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自国の「美徳」が見えず、伝道師もいない日本!~「世界が恋する日本の美徳」永田公彦著(ディスカヴァー携書)
書評・レビュー
2013年4月 1日 15:43

 日本の美徳は、日本人自らが伝えないといけない。しかし、その伝道師の数が圧倒的に少ない。そう語る著者はフランスを拠点に、フォーチュン・グローバル500社企業をはじめ、数多くの欧州企業に対し、国際経営・事業・組織について助言する経営コンサルタントである。

 2011年3月11日から膨大な量の報道や映像が世界に配信され、日本の歴史の中で、最も多くの世界の目が日本に向けられた。世界の人々は、「厳しい状況でも、パニックに陥らず、社会秩序を守り、辛抱強く、整然と、助け合う」という日本人の行動に、心地よい驚きを持って注目した。

 2012年、日本が「世界に最もよい影響を与えている国」の座を奪還した。英国放送(BBC)が英国グローバルスキャン社と米国メリーランド大学と共同で行う国際世論調査『カントリー・インフルエンス・ポール』の結果である。同調査は、毎年世界20数カ国に住む、2万人から3万人を対象に実施。日本の1位は2007年以来だ。

 東京が3年連続で、世界で最も好きな海外都市に選ばれた。英国の有力紙ガーディアンの読者が選ぶ「ガーディアン・トラベル・アワード2012」の海外都市部門の結果である。
 さらに、米国の大手旅行雑誌「コンデ・ナスト・トラベラー」の読者人気投票では、2011年のアジア部門で「京都」が一位に輝いている。これは一部で、総じて海外の目は日本を讃えている。

 一方、国内に目を転じて見ると、相変わらず「縮小、崩壊、斜陽、後退、衰退、低下、不信、内向き、閉塞、孤立・・・」というネガティブ用語を政治家、マスコミ、評論家、そして一般市民も連呼している。国民は「自分たちは悪くなる一方」という暗示にかかる。四六時中こうした大人のネガティブ発言を聞きながら育つ子供はどんな大人になっていくのか、想像しただけでも恐ろしいと著者は言う。

 興味深いのは、著者の専門の経営分野の分析だ。ここ20年で、日本の家族的かつ品格高き和風経営がアメリカ風味の経営に変貌した。これは、アメリカ系コンサルティング会社、教育機関、アメリカかぶれの評論家、メディアにいとも簡単に騙され、アメリカ的な経営手法を受け入れた結果だ。

 著者は断言する。善悪は関係なく、アメリカ風味の経営は日本人、日本の文化には合わない。文化の根本的な違いを吟味せずに、アメリカ風味の経営手法を表面的にだけ取り込めば、文化と経営のミスマッチを起こすのは必然だ。結果的に、お客、株主、従業員が皆不幸になる。

 さらに、社内の公用語を英語にする日本企業にも、国際人である著者は異論を唱える。言語は、各国・地域の文化風土に根差して生まれ親しまれるコミュニケーションツールであり文化そのものだ。日本の土地で日本人の間で英語を話せというのは、文化と経営のミスマッチを引き起こす。社員食堂のメニューまで全部英語にして、国際化と勘違いしているどこかの会社の社長に聞かせたいものだ。

 最後に、外圧や一部の海外かぶれの政治家・知識人による「日本は世界に合せないと孤立するぞ!」的な発言を安易に受け入れてはいけないと警鐘を鳴らし、叱咤激励もしている。

 今年は、和食及び日本の食文化がユネスコ世界無形文化遺産になる年でもある。食文化だけでなく、日本文化の良さ、日本的経営の良さを、我々日本人が再認識し、世界に発信していく良い機会だ。

<プロフィール>
三好 老師 (みよしろうし)
 ジャーナリスト、コラムニスト。専門は、社会人教育、学校教育問題。日中文化にも造詣が深く、在日中国人のキャリア事情に精通。日中の新聞、雑誌に執筆、講演、座談会などマルチに活動中。


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