＜一気に、回帰現象が起こる予感！＞
　――和食の素晴らしさを海外の人が気づき、和食趣向が加速しているにも拘らず、肝心の日本人には和食回帰の兆しは見えません。とても鈍感のような気がしています。この点に関してはどうお考えですか。

　永山 その点に関しては、私も警鐘を鳴らしています。しかし私は諦めてはいません。和食回帰をイメージされている方が私の周りには増えてきています。地球市民の食生活のあるべき姿が和食であると強く訴えたいと思います。

　日本人は鈍感に見えますが、一方では反射神経がとても鋭い国民です。何か、きっかけがあれば、正しい方向に大きく舵を切ることができます。ユネスコで今年、和食が世界無形文化遺産に登録されれば一気に回帰現象が起こると思います。
今、現在の食が健康に良くない、不満であると考えている人たちの多くは、サプリメントに走っています。これは、自然な姿ではありません。

　私は今、大学で「和食文化史」を教えています。ここでも、少し驚く異変がありました。今年の受講者が、昨年の約２倍になりました。事務局の話では、来期はさらに希望者が増えるとのことです。日本人の学習者も増えましたが、中国、韓国などの留学生も約４割います。彼らが、日本人に勝るとも劣らず、熱心なのです。

　ある時、外国人である彼らになぜ「和食文化史」を受講するのかを聴いてみました。「これからは食の時代です。そして、どの国も高齢化社会になるので、健康を意識して食べることが大切です。世界中で、この条件を満たす食はどこの国の食かと考えた際に、和食にたどり着きました」というのが答えでした。私は、よく考えていて、正直すごいと思いました。日本人もしっかりしないといけません。

　日本は、地球規模で考えた場合、とても恵まれた国です。島国で周りが海であるため海産物（魚類、海藻など）がとても豊富です。さらに、四季があるので、風景が変わる様に田畑などの産物が変わります。

　この恵まれた国にいる我々日本人は、地球市民の未来の食生活のために、和食を通して発信する使命を持っていると私は考えています。
　自分の住んでいる土地の季節感を大事にして、そこで採れるものを、素材の味を生かして食べる。石器時代から考えても、このことは地球市民の基本です。文明が進歩し、様々な文化が生まれる過程で、過度の味付けなど加工が行き過ぎてしまったのが現在なのだと思います。

　では、これからどうすれば良いのか。今まで経験した食生活、味覚文化は否定することができません。それを踏まえた上で、改善したい、自分の国にない良い点を他国から取り入れたい、という訳です。そのシンボルとして「和食」が注目されているのだと思います。

　日本料理は、もちろん煮たり、焼いたりして料理するものはありますが、とても少ないです。この食べ方は、実は意識すればどこの国でも可能なのです。和食およびその食文化というメッセージは日本食の域にとどまらず、人類に最高の「地球市民食」を意味します。私は、ヨーロッパやアメリカに講演に招かれることが多いのですが、この点は、むしろ外国人のほうが鋭く感じている気がします。

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