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日本国家"根源的変革"の処方箋シリーズ

ユネスコ・世界無形文化遺産となる和食(1)~壮大な実証実験
日本国家"根源的変革"の処方箋シリーズ
2013年2月27日 11:19

 今、ユネスコで和食および日本の食文化が世界無形文化遺産に認定される動きが進んでいる。「アベノミクス」を持ってしても、経済力は下げ止まるかどうかわからないと言われる日本であるが、一方、ここ10年以上さかのぼってみても、日本の文化力の世界的評価は上昇し続けている。そのクライマックスを迎えるのが、和食および日本の食文化が世界無形文化遺産に認定される今年2013年だ。

 今回、日本の食文化史、長寿食研究の第一人者ある永山久夫氏をインタビューした。永山氏は、「和食および日本の食文化が見直される時が今年必ず来る。しかし、それを受け入れる準備は、今の日本には充分にはできていない」と、警鐘を鳴らす。1932年生まれ、御年80歳の永山氏は、長寿食のせいか、80歳とは思えないくらい元気。そのお話は含蓄があり、平衡感覚で、何よりもとても愉快であった。

<壮大な実験の答えが和食である!>
 ――今年、和食は世界無形文化遺産に認定されると言われています。世界が和食に注目し、欧米、東南アジアなどでも日本食のお店が増えて盛り上がっています。 先生のお考えになる和食とはどういうものですか。

nagayama.jpg 永山久夫氏(以下、永山) 人間の生命活動は食べないと起こりません。その人が存在しているということは食べているからです。そして、重要なのは、その生命体が健康であるのか、不健康であるのかという事です。それは何を食べたかによって変わってきます。体にいいものを食べる食生活をしていれば、その人の生命体は肉体的にも、精神的にも健康で、発想力も豊かになります。今、世界中で和食が注目され、和食趣向が強くなっている理由がここにあります。

 和食は、人間が健康を維持して精神活動をし、仕事をするために、理想的な仕組みになっているのではないかと思われています。それは、壮大な実験(対象者1億3,000万人)がすでに行なわれ、平均寿命は女性が86歳、男性が79歳という素晴らしい結果が証明しているからです。数字上は、ごく最近香港に抜かれましたが、人口構成から考えれば不動の1位であることは間違いありません。つまり、地球市民にとって、どういう食べ方をするのが一番良いのかという実験結果が和食と出ているのです。

 食というのは、基本的に、食べる人が自分の体に何が合うのかを自分で勉強して食べるものです。日本人は縄文時代から、一貫してそのことを実行してきています。福島の食文化、熊本の食文化、長野の食文化、沖縄の食文化など、それぞれの土地には、独自の食文化があり、その集大成が和食なのです。自分の生まれた土地の味覚を確認しながら食生活をしてきたわけです。遺伝子レベルで、その生まれた土地の食材に馴染んでいるのです。

 日本人の知恵が凄いのは、地方には仕事がなく、江戸とか、東京のような大都市に出てきたとしても、年に何回かは里帰り(盆、暮)をして、自分の生まれた土地の水を飲み、そこで取れた米、野菜、魚、味噌などの発酵食品を食べ体のバランスを保ってきたことです。

<「人類よ、軌道修正せよ!」というメッセージ>
 ――なるほど、今は忙しいとか、煩わしいとかの理由で里帰りする人が、圧倒的に少なくなっています。しかし、それは実は知らない内に、人間の健康にも大きな影響を及ぼしていたのですね。

 永山 まさにその通りです。しかし、今は帰省しても、コンビニ、スーパーが発達しており、東京と同じものを食べているケースさえあります。これが大問題なのです。これが、情報共有の長所でもあり、短所なのです。これでは、里帰りをする根源的な意味が失われてしまうのです。TVや新聞広告などの影響で、食生活が"流行現象"に左右されてしまうことも良くありません。

 さらに、現代人は、冬でも西瓜を食べたいとか、季節外れの果物などを好む人が増えてきました。そうすると、ビニールハウスなどで、夏と同じ条件を作らなければなりません。ものすごく電気を使います。通常の火力、水力発電では電気が供給仕切れないので、原子力発電所が必要になります。そして、一度原発事故が起これば、そこには住めなくなります。私の生家も福島の原子力発電所の近くで、今は帰ることさえできません。

 日本は、科学技術の最先端と言われていた原子力発電所の事故に遭遇しました。これは象徴的な出来事で、私は「人類はバランス感覚がある」とさえ思えてしまうのです。大震災、原発事故、その1つ1つはラジカルのように思えても、何十年、何百年か経ってみると、これらの現象は、人類が軌道修正するために必要だったのだと気づくかも知れないということです。

 人類を破滅させるような出来事が起きたその国で、伝統的に食べてきた和食およびその食文化が世界的な評価を受けるのです。
 これは、全世界的に「人類よ、軌道修正せよ!」というメッセージだと受けとめています。文化は人間が作るものです。生きた人間しか文化は作れません。生きていくということは、食べることです。あらゆる文化の出発点は食文化なのです。食がなければ、歴史も芸術も科学も発生しません。

 では、なぜ和食なのでしょうか。それは、ひと言で言えば、自然に優しいからです。「過度に料理するな、必要以上に味をつけるな、素材の味を生かせ!」というのが和食の基本です。素材の味を生かすためには生で食べるのが一番です。今、世界中の人達が刺身を食べ始めました。これは「素材の味を生かす料理」の代表です。「栄養学的にも、健康的にも生で食べるのが一番いい」いう声が聞かれるようになりました。

 なぜ、生は健康にいいかは明白なのです。野菜でも、魚でも、肉でも本来持っている成分が全部残っているからです。酵素が豊富なのです。生命現象は酵素があってはじめて発生します。酵素がないと人間も生きていけません。細胞分裂も消化も酵素の働きです。生で食べるということは、まさしく「医食同源」そのものなのです。医者にかからない、必要としない食べ方の基本中の基本が生で食べることなのです。

 生のものを食べるには、自然環境をよくすることが大前提です。たとえば、季節ごとに新鮮な魚が食べたかったら、海という大きな環境を守る必要があります。取りすぎてもいけない、バランスのある捕獲方法が必要です。それらを正しく守っていくことは、地球の環境を守ることと同じです。

(つづく)
【聞き手・文:金木 亮憲】

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<プロフィール>
nagayama_pr.jpg永山 久夫 (ながやま ひさお)
1932年、福島県生まれ。食文化史研究家。長寿食研究所所長。西武文理大学客員教授(和食文化史)。古代から明治時代までの食事復元の第一人者。長寿の食生活を長年にわたって調査研究している。TV、ラジオ等出演多数、講演実績も多数で、その招聘先は日本に留まらず、ヨーロッパ、アメリカ等にまで及ぶ。著書に、「なぜ和食は世界一なのか」、「日本古代食辞典」、「長寿村の100歳食」、「日本人は何を食べてきたのか」、「武士のメシ」ほか多数。


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