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"燃える氷"メタンハイドレートはエネルギー革命の推進役になり得るものか(中)
未来トレンド分析シリーズ
2013年8月21日 07:00

sea_4.jpg 2001年には経済産業省が「我が国におけるメタンハイドレート開発計画」を策定。開発計画の第一段階(01年から08年度)ではエネルギー効率の高い生産手法である「減圧法」が開発され、08年3月にはカナダの永久凍土においてガス生産の実証実験に成功。アメリカ、カナダ、ドイツ、日本の4カ国が取り組んだプロジェクトであったが、採用された技術は日本製であり、世界の注目を集めた。
 現在は開発計画の第二段階(09年から15年度)にあり、渥美半島沖合において世界初の海洋産出試験が実施されたばかりである。今後は総合的な検証を行なう第三段階(16年~18年度)を経て、実用化を目指す段取りとなっている。
 幸い、日本海側にもメタンハイドレートが海底の表層に存在することが明治大学や北見工業大学等の研究チームによって確認されている。これまで新潟県の上越沖や能登半島の西方沖などで調査が行なわれてきた。また、来る9月22日から30日にかけては、鳥取県沖の隠岐トラフで、明治大学の松本良教授らによるサンプリング調査が予定されている。太平洋側のメタンハイドレートが海底の地層の中に存在するのに比べ、日本海側は海底の表層に存在するケースが多いのが特徴である。
 「海洋基本計画」(13年4月26日閣議決定)は、この表層型のメタンハイドレートの資源量を把握するため、「13年度以降、3年間程度で、必要となる広域的な分布調査等に取り組む」としている。日本海側の10府県も「海洋エネルギー資源開発促進日本海連合」(会長:山田啓二京都府知事。事務局長:泉田裕彦新潟県知事)なる組織を立ち上げ、情報収集や調査を支援することで新たな産業の活性化を図る動きを見せ始めた。
 こうした資源量の調査に加え、表層型に適した採掘方法の確立も課題と言われる。我が国が全力でこの海底に眠る資源の開発に邁進している理由は、その膨大な資源量にある。日本近海には7.4兆m3ものメタンハイドレートが存在すると推定されているからだ。これは、日本の天然ガス使用量に換算して約100年分に相当。しかも、メタンは焼却時の二酸化炭素や窒素酸化物の排出量が、石油や石炭と比べはるかに少ない。そのため、地球温暖化対策の観点からも注目されている。

 とはいえ、正確な埋蔵量の推定には詳細な調査が必要とされる。そのため02年には「メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム」(MH21)が設立された。独立行政法人「石油天然ガス・金属鉱物資源機構」(JOGMEC)、財団法人「産業技術総合研究所」、財団法人「エンジニアリング振興協会」が連携し、資源量の調査、生産手法の開発、環境への影響評価の各分野で共同の作業を進めている。

 この未来のエネルギー源の調査研究は日本以外にもアメリカ、カナダ、インド、中国、韓国などが国家プロジェクトとして取り組んでいる。さらには、ロシアもこのメタンハイドレート開発競争に参戦し始めた。ロシア科学アカデミー極東地質学研究所によれば、クリール諸島(千島列島および日本の北方領土)の大陸棚には最大で87兆m3ものメタンハイドレートが眠っているとのこと。この埋蔵量は、日本の年間消費量に換算すれば745年分に相当する。ロシアは日本を将来の輸出先として検討しているようで、国営の石油大手「ロスチネフ」がパラムシル島付近の海底での調査に入ると言われる。
とはいえ、資源調査に関しても、生産技術の面においても、日本が最も進んでいる。13年の3月に実施した渥美半島沖合での海洋産出試験は世界初の試みだ。また、採掘後の環境評価は、日本以外の国はいまだ取り組みすら行なっていない。この点でも日本の取り組みは先進的といえよう。

(つづく)
【浜田 和幸】

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<プロフィール>
浜田和幸氏浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。


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