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チベット問題と中国の未来(後)
未来トレンド分析シリーズ
2013年5月16日 07:00

 これは中国に限ったことではないが、世界的に多くの人々がこれまでの価値観や体制の在り方に不満を持ち、何らかの新しい信仰の対象を求め始めている。既存の宗教が、受け皿として十分な機能を果たさなくなっていることも影響しているのだろう。また、社会主義や共産主義の世界においても、理想として掲げられてきた自由や平等といった価値観が、実際には手に届かない空想の世界の産物であったことに気づいた時に、多くの人々が精神世界によりどころを求めざるを得なくなってきているのも現実である。

_ch2.jpg 2008年5月、また13年4月に起こった四川大地震に関しても、多くの中国人たちは、現在の中国政府に対する天からの怒りのメッセージではないか、と受け止めたと言われるほど。というのも、中国の長い王朝の歴史を振り返ってみると、必ずと言っていいほど、時の権力が腐敗する時に大きな災害が起こってきたからだ。北京政府とすれば一般の国民の間で不穏な動きがエスカレートしないようにするため、強力な軍隊や治安警察を導入することで、民衆の暴動や不測の事態を防ごうとしたとしても不思議ではない。
 しかし、人々の心や気持ちを警察力や軍事力で押さえつけることはできない。それどころか、押さえつけた分、民衆の怒りや不満は更に増幅することになるだけだ。であるが故に、中国政府とすればこれまで以上に危機感を募らせ、そうした自由を求める連帯の動きを抑圧しようとしているのであろう。
 明らかに中国政府は現在の共産主義王朝の時代より、儒教の教えを国是として採用していた時代の方が長かったことを承知している。その意味で中国人の無意識の世界に及ぼす儒教や孔子の教えが、今の厳しい状況を克服する上で欠かせないものだ、と判断したに違いない。

 中国政府の意向を受け、多くの未来を嘱望された若者たちが海外に留学し、あるいは海外で技術の研修を受けるようになった。中国政府の狙いは欧米の社会がいかに腐敗をしているか、その弱点を見極めるためにも、海外経験が中国にとりプラスに働くと信じていたようだ。しかし、多くの中国の若者たちが徐々に海外での自由な空気に触れ、どちらの世界がより自分たちの未来にとって好ましいかを、自分の頭で考えるようになった。その結果、本国に帰ることを拒否し、外国から中国の体制の変革や改革を支援するという動きに身を投じる人たちも増えている。

 長年にわたり、人口抑制を図るために一人っ子政策を取ってきた中国だが、このところはこの政策も形骸化が進んでいる。その結果、中国での人口は再び増大する傾向が顕著に見られるようになった。中国政府は表向き13億人の人口と言っているが、実際には16億人程度の人口がひしめき合っている。世界人口において、すでに5人に1人は中国人、いずれ4人に1人が中国人、そしてあっという間に3人に1人が中国人というように、世界全体が中国化する流れが加速する一方である。それだけ増え続けている中国人が、一体どのような価値観を持つことになるのか。これこそ世界最大のリスク要因である。

 いずれにせよ、それだけの人口力があれば、世界の命運を左右することにならざるを得ないだろう。中国人が世界を中国色に塗り替える。そんな時代が目の前に迫っている。どのような価値観をもった中国人が世界の主流を占めるのか。我々は拡大を続ける中国人との間にコミュニケーションを図り、彼らの真の姿を理解するとともに、世界を誤った方向に押しやらないようにするため、そうした中国人との真摯な付き合い方を模索する必要があるはずだ。
 その際、やはり精神世界に目覚めた中国人を増やすことが肝心であろう。単なるビジネスでお金を儲けるという価値観だけの中国人が、世界を席巻することになることだけは避けたいものである。精神世界にも十分理解と寛容な姿勢を持つ中国人が、主流派となることが、これからの世界を安定した形にする上で欠かせない。
 チベットの金剛仏教に基づくチャムの舞踊を見ながら、慈悲の心や精神文明の持つ可能性について思いを馳せることになった。

Tibet-Festival-Tokyo3.jpg

(了)
【浜田 和幸】

≪ (中) | 

<プロフィール>
浜田和幸氏浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。現在、外務大臣政務官と東日本大震災復興対策本部員を兼任する。


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