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日本国家"根源的変革"の処方箋シリーズ

日本経済はなぜ再生できないのか!(中)~日銀は通貨や物価の番人ではない!?
日本国家"根源的変革"の処方箋シリーズ
2012年12月11日 10:34

<既得権益を認めても改革はできる!>
 ――この問題は解決できないのですか。

1211_harada.jpg 原田 勿論、難しいのですが、いくつか方法があります。私は、既得権益を認めた上での改革を主張しています。

 整理しますと、問題点は大きく二つです。現在ある保育所は厚労省から潤沢な補助金を貰っています。保育所を増やせないのは、国に増やす予算がないからです。勿論、補助金を減らしてたくさん作ろうとすれば大反対になります。
もう一つの問題点は幼稚園側にあります。幼稚園の先生は基本的に午前中で勤務が終わります。午前中で幼稚園の施設は空きます。そこで、午後は保育所にすれば良いのです。"幼保一体化"すればよいのです。しかし、幼稚園の先生は勤務時間が延びるので大反対です。つまり、それぞれ個別団体が自分たちの利益だけを追求するので、解決の糸口が見えません。

 そこで、私は、先ずは、既得権益を認めた上で、保育所の増設をすればよいと思います。今ある保育所には現在のままの補助金を払い、これから作る保育所には少ない補助金を払います。現状を認めているのだから、反対は起こらないでしょう。その上で、最適な制度改革をし、徐々に理想の状態に近づけて行けばよいのです。

 両者の制度の定義を見てみましょう。「保育所」は児童福祉法に基づく児童福祉施設で、保護者や同居の家族が就労や療養などの事情で子どもを保育できない場合に、保護者に代わって保育します。また「幼稚園」は学校教育法に基づく学校教育施設で、義務教育やその後の教育の基礎を培うことなどを目的に子どもを保育します。
  
  つまり保育所はもともとシングルマザーとか戦争未亡人で母親が働かないと生けて行けない子供を助ける為にできた制度です。しかし現在では、女性が働きたいから子供を預けることが多くなっています。保育所が不足、待機児童の多い大都市には、高収入の女性がたくさんいます。補助金が少なくなれば保育料は当然高くなります。しかし、高く払っても「待機」するより良いという小さな子供を持つ夫婦はたくさんいます。発想の転換をすべきです。高収入の女性が思う存分働くことができれば、GDPも増え、税収もアップします。

 既得権益を認めろというと、不思議に思う方がいるかも知れません。しかし、日本の歴史では、全く不思議でもなく普通に行われてきています。

 例えば、明治維新では士族の特権を認め、500石の侍であれば、その20倍の国債を渡して納得させています。殿様はお金を沢山もらって、気楽な身分になれたので満足しました。この手当をしなければ、西南戦争どころの騒ぎでなかったでしょう。

<補助金の地方への一括交付を実現!>
 ――なるほど、とにかく改革を進めることですね。その為にはまず何から始めたらよいですか。

 原田 各地方自治体がそれぞれ、自分の都道府県に応じて自由に予算を使えるようにしてあげることが必要です。

 現状は、国は地方に対する補助金を、例えば、教員人件費、環境対策費とかひも付けして交付しています。つまり、補助金と規制が一体化しているのです。この発想は、地方益にとっても国益にとっても正しくありません。単に、省益の発想です。

 これでは、本当にそれぞれの地方が必要と思われることができません。地方が少しでも、異なることをすると補助金が出ないのです。

  地方に成功、失敗の「権限」と「責任」を与えなくてはいけません。それが今よく言われる消費税の地方税化とか、一括補助金とか言われるものです。
  法人税や所得税ですと地方によってとても大きな差がでます。ところが、消費税であれば、1人当たりの県民所得の一番低い沖縄と東京との差が二倍程度なのです。

  私は、消費税の地方税化などのような制度改革を必要とする案より、地方への補助金の一括化を主張しています。簡単なことだからです。しかも、補助金の額を一括化する条件で今より減額すればよいと思っています。今、まさに選挙戦で、自民党、民主党、維新、未来それぞれが政策を発表しています。このような改革ができれば良いと願っています。

  これらの案に反対する方もいます。それは、一括して渡したら各都道府県が満足に配分、運営できないというものです。しかし、これは、霞が関官僚の大きな勘違いです。むしろ、官僚統制で上手く行ったことがないのは、歴史的に証明されています。

  勿論、「権限」とともに「責任」委譲するのですから、都道府県ごとに成功、失敗は出てきます。それで、いいのです。うまく出来ない県は、出来る県を見倣い、知事を変える等すればよいのです。とにかく、日本全体が沈んでいく状況から脱出する方向に大きく舵を切らなければなりません。

  今、各地方自治体の役人の評価はどうなっているかというと、中央からお金を引っ張ってきた人間が評価され、出世します。お金を、人脈や縁故でいくら引っ張ってきたかではなく、ある予算をどれだけ上手く使ったかで評価されるべきです。一番うまく使った人間が県民と国民に一番役に立っているからです。

(つづく)

≪ (前) | (後) ≫

<プロフィール>
harada.jpg原田泰(はらだ ゆたか)
1950年生まれ。
1974年東京大学卒業後、同年経済企画庁入庁、ハワイ大学に留学(経済学修士)、経済企画庁国民生活調査課長、同海外調査課長、財務省財務総合政策研究所次長、大和総研専務理事チーフエコノミストなどを経て、現在早稲田大学政経学部教授兼東京財団上席研究員。

著書は、『震災復興-欺瞞の構図』『日本はなぜ貧しい人が多いのか』『世界経済 同時危機』(共著)『日本国の原則』(石橋湛山賞受賞)『人口減少社会は怖くない』(共著)『昭和恐慌の研究』(岩田規久男氏他共著、日経・経済図書文化賞受賞)『都市の魅力学』『日本の失われた十年』『日米関係の経済史』など多数。


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