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東京独り勝ちの日本最前線レポート(中)
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2013年12月 4日 13:22

 3年3カ月の民主党政権から、安倍晋三総理のもと自民党政権が復活して間もなく1年が経過しようとしている。「日本を取り戻す」というキャッチフレーズを掲げ、アベノミクスと呼ばれる経済政策を打ち出しているが、いまだ地方経済に回復の流れは見えてこない。支持率は依然高いとはいえ、当初の期待から、取り残された地方から批判の声が上がりつつある。実態は首都東京(とその周辺都市)だけが独り勝ちの様相だ。"勝ち組"東京の実情はどうなのか、11月20日から22日まで東京にて取材したものを報告する。

<眠らぬ街新宿・歌舞伎町の裏表>
 東京スカイツリーを後にした記者は、東京メトロ銀座線から丸ノ内線に乗り換えて、新宿へと向かった。新宿には日本最大の歓楽街、歌舞伎町がある。新宿駅に到着すると老若男女が次々と歩いていた。
 新宿に来ると心なしか胸躍る気分になる。翌日、議員会館を訪ねることもあり、お酒もそこそこに早々に就寝についたが、人の多さはもちろん福岡の比ではない。おなじみの歌舞伎町一番街通りのネオン看板をくぐると、「お兄さん、どうですか」。次々、飲み屋や風俗店の客引きが声をかけてきた。翌日仕事があるのだろうが、ほろ酔い姿で職場の同僚同士で連れ立って歩くサラリーマンやOLの姿も多数みられた。ホストと腕を組んで得意げに歩く若い女性や酔った勢いで通行人に絡む外国人のグループも見かけた。眠らぬ街、歌舞伎町を歩いていると日本の長期にわたる不況などないかのように錯覚してしまう。

kabukityou.jpg だが、よく目を凝らしてみてみると、歌舞伎町入口にある吉野家には、並盛280円の牛丼をかきこんでいる外国人がいた。日本に来てどのくらい経つのだろうか。母国に両親や家族を残して稼ぐために来日したのだろうかなど思いを巡らせた。飲み屋や風俗店が入る雑居ビルの下や路上には段ボールで暖を取るホームレスの姿があり、新宿駅西口から東京都庁へとつながる通路は、ホームレスであふれかえっていた。
 靖国通りで客待ちをするタクシー運転手に声をかけてみると「アベノミクス? まったく影響来ないよ。タクシーは最後のほうじゃないですか」との答えが返ってきた。
 ふと、福岡出身のシンガーソングライター椎名林檎の「歌舞伎町の女王」の一節が浮かんできた。「一度、栄えし者でも必ず衰え行く その意味を知る時を迎え 足を踏み入れたは歓楽街」。一見華やかな新宿・歌舞伎町も裏側を見れば、その日の稼ぎに必死な現実と貧困との隣り合わせなのである。

<未来を奪わないでほしいとの若い世代の声>
 東京の朝は早い。山手線の始発は午前4時台から動き出す。記者は5時に起きて、チェックアウト前、歌舞伎町から新宿駅周辺を出歩いてみた。歌舞伎町では、カラスのけたたましい鳴き声が聞こえ、深夜に出されたごみの山を収集車が次々回収し、地域のボランティアによる清掃活動が行なわれていた。さらに奥に進むと、早朝から風俗店の呼び込みが行なわれていた。中にはたちふさがりしつこく誘うおばちゃんもいた。新宿駅に行くと、前日夜は歌舞伎町で遊んだ出張族のサラリーマンも仕事モードに切り替えて足早に改札をくぐっていく。普段と変わらぬ光景が見られた。
 今回、上京した理由の一つは、陳情活動に参加することにあった。政治家に陳情をするのは地方自治体や業界団体ばかりではない。最近はインターネットを通じて知り合った若い世代が議員会館を訪れるケースが増えている。顔ぶれをみると年休を取った会社員や遠く長野県から大学生、ベビーカーに幼い子供を連れた主婦も参加した。記者と同じ福岡県出身者もいた。
 彼らは、10月の副大臣・政務官人事で文部科学副大臣に就任した西川京子衆議院議員(比例九州)と面会の約束をしていた。西川副大臣は、福岡県北九州市が地盤。夫婦別姓や婚外子の相続差別撤廃の民法改正に反対するなど自民党保守派で、安倍総理に思想的に近い。陳情内容は、道徳教育の推進や国語教育の充実の必要性のほか、日本学生支援機構の奨学金返還についての要望であった。長期の不況、グローバル化により若い世代の非正規雇用が増え、大学などで借りた日本学生支援機構(旧・日本育英会)の奨学金返還が困難な人が増えた。ところが支援機構は、奨学金をローンと位置付け、滞納が続くと法的手段をとるケースが増えている。陳述の趣旨は、無利子奨学金を増やし、強硬な取り立てを改善するなどを求めるものだ。

 安倍政権の動きを見ていると、米国や財界の意向を受けて小泉政権で進められた新自由主義的な政策が再び強まる気配がある。たとえば、「首切り特区」と批判された解雇規制の撤廃や正社員から非正規雇用へと切り替える動きなどだ。月収が手取りで10万円足らずのワーキングプアでは、奨学金返還どころではない。加えて増大する社会保障費のなかでも、生活保護費の増加が問題視されている。昨年、福岡市の生活保護の実態を取材した際に、女性を含めた若い世代が多く生活保護を受給している光景を目の当たりにした。社会人として自立していくためには、本人の努力がもちろん前提だが、就労の安定と、結婚し家庭を築けるだけの経済基盤の確立が何よりも不可欠だ。
 記者の「アベノミクスの第3の矢、成長戦略は、小泉改革を踏襲するもので、都市部と地方の格差や若者の就職問題の解決に逆行しないのか」との問いに、西川副大臣からは「規制緩和のマイナス面は熟知しており、要望内容はこの1年の改革で取り組んできた」としたうえで、「卒業後、就職しないニート化する大卒などを出さないよう、スキルを持った職人を育成する学校づくりに力を入れたい」などの回答があった。若い世代の未来を奪わないでほしいという思いは、果たして安倍政権に届いたのだろうか。

(つづく)
【八女 瞳】

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