ネットアイビーニュース

NET-IB NEWSネットアイビーニュース

サイト内検索


カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

自立する地域社会

地方から始まる地域再生への変革(中)~武雄市長 樋渡 啓祐 氏 × 建築家 有馬 裕之 氏
自立する地域社会
2013年3月 4日 09:06

 1人は、市政においてSNSの利用を積極的に進めるなど、既存の枠にとらわれない自由な発想を持ち込み、市長の立場から地域変革を推進している佐賀県武雄市長の樋渡啓祐氏。もう1人は、世界的に著名な建築家であり、日本、海外を含めたさまざまな都市計画などのトータルプロデュースも数多く手がけている有馬裕之氏。いずれもフィールドは違えど、地域をダイレクトに世界へとつなげていこうとしている2人だ。今回、これからの地域のあり方についての対談を行なった。

樋渡 もう1つやりたいのは、今、市役所で市民課とかに行こうとしても、どこにどう行けばいいのかがよくわかんないじゃないですか。ですから、アップルストアみたいに、席に着いたら市の職員がやって来る、というようにしようと思っています。その人が主人公、その人が中心なんだ、って。僕らの公共サービスは、それに合わせて提供します、ということにしたいんですよね。ですから、窓口もやめます。

 有馬 今の話はすごく示唆的な話で、さっき話したようにインフォーマルとフォーマルの話だと思うんですよね。今までは、役所がすごくフォーマルだったんです。でも、それではアイディアらしいアイディアは出ない。

 樋渡 あとは、市長室もやめようと思っています。実は、僕はアップルの本社も入ったのですが、すごいと思ったのは、スティーブ・ジョブズがどこで仕事をしているかというのがよくわかって、あの人は入り口のところのベンチで仕事をしていたんです。市長室みたいなところに閉じこもるから、ロクな人が出てこないんですよ。僕は空いているところで仕事します。

 有馬 今からのモバイル型の働き方って、まったくそうですもんね。

 樋渡 "ノマド"ですよね。技術的に完全に可能なんですよね。

 有馬 オフィスという概念が、もう大きく変わり始めていますからね。本社ビルというのは、まぁ象徴として欲しい人も多いみたいですが、あまりいらないですよね。

 樋渡 いりません。それに、本当に仕事ができる人って、自分が中心ですもんね。

 有馬 そういったインフォーマルの構築の仕方が、公共建築の重要なポイントになると思います。

 樋渡 それは絶対になりますね。それを今度、新しい市役所でシンボリックに出していきたいと思います。

arima.jpg 有馬 次に、今は「地域の時代」に入ってきましたが、要するに、地方という概念がもう崩壊し始めていますよね。過去――要するに箱物の、地域のエリアのただ個性を引っ張り出していた頃と違って、今は世界にどう開いていくかの時代に確実になってきているという認識を僕は持っています。今、僕は世界各地でも仕事をやっていますが、そのような世界を見れば見るほど、日本の面白さがわかってきているんですね。

 そのときに、東京をスイングバイに使っていくのではなく、まさに地域が直接――ダイレクトに世界へと実行していく段階に入ってきていると思います。
 樋渡 そうなんですよ。僕らは自治体通販をやっていて、これはなかなか面白くて、楽天とAmazonの第3極を目指そうと思っています。そして今度、僕らはシンガポールに出すんですよ。自治体がですよ。通販の販売対象をシンガポールにして、日本国内にプラスしてシンガポール。シンガポールは300万人しかいませんが、あそこはASEANの中心なんですよね。もう境目とかそういったものはないんですよ。ボーダーがありません。

 有馬 今のお話にあったように、実は僕の知り合いもシンガポールにはたくさん行っていて、シンガポールがすごいのは、彼らは皆シンガポールで会社をつくらされているんです。人のノウハウで、シンガポール政府が半分出資して、売り込んで、売り上げた値段を半分取る、と。そういったことを、それを武雄で行なってみるのはいかがですか。

 樋渡 それは面白いですね。

 有馬 トップクラスのノウハウを武雄に入れ、そして世界に拡げていく――。僕は、本当にそういったことをやりたいと思います。

 樋渡 それは、ぜひ組んでやりましょうよ。今回の自治体通販もそうですが、やはり、市場は乗るものではなく、つくるものです。自治体というのは、それができるんですよ。というのは、1,700の自治体があって、みんなモデルがありません。モデルがないから、ウチは水平的展開ができるんですよ。

(つづく)
【文・構成:坂田 憲治】

≪ (前) | (後) ≫

<プロフィール>
hiwatasi_pr.jpg樋渡 啓祐(ひわたし・けいすけ)
1969年、佐賀県武雄市生まれ。武雄高校を経て東京大学経済学部卒業後、93年に総務庁人事局(現・総務省)に入庁。総務庁長官官房総務課、沖縄開発庁振興局調整係長、内閣官房主査、内閣中央省庁等改革推進本部事務局主査、内閣府参事官補佐、総務省大臣官房管理室参事官補佐、高槻市市長公室長、総務省大臣官房秘書課課長補佐などを経て、05年に総務省を退職。06年、当時全国最年少の若さで武雄市長に就任した。08年にリコールを受けて辞職するも、出直し選挙で再選を果たした。

<プロフィール>
arima_pr.jpg有馬 裕之(ありま・ひろゆき)
1956年、鹿児島県生まれ。京都工芸繊維大学卒業後、80年に(株)竹中工務店入社。90年「有馬裕之+Urban Fourth」設立。さまざまなコンペに入賞し、イギリスでar+d賞、アメリカでrecord house award、日本で吉岡賞など、国内外での受賞暦多数。さまざまな地域活性の町づくり委員も務める。作品群は、都市計画から建築、インテリア、グラフィックデザイン、プロダクトデザインなどさまざまな分野におよび、日本・海外を含めたトータルプロデュースプログラムを展開している。


※記事へのご意見はこちら

自立する地域社会一覧
自立する地域社会
2013年1月29日 07:00
自立する地域社会
2013年1月28日 07:00
自立する地域社会
2013年1月25日 07:00
自立する地域社会
2013年1月23日 13:26
自立する地域社会
2013年1月22日 16:29
NET-IB NEWS メールマガジン 登録・解除
純広告用レクタングル

2012年流通特集号
純広告VT
純広告VT
純広告VT

IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル