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輝く九州の女性たち

インドネシアでのマングローブ植林こそが天職(1)~(株)ワイエルインベスト 川添香織氏
輝く九州の女性たち
2013年8月28日 10:30

 インドネシア政府が運営するシドアルジョ海洋水産専門学校(Akademi Perikanan Sidoarjo、以下、APS)。その卒業式に招待された日本人女性がいる。(株)ワイエルインベスト(本社:福岡市中央区、山本亮社長)の川添香織氏だ。一度は国内で福祉職に就く機会を得ながらも、より広く険しい世界で人々を支える道を選んだ。しかし川添氏の笑顔からは、苦労の跡形すら感じられない。持ち前の意志の強さと実行力で、明るく朗らかにインドネシアでの環境保全事業に取り組む同氏の姿に迫る。

<インドネシア住民たちの要望を受けて新事業へ>
 ――この7月、山本社長を始めとする(株)ワイエルインベストの皆さんがAPSの卒業式に参列されるにあたって、同行させていただき、ありがとうございました。インドネシアでの御社の取り組みが信頼を受けていることがよくわかりました。

 川添香織氏(以下、川添) こちらこそ、ご同行いただきまして、ありがとうございます。APSとは、エビ養殖池へのマングローブ植林事業でお互いに良い関係を築いています。そのご縁で、ASPが卒業式でも大変良くしてくださっていることを知っていただけて嬉しいです。

 ――政府が運営する教育機関と、絆を結ぶに至った過程をお聞かせ下さい。

kawazoe.jpg 川添 弊社は本来、ジャワ島ではなく、スマトラ島の干潟に新しくマングローブの森林をつくるという、新規植林事業を行なっていました。しかし、弊社の取り組みを見た地元住民や地方行政の方々から、「新しい森林もいいけれど、失われたものを再生させることも大切なのでは? 実はインドネシアでは、エビ養殖場の開発のためにマングローブが伐採され、深刻な問題になっている。そちらの再生に手を貸してほしい」という声を掛けていただくようになったのがきっかけです。

 ――インドネシアでは、1980年代、エビ養殖場の開拓にともなうマングローブの伐採が相次いだ時期がありましたが、なぜ、そのように深刻化したのでしょう。

 川添 インドネシアでは、住民一世帯あたり耕作地を2haまで持てるようになっていました。そこに、「マングローブを切ってエビ養殖池にすれば儲かる」という話があり、やると決めたらすぐやる傾向のあるインドネシア人が、一斉にその話を実行したのです。あっという間にジャワ島の北海岸からマングローブが消えてしまいました。急激に自然の循環サイクルが断たれたのですから、土地も池もやせ細る一方で、後には生産性のない池が広がるばかりになってしまったのです。
 やがて海洋水産省の方から、APSで実際にマングローブ植林によってエビ養殖池を甦らせる仕組みづくりを行なっているので提携してほしいとの話があり、詳しくお話をうかがったり視察をさせていただききました。その結果、今、地元の人々が喫緊の課題と考えているのは、林を再生させる事業の方だと考え、一時、新規植林事業を休止し、再生事業に取り組むことにしたのです。

 ――たしかに、林が再生することで、養殖池が甦るのは魅力的です。ところで、APSとはどのような学校なのでしょう。

sotugyosiki.jpg 川添 APSは、海洋水産業による経済発展に実践的に貢献することができる卒業生を輩出することを目的とし、インドネシア海洋水産省によって運営されている高等職業教育機関です。毎年、インドネシア中から多くの志願者が集まり、高い競争率を勝ち抜いてきた優秀な学生さんが集まっています。弊社は、同校と共同し、2009年より "シルボフィッシャリー"技術の開発と普及活動を行なっています。
 シルボフィッシャリーとは、『シルビ=森』と『フィッシャリー=水産養殖業』を合わせた専門用語で、森と水産養殖の共生によって、より環境に優しい産業の発展を目指すものです。APSが取り組んでいるのは、マングローブの森を再生させ、自然の循環体系を活かしてエビの養殖を行なうことなのです。

 ――シルボフィッシャリーは、御社の理念にマッチしていますね。実際に作業を行なってみて、新規植林と再生植林では、手ごたえに違いがありましたか。

 川添 弊社が新規植林に取り組んでいたのは、塩分の多い干潟だったということもあり、苗が成長しにくく、成長しても枯れやすかったのですが、エビ養殖場はどんどん育つので、目に見えて成果が現れるという、今まで得がたかった手ごたえがありました。やはり、何もなかったところに新しいものを育てていくのは大変な作業なのだと、改めて実感しました。インドネシア側は養殖池の再生を望んでいますし、弊社にとっても、環境保全事業の効率が高まるということで、Win-Winの関係が築けることがありがたかったですね。良いパートナーができた、という大きな喜びも得られました。

 ――新規植林は大変な作業だったのですね。しかし、そこでさまざまな苦労を乗り越え現地の人々の信頼を得られたからこそ、APSとの協力も実現したのでしょう。今、日本には、海外での仕事に憧れても、飛び出す勇気が持てず躊躇している方もいらっしゃると思います。川添さんのように相手の懐に入って、現地の人々と同じ目線で仕事をしていらっしゃる方がいることを知れば、大いに励みになると思いますよ。

 川添 私はただ、自分のやりたい仕事がインドネシアに、そして弊社にあっただけなのですよ。好きなことをさせていただいて、皆さんに喜んでいただいているのですから、励みになるでしょうか(笑)。大変だとは思っても、苦労をした、という気持ちそのものがないのですよ。

(つづく)
【黒岩 理恵子】

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