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濱口和久「本気の安保論」

学校が教えない『ソ連の北海道占領計画』
濱口和久「本気の安保論」
2013年1月30日 10:26
拓殖大学客員教授 濱口 和久

 今年も2月7日の『北方領土の日』が近づいてきた。近年、日本では領土問題への関心が高いが、北方4島だけでなく、北海道のすべてがソ連(現・ロシア)に占領される可能性があったことは、あまり知られていない。『ソ連の北海道占領計画』は、歴史の教科書に載っていないため、学校では教えられていないが、日本人として知っておくべき領土問題の歴史である。『北方領土の日』を前に、ここでおさらいしたい。

<対日参戦の密約とスターリンの野心>
 1945年2月4日から同11日まで、クリミヤ半島のヤルタで米国のルーズベルト大統領、英国のチャーチル首相、ソ連のスターリン首相による3カ国首脳会談が開かれた。
 会談では、ソ連への千島列島の譲渡と南樺太の返還を条件に、ルーズベルト大統領はスターリン首相に対日参戦を促した。これが「ヤルタ密約」と言われるものだ。
 米国のトルーマン大統領は8月15日、スターリン首相に対し、日本軍の降伏地域を規定した「一般命令第1号」)を送付した。

 そこには「ヤルタ密約」とは違って、ソ連軍の占領地域は、満州と北緯38度以北の朝鮮となっており、千島列島は含まれていなかった。「一般命令第1号」の内容を不満としたスターリン首相は、8月16日、直ちにトルーマン大統領に次のような要求をする。

(1) 日本軍がソ連軍に明け渡す区域に千島列島全土を含めること。これはヤルタ会談における3カ国の決定により、ソ連の所有に移管されるべきものである。

(2) 日本軍がソ連軍に明け渡す地域には北海道の半分を含むこと。北海道の南北を2分する境界線は、東岸の釧路から西岸の留萌までを通る線とする。なおこの両市は北半分に入るものとする。

 あろうことかスターリン首相は、北方4島を含む千島列島全島の領有をあげたのみか、北海道の半分を要求してきたのである。北海道の占領は、日本のシベリア出兵に対する代償であると主張した。
 するとトルーマン大統領からは、北海道北部のソ連占領を認めないという返事が8月18日には届いていたが、スターリン首相はそれを無視する。
 ソ連の戦史研究所所長ボルゴドノフ大将は、終戦直前にスターリン首相は極東軍最高司令官ワシレフスキー元帥に対して、「サハリン南部から北海道に3個師団の上陸部隊を出せるように準備指令を出した」と語っている。

 水間政憲(みずま・まさのり)氏がボルゴドノフ大将の発言を裏付ける証拠として、山形県鶴岡市のシベリア資料館で、ソ連の「北海道・北方領土占領計画書」を発見し、『正論』(06年11月号)にその内容を発表している。これを読むと、ソ連が北海道の半分どころか、北海道のすべてを占領することを目論んでいたことが分かる。

<樋口中将が阻止したソ連の北海道侵攻>
sea_4.jpg 千島列島最北端の占守島では、8月15日で戦争は終わったと将兵の誰もが信じていた。ところが、同18日深夜0時過ぎ、占守島と海上14キロメートルの距離で対峙するカムチャッカ半島の尖端ロパトカ岬からソ連軍長射程砲の砲撃が開始される。

 「ソ連軍、占守島に不法侵入を開始す」という電文が、北千島方面の第91師団長 堤不夾貴(つつみ・ふさき)中将から札幌にある第5方面軍司令部に入ったとき、司令部では幕僚たちが顔を見合わせるだけでしばらく沈黙が続いた。そのとき、司令官 樋口季一郎(ひぐち・きいちろう)中将は「自衛のための戦闘」を命ずるべきか、侵攻して来るソ連軍に蹂躙されてでも大本営の指示に従うべきか悩んだ末、反撃命令を発した。

 樋口中将の英断による占守島での日本軍の頑強な抵抗がなければ、北海道はソ連軍に占領され、満州や南樺太で起きた略奪、子女に対する暴行や強姦が繰り返され、青年男子はシベリアに強制連行されたであろう。
 また、北朝鮮やドイツ統合前の東ドイツと同じように、共産主義独裁国家が北海道に誕生し、津軽海峡を挟んで、同じ民族どうしで対立していたであろうことは想像に難くない。

<プロフィール>
hamaguti_p.jpg濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。5月31日に新刊「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版、現在第4版)が発売された。 公式HPはコチラ


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