、ジャパネットたかた(長崎県佐世保市)と、同6位のカタログ通販の元祖、千趣会(大阪市)の独立系がこれからの通販再編の焦点になる。


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