<大河ドラマを契機にさらなる観光振興を>
――話は少し変わりますが、来年はNHKの大河ドラマにて「軍師官兵衛」の放映が予定されており、地元では、官民ともに盛り上げていこうという機運が感じられます。福岡商工会議所でも、県や市とともに「『軍師官兵衛』福岡プロジェクト協議会」を立ち上げるなどされていますが、今回の大河ドラマの舞台として選ばれたことで、福岡にどのような影響や経済効果などが生まれると考えられますか。
末吉紀雄氏(以下、末吉) 歴史は、少ない投資で大きな経済効果を生み出せる貴重な資産です。過去に『篤姫』や『龍馬伝』などもそうであったように、たとえば、大河ドラマのファンであり、旅好きで家計にも余裕のある中高年の世代らが、ドラマの舞台となった地を訪れたりするなど、膨大な経済効果を生み出します。
さらに今回は、主役の黒田官兵衛を人気アイドルグループ「V6」の岡田准一さんが演じることもあり、若い女性の視聴者も加わって、地域経済の活性化に一役買うことになるのではないでしょうか。
福岡商工会議所では、今回の大河ドラマを契機として福岡を全国にPRし、多くの観光客に来福していただくため、福岡市に対し、(1)「PRの実施やイベントの開催、まちなかの演出などに取り組み、街全体を盛り上げていくこと」、(2)「福岡城址をはじめ、黒田家ゆかりの施設などの整備を推進すること」を要望しました。
ただし、今回のような大河ドラマでの観光促進は、大きな経済効果を生む一方で、その翌年への反動が大きいことが懸念されます。そのため、大河ドラマをきっかけとした観光客のリピーター化が課題となります。
福岡市は、昨年度を「観光元年」と位置づけ、さまざまな施策に取り組んでいます。「軍師官兵衛」の放映を「観光都市・福岡」の起爆剤の1つとして、今後、さらに観光振興を図っていかなければなりません。福岡商工会議所も、行政と連携して、さらなる観光振興に取り組んでいきたいと思います。
――今回の大河ドラマの放映によって、福岡という地が全国的に注目を集めるのではないかと、少なからず期待してしまいます。今回、弊社の特集号でも「福岡の都市力」をテーマとしておりますが、ここ福岡の都市力についてはどのようにお感じになられていますか。末吉様のざっくばらんなご意見をお聞かせください。
末吉 都市を構成する要素は、さまざまあります。そのなかで福岡は、たとえば人口増の要因にも挙げたように、マーケットの成長性といった「経済分野」、博物館・美術館などの「文化面」、大学・専門学校などの「研究・教育」、食や自然、祭り、住みやすさなどの「住環境」、域内や国内外との「交通アクセス」など、いずれの要素も一定程度にバランス良くそろっているのではないでしょうか。
また、「21世紀はアジアの時代」とも言われます。これまでは、東京・大阪・名古屋などの都市圏が産業・経済を牽引してきましたが、「アジアとの近接性」や「震災等の災害リスクの低さ」などを背景に、これからの日本にとって、福岡の重要性はますます高まっています。
そうした期待と役割を果たし、アジアの諸都市に伍していくための都市の整備が必要です。
<プロフィール>
末吉 紀雄(すえよし・のりお)
1945年、福岡県生まれ。67年に西南学院大学商学部卒業後、日米コカ・コーラボトリング(株)(現コカ・コーラウエスト(株))入社。2002年に代表取締役社長兼CEOに就任。10年1月より代表取締役会長。2011年11月に、福岡商工会議所会頭に就任した。
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