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日本国家"根源的変革"の処方箋シリーズ

日本経済はなぜ再生できないのか!(前)~日銀は通貨や物価の番人ではない!?
日本国家"根源的変革"の処方箋シリーズ
2012年12月10日 11:39

 「国家変革~地域変革の波動」というテーマで早稲田大学政経学部教授、エコノミスト原田泰氏に聞いた。サブタイトルは、リーマンショックと関係のない「日本の景気がなぜ回復しないのか」と、国民の全てが不思議に思っている疑問の答えである。日銀は、日本国の景気よりも、銀行経営の方が大事ということらしい。何とも、情けない話である。その一方で、米国も、韓国もGDPが過去最高になっている。

<問題点は「円高」、「デフレ」、「規制」!>
 ――相変わらず、日本経済は停滞しています。毎日のように著名・大企業のリストラの話が新聞に載っています。今、日本経済はどのようになっているのでしょうか。

haradasi.jpg 原田泰氏(以下、原田) 日本国中が「長い経済の停滞で何とかしてくれ」と悲鳴を上げています。
 問題点は、円高、デフレ、規制の大きく3つです。円高になると輸出産業の製品が高騰して売れなくなり、企業は苦しくなって社員をリストラします。賃金が減額され、失業も増えるので消費が減速します。その結果、輸出産業以外の地場産業へ波及、さらにサービス業へも波及し、いわゆる悪循環のデフレスパイラルが起こります。この過程で、企業は海外に工場を建設し、雇用が流失します。リストラされた社員も食べなければなりませんので、海外の企業からヘッドハントされれば技術を指導します。この結果、韓国や中国へ技術が流出します。このことは、長期的にも、景気の回復を遅らせることになります。

  次に規制も大きな問題です。このような時には、新事業や新産業の台頭が景気回復のためにも重要です。ところが、規制が厳しく、土地や機械の担保なしでは銀行からお金が借りることができません。いわゆるベンチャー企業が起こせないのです。

 地方でも同様です。規制の枠を外そうとしても、国との関係で思うようにいきません。現在では女性も貴重な立派な労働力です。しかし、大都市では、女性が働こうとしても子供を預かるところがありません。コストのかかる規制があり、新たに保育所をつくるのが難しいのです。待機児童が増え続けています。そもそも、地方の小さな自治体では、仕事そのものがありません。

<正解は簡単、政治の力も重要です!>
 ――確かにとても困った状況ですね。どうしたら、よいのでしょうか。

 原田 正解は簡単です。円高、デフレ対策は金融緩和を行なえばよく、規制は撤廃、政府の介入を減らしていけばよいことです。この簡単なことがなぜできないのか、そこに様々な問題が横たわっているからです。しかし、方向性は間違いありません。私はいまこそ"政治"の強い力で、進めていくべきと思っています。

 例えば、沖縄は日本で唯一と言えるほど、人口が年に1万人近く増加しています。増加の原因は温暖な気候等色々とありますが、保育所の規制が緩やかなことも大きな魅力の一つになっています。出生率も国内最高です。
 なぜ同じ日本なのに違うのか。それは、沖縄は長いこと米国に統治されていたので、いわゆるアメリカスタイルが至るところに残っているのです。

 保育所の問題で言えば、いわゆる「保育ママ」と言われる制度が充実しています。これは、保育所の基準に該当しない小さな保育施設です。世界的にみれば、珍しいわけではなく、米国にもあり、フランスが発祥と言われています。沖縄県人の中には、親子二代に渡って同じ保育ママに育てられた家族もあると聞いています。女性が安心して、働きにいくことができます。

 ――それはいい制度ですね。女性の働き手の多い、待機児童の多い大都市はすべて「保育ママ」のシステムを導入すればいい事なのになぜ出来ないのですか。

 原田 それがまさしく規制なのです。規制は、霞が関の「省益」と一致しているのです。問題なのは、全く国民の為になっていないことが多いことです。

 幼稚園と保育所を例にとって考えてみましょう。幼稚園は文科省、保育所は厚労省の管轄です。どちらの官僚も自分たちの省益、権限を侵されることに過剰反応します。

 この幼稚園と保育園の問題は、だれでもおかしいということは分かっています。民主党は政権を取る前は"幼保一体化"は簡単であると言っていました。しかし、実際の政策を実行する段になって、霞が関は勿論、幼稚園、保育園という個別の利益団体の反対に翻弄され全く何もできませんでした。民主党だからできなかったというのではなく、遡れば自民党もできていません。

(つづく)

| (中) ≫

<プロフィール>
harada.jpg原田泰(はらだ ゆたか)
1950年生まれ。
1974年東京大学卒業後、同年経済企画庁入庁、ハワイ大学に留学(経済学修士)、経済企画庁国民生活調査課長、同海外調査課長、財務省財務総合政策研究所次長、大和総研専務理事チーフエコノミストなどを経て、現在早稲田大学政経学部教授兼東京財団上席研究員。

著書は、『震災復興-欺瞞の構図』『日本はなぜ貧しい人が多いのか』『世界経済 同時危機』(共著)『日本国の原則』(石橋湛山賞受賞)『人口減少社会は怖くない』(共著)『昭和恐慌の研究』(岩田規久男氏他共著、日経・経済図書文化賞受賞)『都市の魅力学』『日本の失われた十年』『日米関係の経済史』など多数。


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