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HPでは公開されない国会議員資産公開
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2013年5月30日 13:37

 5月27日、衆議院は、昨年12月に当選した衆議院議員の資産等報告書を公表した。ところが、この報告書のコピーを手にできるのは、国会記者クラブに所属する大手マスコミだけで、報告書は、衆議院ホームページで見ることはできない。法に則して公開されるべき情報が、実質的に閉ざされたなかにおかれている。

<法と矛盾した限定公開>
 資産公開法(正式名称「政治倫理の確立のための国会議員の資産等の公開等に関する法律」)第1条は、「この法律は、国会議員の資産の状況等を国民の不断の監視と批判の下におくため、国会議員の資産等を公開する措置を講ずること等により、政治倫理の確立を期し、もって民主政治の健全な発達に資することを目的とする」としている。
 同法を遵守するならば、"国民の不断の監視と批判の下"におくため、いつも国民が資産公開のデータを見ることができるようにするべきであろう。
 ところが、現在、衆議院議員の資産公開のデータを見るには、東京の衆議院第一議員会館地下1階の資産等報告書等閲覧室まで行き、住所、氏名、職業を記載して、閲覧の申請をしなければ、見ることができない。衆議院ホームページなどで、報告書を見ることができないからである。閲覧室には、カメラ、携帯電話などは持ち込むことが許されず、もちろんコピーも許されない。閲覧してメモをするか、持ち込みが許されているパソコンに入力するかしなければならない。地方在住であれば、東京に行く費用もメモなどをとる時間も、正確な情報を得るための大きなハードルとなる。閲覧可能な時間も平日の午前9時30分~12時と午後1時~5時30分に限定されている。
 参議院議員の資産公開に関しても同様で、1997年11月20日の参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会で、黒澤隆雄参議院事務総長(当時)は、資産公開法第5条により、「資産等報告書等は閲覧の方法でのみ公開されることになっている」と、答弁している。参議院議員の資産公開は、参議院議員会館地下2階の資産等報告書等閲覧室で、衆議院と同様に行なわれている。

 資産公開法第5条は、公開方法を閲覧に限定しているわけではない。第2項で、「何人も、各議院の議長に対し、前項の規定により保存されている資産等報告書及び資産等補充報告書、所得等報告書並びに関連会社等報告書の閲覧を請求することができる」とされているのみで、閲覧しかできない、閲覧しか認めてはいけないとは規定されていない。しかし、閲覧しかできないという運用がなされ、衆議院事務局議員課資産公開係は、「現物を閲覧するという規定になっている」と、説明する。

<記者クラブには「特別の配慮」>
minsyusyuginoarikata.jpg 衆参の事務局は、資産公開は、閲覧のみで、コピーは認められないという立場をとっているが、国会記者クラブに所属するマスコミだけがコピーを入手している。記者クラブから議運委員長に申し入れがあり、各社1部ずつ、事前にコピーを入手できるようになっているのだ。前出の資産公開係は、「(記者クラブ加盟社には)特別の配慮をもって渡している」と説明。さらに、共同通信から配信を受ければ良い、記者クラブに相談してみてはどうか、などと限定的な資産公開の状況が、メディア間の問題ととれる主張をする。ホームページに掲載することについては、ホームページにどのようなものを載せるかは、載せる側の任意であると主張した。資産公開法がないがしろにされている実態が浮き彫りになった。

 こうした状況を問題視する声は以前からあがっていた。1997年5月28日、衆議院公職選挙法改正に関する調査特別委員会に、参考人として出席した東京工業大学大学院社会理工学研究科の田中善一郎教授は、資産公開制度について、「問題は、一般有権者が見ることが大変難しい状況になっているということ。自由にコピーができる状況をぜひ実現してほしい。情報をどんどん公開していくというのが民主主義の正しいあり方だと思う。将来的には、電子化することによって、パソコンを通じて、ネットワークを通じて自由に有権者が入手できるような形にぜひ改めてほしい」と、述べている。それから16年が経ち、当時よりも格段にIT化が進み、選挙でもインターネットの利用が認められるようになるなか、まったく進歩が見られていない。 

<閲覧状況も把握せず>
 まったくもって不十分と言わざるを得ない状況だが、現行のやり方にもずさんな実態が見受けられる。閲覧時には、名前、住所、職業を書かなければならないが、衆議院議員課では、閲覧件数の把握もしておらず、議運などに報告もしていないという。あきれたことに、閲覧申請書への記入は、「資産報告書等の閲覧に関する件(衆議院事務総長決定)」により決まっているが、なんのために書いてもらっているかは、わからないという。しかも、申請書は、「適切な時期」(1年ぐらい後)に処分されているというので、制度の運用が適切になされているかどうかを検証することもできない。これは、非常に問題であると言わざるを得ない。
 資産公開法第5条第1項では、「資産等報告書及び資産等補充報告書、所得等報告書並びに関連会社等報告書は、これらを受理した各議院の議長において、これらを提出すべき期間の末日の翌日から起算して7年を経過する日まで保存しなければならない」とされているが、この調子では、7年経ったら、すぐに捨てられてしまうのではないかと大いに危惧する。

 参院選後には、参院で資産等報告書が公表されることとなる。また、今回のような不完全な公開となってしまわないようにするためには、運用を変えれば良い。閲覧制度をきちんと運用しつつ、ホームページで国民に報告書を公開しても、資産公開法の趣旨には反しない。早期の改善を期待したい。

【石坂 文】


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2013年5月16日 07:00
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