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「維新銀行 第三部 クーデター」~第2章 クーデター当日(54)
経済小説
2013年5月22日 07:00

<取締役会議(15)>
 続いて監査役の大沢が、
「先ほど松木取締役、大島取締役、原口取締役の3名が、谷野頭取を更迭するための口実として、いろいろと理由づけした発言をしていましたが、いずれも取締役の発言としてはまったく要領を得たものではなく稚拙です。いやしくも代表取締役頭取を更迭するのであれば、もう少し的を射た退任理由でないと、取締役としての資質を問われることになると思います。
 次に沢谷専務より『業績の急回復を花道にして勇退して欲しい』との提案がありましたが、谷野頭取本人は辞任しないと言っているのに、退任理由として『新中期計画対応への若返り、本部との連携強化、営業力の強化』などを上げていましたが、いずれの理由も経営トップの再任を拒否するような次元の問題ではないと思います。つまり経営トップの最大の責任は業績を上げて株主を始め、取引先、行員、地域経済に貢献することだと思います。

sora_25.jpg 沢谷専務を始めとして取締役全員の総意で選任した谷野頭取の経営手腕、経営改革の実績、業務実績等について評価しなければいけないと思います。それなのに谷野頭取のこれまでの経営手腕や業績回復等については言及しないで、谷野頭取の個性を問題にして退任を求めるのは筋が違うと思います。言われるように谷野頭取の個性に若干の問題があるのであれば反省してもらえば良いことであり、そのことが経営に支障を与える大きな問題であれば、取締役会で頭取に対して意見具申する責任が取締役にはあります。しかしそのような意見具申も一切せずにいきなり頭取を批判することは問題があります。

 谷野頭取が経営責任を問われるのは、2年間の実績と個性や人格等が経営に与えるマイナス面とを比較してどうかということだと思います。もしマイナスが大きく経営に支障が出ているのであれば、取締役会で問題提起して意見具申したが、それでも一向に改めようとせず、このままでは維新銀行のためにならないということになって、初めて頭取に対して退任を申し出るのが常道ではないかと思います。皆さんは業績を上げてくれることを期待されて株主総会で取締役に選任され、株主の負託を受け役員報酬をもらっているにもかかわらず、取締役としての責任も果たしもせずに、自分たちの好き嫌いで徒党を組んで頭取を外そうと談合するようなことはまともなことではなく、取締役としては失格であり、この様なことを組織が許していたら必ず当行の組織も急速に衰退し、行内も割れてしまいます。

 谷野頭取への反感を共有するグループの数による暴挙は、いずれ明白になり、ペイオフ全面解禁を控えたなかでマスコミなどのネタにもなるし、信用失墜、組織の混乱、行員の士気の低下、監督官庁からの圧力等は避けられないと思います。取締役の皆さんは、維新銀行ために如何に行動すべきかをよく考えて決議に臨む必要があり、付託された責任は重大であると思います」
と述べた。

(つづく)
【北山 譲】

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※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。


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