衆院選福岡10区から無所属出馬を表明していた自民党元議員の西川京子氏は、九州沖縄ブロックの自民党比例単独で立候補した。公示された４日は、小選挙区から出馬のために準備していた出陣式・第一声を比例候補として予定通り行なった。北九州市の小倉駅南口・コレット前では、小泉郵政選挙以来トレードマークとなった「みかん箱」に乗って、約250人の支持者を前に第一声をあげた。

　西川比例候補は第一声のなかで、比例単独に回るように要請された経緯を紹介。安倍晋三総裁から２日夜、電話があり、「共倒れになる。国政にあなたが必要だ」と言われ、その直後、麻生太郎元首相からも電話があり、「（安倍総裁と）２人で話した。あなたに議員バッジをつけてもらわないと困る」と求められたと述べた。周囲によれば、そのときは西川氏も「茫然とした」という。

　西川比例候補は、「（元首相の２人の要請を）断って無所属で出たら自民党に戻れない。無所属の１議員では（国会議員としての）仕事ができない」と力説した。「３年余の民主党政権で政治の信頼が崩れた」と批判し、持ち前の外交政策などを訴え、デフレ対策とエネルギー、原発問題では「原発を再稼動すべきだ」と、"自民党本流"ならではの持論を展開、支持者から喝采をあびていた。

　陣営幹部からも「苦渋の決断だ」との声が出るのに加え、気になるのは「経緯が不透明」という支援者らの声。応援弁士のあいさつでは「気持ちを切り替えないといけない」との訴えもあったが、「国政復帰確実になったので、ほっとしている。おめでとうございます」とあいさつも飛び出し、陣営には安堵した様子もうかがえる。

　自民党九州沖縄ブロックの比例名簿順位は、小選挙区と重複立候補した33人（全員１位搭載）に次ぐ34位。西川比例候補は取材に対し、「自民党のトップからの話を断ることはできない。除名になっては、外交、デフレ対策、教育など自民党として実現したい仕事ができない」と語った。

　西川氏は、2005年に福岡10区から自民党公認で出馬して当選し、前回は落選。今回の選挙では、11区から鞍替えした山本幸三前議員が10区の公認候補となり、西川氏は無所属での出馬を表明していた。

　分裂を回避した自民党の山本候補は、比例との重複立候補をせず、小選挙区単独。出陣式で「重複を辞退し、退路を断った戦い」と強調した。小選挙区単独は、本人の覚悟を決めた決断であると同時に、西川氏が比例に回る条件だったとの見方も出ている。

　一本化したとはいえ、公示前の段階で80の推薦団体・企業を誇る山本陣営も、医師会からの推薦が欠けていた。小倉医師会会長は、西川比例候補の第一声に駆けつけている。今後の動向が気になるところだ。
　また、西川陣営では「西川当選のためには、西川と書いてもらうのではなく『比例は自民党』」と力が入る。一方、山本陣営は公明党とのバーター協力体制が整い、候補者本人が「小選挙区は山本、比例は公明党」と訴えている。一本化した力を発揮するかどうか、16日の投票日へ向けて、微妙な立場の違いを抱えて走り出した。

※記事へのご意見はこちら