年間約600万人の観光客が訪れる日本有数の観光地である沖縄県。2011年度は東日本大震災の影響で減少傾向となったが、同年10月以降は増加傾向にある。同年7月から中国人に対する数次ビザの発給のスタートをはじめ、アジア各国との航路も本数が増加している。"(株)沖縄県営業部"として、沖縄の魅力的な観光を国内外に売り込む仕掛け人である(財)沖縄観光コンベンションビューローの安里繁信会長に話をうかがった。
<沖縄の行き先は――>
――ところで海外の観光客は沖縄をどのように見ていますか。
安里 沖縄は「なんとなく知ってるよ」というレベルではないでしょうか。知名度はまだまだ低いですね。フランスやイタリアの人たちは1カ月ほどバカンスを取ります。フライ&クルーズといって、飛行機で香港に飛び、そこからクルーズ船で各地を巡った後、沖縄に行くというものです。我々も海外向けのパンフレットを作成していますが、「沖縄に行ってみたい!」「バカンスしたい!」という人たちをもっと誘致したいですね。
また、我々は「沖縄プラスワン」という新しい発想の下、商品開発も行なっています。たとえば沖縄と熊本の温泉を組み合わせる発想です。沖縄だけ、熊本だけではなく、組み合わせることで今まで10あった商品が100にも1,000にも増えることになります。
――2025年に沖縄も人口が減少傾向になると予想されます。人口減少の時代を迎えるにあたり、今後に向けた取り組みを教えてください。
安里 国内経済は四半期、GDPがマイナスでしたが、沖縄は微増でした。我々は、(米軍基地をはじめとして)この国のあらゆる矛盾のすべてが沖縄にあるが、この国の今後の可能性も沖縄にあると思います。何故なら他府県が、人口が減っているなかで、沖縄が伸び続けているのは、その答えは日本国民が共有しているのではないでしょうか?
沖縄に人口が増えている要因は気候的な住みやすさ、可能性といった、この国が失った何かがあります。全日空の貨物ハブ事業をはじめ、経済特区、モノ、金、情報の流れを融合して、沖縄が今、すごい動きと、変化を見せています。近い将来、アジアのゲートウエイとしての役割を担うことができるのではないかと期待しています。今、景気は低迷していますが、我々にとっては今が最大のチャンスと捉えています。
――世界的に見たリゾート地としての沖縄はどう思われますか。
安里 中国の海南島、韓国の済州、アメリカのグアムとハワイがありますが、たとえばハワイの観光戦略を学ぶこともあります。ハワイが観光地として伸びたのは、日本人が、日本人の満足する市場としてハワイを開拓したことにあります。さまざまな観光地の善し悪しを研究しています。
今、沖縄県が掲げている観光客1,000万人は、掲げる数字は目標であっても目的ではありません。目的は沖縄に来ていただくことです。たとえば沖縄に観光客が増えれば、ホテル建設が進み、それに携わる建設業の方々も仕事が増えます。観光客が増え、民間の需要を高めることができればおのずと他の産業の活性化につながるということになります。
600万人の流動人口が沖縄の市場をつくっていますが、これを増やすことで沖縄の経済成長につながります。観光を縦割り型に果たしていく役割を誰が担うのか?それは我々(沖縄観光コンベンションビューロー)の役割であり、"(株)沖縄の営業部"として、沖縄をセールスしていくことにあると思います。今後は沖縄で沖縄だけを売るのではなく、沖縄で日本を売りたいとも考えてます。それが結果として、沖縄全体の利益につながり、国益につながると思いますから。今後の我々に期待していただきたいですね。
――本日はお忙しいなか、ありがとうございました。
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