＜今春の企画の明暗から学ぶ＞
全国の劇場のなかでも、トップレベルの設備を誇る（株）博多座。創業理念として掲げる三項目「満足してもらえる良い演劇を公演し、地域文化の発展のために尽力」「たえず市民劇場としてのあり方を追究し、文化の発信基地を目指す」「海外諸国との伝統文化の交流を通じ、新しい時代にふさわしい文化の国際化に貢献」を核に、12年前半、本格的に生まれ変わるために大胆なてこ入れを行なった。
その１つは、年頭のジャニーズ事務所による「SHOCK」の公演だ。客層が中高年層の女性という既成概念を打ち破り、若者に人気のある演目を選んだ。結果は前売券が完売するという好評ぶり。博多座の客層とは違う世代を劇場に集めることに成功した。続く試みは、３月の、初の本格的な自主制作作品の制作と公演。90年代に高視聴率を記録したドラマ「101回目のプロポーズ」を時代劇版とし初めて舞台化したという、全国区でも注目された企画だった。しかしながら結果は集客や成績が伸び悩んだ。
だが世の中、思うようにいかなかったもののなかにこそ、多くの学びがある。芦塚日出美社長は「自主企画公演から学んだことはたくさんあります。出演者など関係団体との交渉や調整など、普通なら興行会社が行なう業務を自ら手がけられたことは非常に勉強になりました。俳優陣を私たちが雇っている状態ですから、自分で原価を考えられるのが良かったですね。費用も抑えられるし、私たちが直接俳優に依頼して博多座らしいPR活動を行なうこともできます」と微笑む。当作品は、他劇場へ売って公演してもらうという計画は頓挫したものの、時代劇チャンネルに売ることができたことも嬉しい。
博多座は今、発展するに弊害になってきた既成概念を打ち破ろうとしている。九州が誇る大劇場、その誇りがいつしか厚い壁になってしまっていた。そのことを省みて、生まれ変わろうとしている。
３月に策定した「中期経営戦略」では、公演企画会議を充実させ、市場調査を十分に行ない、演目役者など、公演内容をしっかり吟味していくという方針を立てた。企画を厳選するのだ。そして１カ月公演を基本としながらも、演目規模や集客力をみて、臨機応変に半月公演や単発公演も取り入れていくことになった。成功事例である「SHOCK」のような若年層向けの公演も、毎年１つや２つ入れていきたいという。
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＜COMPANY INFORMATION＞
■（株）博多座
代 表：芦塚 日出美
所在地：福岡市博多区下川端町2-1
設 立：1996年７月
資本金：11億2,500万円
ＴＥＬ：092-263-5874
ＵＲＬ：http://www.hakataza.co.jp
＜代表者 Profile＞
芦塚 日出美（あしづか・ひでみ）
九州電力（株）副社長から2007年、子会社の九州通信ネットワーク（株）の社長に転じ、その後、10年６月に同社４代目社長に就任した。また、同時に（株）福岡ソフトリサーチパーク代表取締役社長、（財）九州先端科学技術研究所理事長および福岡商工会議所の情報・文化・サービス部会の部会長を兼務しており、幅広く活躍している。
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