「セキュリティに対する考え方を変えていただかなければなりません。一部の優秀なエンジニアが頑張り、多くの方がそこに依存する時代は過ぎました。今は個人が攻撃対象なので、自分の身は自分で守らなければ誰も守ってくれません」、「家の鍵を閉めて外出し、外では交通事故に気をつけるのと同じ感覚で対応いただくことが必要なのです」
日本を代表するセキュリティアナリストの守屋英一氏にきいた。昨年6月に、『フェイスブックが危ない』(文春新書)で世の中に警鐘を鳴らし、今月、発売された2作目『フェイスブック 情報セキュリティと使用ルール』(あさ出版)が今、話題を呼んでいる。
<SNSそのものが、モンスターになった!>
――著書1作目の『フェイスブックが危ない』は大変評判になりました。読者の直接的な反応はいかがでしたか。
守屋英一氏(以下、守屋) おかげさまで、1作目は大変に好意的に読者に受け入れられました。本の出版後、講演の依頼が増え、会場で直接読者の意見を聞くことができました。
1作目は、一般個人に対し、ストーカー等SNSで起こり得るさまざまな可能性を注意喚起することが目的でした。"パスワード"をこまめに変えることの重要性とか、"ウィルス"対策等について解説させていただきました。書いた当時は「フェイスブック」に関して、日本国内では前向きな話がほとんどでしたので、一定の目的は果たせたと思います。しかし、書かせていただいた警告が、最近すごい速さで、しかも大規模に現実化してしまっていることがとても残念です。実は、1作目の掲載事例は海外事例が主で、国内事例はほとんどなかったのです。
しかし、今日現在で言えば、同じような国内事例が確認されており、これから、ますます増えてくる可能性があります。SNSそのものがモンスターになりつつあるのです。一歩足を踏み入れると、便利なだけに、抜け出せないのです。それだけに、上手く付き合っていく必要があります。
<「SNSガイドライン」が形骸化している!>
講演を通じて、企業の方がとても危機感を持っており、しかし現在のところなす術がないとの話を多く聞かされました。社員にどう説明するのか、どう指導するのか、その方法が分からないとのことでした。しかし、それ以上に驚いたのは、専門家でなくても知っている基本的な知識、当たり前の話でさえ、担当者がほとんど知らなかったことです。
今回2作目を、企業向けに書くことになった動機はここにあります。日本の企業は、大企業を中心に「SNSガイドライン」はしっかりあります。しかし、その多くは形骸化してしまっているのです。
2冊目は、セキュリティ本としては珍しく、スマートフォンに特化(PCでしかできないない操作も一部あります)して書きました。また、読者の身近な話題、ケーススタディ等も多く載っています。企業視点とはいえ、一般個人にも十分にご活用いただけると思います。何よりも、わずか100ページなので気軽に読んでいただけます。
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<プロフィール>
守屋 英一(もりや えいいち)
2007年に日本アイ・ビー・エム株式会社入社。セキュリティ・オペレーション・センターを経て、2011年に情報セキュリティ推進室に異動。社内の不正アクセス事件及びISMS内部監査を担当。2012年にIBM Computer Security Incident Response Teamへ異動。
社外活動として、明治大学ビジネス情報倫理研究所客員研究員、日本シーサイト協議会運営委員、警察庁「不正アクセス防止対策に関する官民意見集約委員会」委員、経済産業省「CTAPP運用・技術WG」委員ほか多数。
2012年度NPO日本ネットワークセキュリティ協会表彰個人の部を受賞。著書に「フェイスブックが危ない」(文春新書)等がある。
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