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日本国家"根源的変革"の処方箋シリーズ

いい経営者、政治家は皆優れた物語作家である!(2)~岩佐倫太郎氏
日本国家"根源的変革"の処方箋シリーズ
2013年3月29日 07:00

<キャッチフレーズから物語へ!>
 ――大阪の「なみはや 国体」もプロデュースされたとお聞きしています。ここではどのような物語がありますか。

 岩佐氏 これは、日本の国体史上、最高の演出と評価を頂きました。この時私に与えられた宿題は「大阪という自治体の"個性"を、競技場のフィールドで5,000人の集団演技を通じてどう伝えるか」でした。それも、天皇陛下、皇后陛下に見て頂くわけです。大阪府の各団体からスケート、体操、トランポリン、ダンス、一輪車などと優秀なチームが集まってきました。それぞれの先生は自分の生徒は何ができるのかは分かっています。しかし5,000人が一丸となる物語が必要でした。
この時、自分がヨットマンの経験から最初に船がイメージに浮かびました。遣隋使派遣の歴史がある大阪です。古来、進取の気風に富んだ文化の窓口だったわけです。それを最終的に「海に生まれ、海から未来に羽ばたく大阪」という物語にまとめ上げました。1997年の事です。グランドの5,000人が観客席も巻き込んで作るページェントは大成功でした。今も思うに、それぞれが自分の役割がグランド・ストーリー全体のなかでどういう価値を持っているのかを確認できた時、練習が加速し完成度が急に高まったのだと思います。

【注】 ページェント(pageant):歴史的な場面を舞台で見せる野外劇から転じて、華麗・大規模ショー。

 ――"岩佐流"という「物語」作法はあるのですか。

iwasa_2.jpg 岩佐氏 私の場合は、まず全体をぼんやりと眺めることから始めます。最初から分析し、ロジックを当てはめるのはよくありません。次に人々がどんなことを言い合っているのか、聞き耳を立てます。いわゆる取材です。そのあとはしばらく寝かせます。そうするとやがてインサイトと言うか、直感的に答えがわいてくることも多いのです。少しシステム的にやる場合は、専門的になるかもしれませんが、SWOT分析でプロジェクトや会社や製品の強みと弱み、市場での可能性と危機などを、マトリックスに分類してみると、物語の下書きとして使えます。マインド・マップをあらかじめ用意するのもいいです。こうした分析的作業をひとつの縄に結っていくのが私の物語作法です。

【注】SWOT分析:プロジェクトやベンチャービジネスなどを成功させるうえで、内部や市場環境の特質を強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の4つに分けて評価し、意思決定をサポートする手法。

 ――それでは、岩佐さんが言う「物語」は「キャッチフレーズ」とどう違うのですか。

 岩佐氏 実は、その点が一番大事な点なのです。「キャッチフレーズから物語へ」、というのが今のトレンドかと思います。テレビや新聞などのマス媒体を買うのが高かった時代、今のようなネットやSNSがなかった時代は、短いキャッチフレーズという腕力がよく効きました。しかし今、生活者はじっくり情報を検討できますし、ネットはテレビと違ってインフォマーシャルやYouTubeに見るが如く、時間の制約がありません。そのために、商品を深く掘り下げ、生活者が参加し、口伝えに人に言いたくなるような「物語」の開発手法が求められています。生活者は物語を求めているのです。
 物語作者は、生活者の隠れた願望を見つけ出し、企業と社会をひとつに結ぶ、共通のプラットフォームを作るのが仕事になります。物語はキャッチフレーズより広い世界で機能しています。しかも寿命も長いです。成功する物語は共感とともに、人が再生して広めてくれます。ブランドは広告のキャッチフレーズではなく、「物語とデザインで作ろう!」、これが私の持論です。ブランドが資産となって有効なのは企業だけでなく非営利団体や自治体などでも同じです。したがって、物語によるブランド価値の創造は、まさしく経営トップの仕事なのです。

(つづく)
【文・構成:金木 亮憲】

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<プロフィール>
iwasa_pr.jpg岩佐 倫太郎(いわさ りんたろう)
京都大学文学部(フランス文学専攻)卒業後、株式会社大広入社。広告制作、イベント、博物館・博覧会のプランナー・プロデューサーを経て、2003年独立、株式会社ものがたり創造研究所設立。ジャパンエキスポ大賞優秀賞他受賞歴多数。
「地球をセーリング」(加山雄三)他作詞、「ウィンドサーフィン・レーシング・テクニック」他翻訳、「ニュージーランド・ヨット紀行」他執筆と多才に活躍中。美術と建築のメルマガ「岩佐倫太郎ニューズレター」を4年で100号近く発行。絵の独自の見方と表現に多くのファンを持つ。近刊として「東京の名画散歩 ~絵の見方・美術館の巡り方」(舵社)。


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