＜人の心を束ね、団結させる力がある！＞
　――なるほど、ところで、岩佐さん自身は作家ですか、それともプロデューサーですか。

　岩佐氏　何もない始まりの部分から発想していくという意味で、作家性の要素の強いマーケッターだと思います。プロデューサーの部分は、自分のアイデアや物語を着地させるために必然的にやっているものです。

　――岩佐さんのプロデュースで、「物語力」が生きてブランドが再生されたと思われる最近の例をご紹介下さい。

　岩佐氏　2004年から約５年間、長崎県の「ハウステンボス」の顧問をしました。行ってみるとインフラはすごいし、チューリップなど花の技術もありました。社員も優秀な人が大勢おり、しかも皆ハウステンボスを愛していることも分かりました。

　そこで作り出した物語は「花のハウステンボス」です。それまで、地元とか修学旅行生が主なお客さんであったところに、花をテーマに富裕層の女性の呼び込み、マーケットの拡大と全国化を狙いました。結局、泊まってくれる人が利益の８割を生み出すのです。ところが当時、社員は自信を喪失し負け癖がついていました。花だけで経営改革できるわけではありませんが、ブランド再生の際には戦略的にまずシンボルによる元気づくりが、欠かせません。「そのシンボルが花です！」、というと当時の幹部の方々は怪訝な顔をされました。「花、そんな"やわ"なものでどうする？」という気持ちがあったと思います。

　しかし、私は大阪の「世界花博」のプロデューサー経験があり、花の集客力の凄さを身に染みて分かっていました。自信がありました。なかでも大きな改革は、チューリップに続くものとして、「バラ」をテーマにしたことです。ガーデン・コンテストなどイベントでつなぎながら、５，６年計画でハウステンボスを世界一のバラの名所にしようとしました。
　ハウステンボスの特徴として「100万本のバラ」は有名ですが、その種は10年近く前に蒔かれました。　現在、ハウステンボスは活気づき、ブランド再生の道を歩み始めているように思います。

　――そういえば民主党のロゴマークも岩佐さんのプロデュースと聞いています。

　岩佐氏　はい、太陽がふたつ重なったようなオレンジのマークのことですね。あれは1998年でしたか、新しい民主党が誕生したときのことです。いよいよ日本も2大政党の時代に入るぞと、私自身も大いに期待したわけです。

　野党としては、夢にまで見る「政権奪取！」が、皆で共有する物語になります。物語というのは、組織の内と外の両方を串刺し出来なくてはなりません。それをアートディレクターの浅葉克己さんが、実にいいデザインで表現してくれました。

　次の太陽となって天空に輝くのは、民主党だ！そんな気持ちだったと思います。闘志に溢れています。真田の六文銭は、死も辞さない覚悟を示す一種のブランド・ロゴでしたが、民主党のマークも戦場を駆け巡る武者が背負う軍旗の様なデザインでした。

　浅葉さんの仕事場で見ていると、彼はわざと下の方の太陽を筆でにじませて、生々しい感じに仕上げていました。渋谷の街頭演説などで、目立つように、のぼりのような旗が林立すれば勢いも伝わるという、そんな発想があったのだと思います。私は浅葉さんの才能にうなりました。デザイナーが仕事をひれ伏して受けるのではなく、顧客を励まし叱咤しているわけです。作ったものを議員会館の羽田孜前衆院議員のところに持って行ったところ、即決でOKを頂きました。

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