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諫早開門義務不履行に抗議(前)~漁民・農民・防災共存の道
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2013年12月24日 13:26

 国営諫早湾干拓(長崎県)をめぐって、潮受け堤防排水門の開門(常時開放)を命じた確定判決に国が従わない憲政史上初の異常事態は、ついに現実のものとなった。
 開門義務の履行期限(12月20日)翌日の21日、同県諫早市内で、有明海の漁業者、沿岸住民ら約100人が抗議集会を開いた。確定判決は、福岡高裁が2010年12月、有明海4県の漁業者が開門を求めた訴訟(よみがえれ!有明訴訟)で、諫早湾閉め切りと漁業被害の因果関係を認定した上で、原告漁業者58人の漁業行使権の侵害状態を違法とし、国の開門義務を認めたもの。防災機能等の代替工事に必要な3年間の猶予期間後、排水門を5年間にわたり常時開放するよう国に命じていた。

 集会では、「民主的国家体制の基本原則を踏みにじる国の暴挙に断固抗議する」とする抗議決議を満場一致で確認し、「国の開門確定判決敵視の姿勢を改め、農・漁・防災共存の開門を実現するまで、全力を挙げる決意」を表明した。佐賀、長崎両県の原告漁業者らが怒りの声を農水省と安倍内閣に突きつけ、「ここに宣言します。命ある限り、今の農水省の方針が変わらない限り、たたかっていく」と訴えた。

<永遠のゼロ――農水省の「開門しない」宣言>
農水省幹部(左から2人)に対し、開門義務の不履行に抗議する漁業者ら=12月21日、長崎県諫早市 「国民主権」と「官僚主権」が激しい火花を散らした。
 開門を求める漁業者らは、国が確定判決に従わない憲政史上初の事態に対し、首相官邸の責任ある対応と、林芳正農水相の出席、謝罪と直接説明を要求していたが、大臣に代わって、農水省の瀧戸淑章農地資源課長ら官僚3人が出席。瀧戸課長によれば、官邸は「農水省できちんと対応するように」と指示し、大臣は「これまで対応してきた3人で対応するように」と命じたという。馬奈木昭雄・有明訴訟弁護団長は強く要求した。「会う気がないということだ。とんでもない。もう一度要求する。総理は出てきなさい」。
 「霞が関文学」と言われる官僚用語を駆使して、時間をやり過ごそうとする瀧戸課長、吉村馨・九州農政局長ら。確定判決の開門義務を履行できなかった理由、打開の方針について問われると、「開門に努力したが、11月12日に開門差し止めの仮処分決定(長崎地裁)が出た」「(開門に反対している長崎県知事らに)話し合いについてもらい、話し合いによって解決したい」「話し合いをお願いしている間に、新しい手順に入るのは控えたい」と繰り返した。
 永遠に話し合いを呼びかけ続け、長崎県知事が応じなければ、開門しないということの「霞が関文学」表現、永遠のゼロ回答。「国の官僚は自分たちが国だと思っている。官僚が決めたとおりに物事が決まる、国民の声は聞く必要がないと思っている」(馬奈木弁護団長)ということだ。

 原告らが求めた謝罪要求については、2時間余の集会の間、農水官僚の口から謝罪の言葉が発せられることはなかった。「謝罪の要求があり、それを含めて、今日ここに来てお話をしている」(吉村局長)と述べただけ。すかさず、馬奈木昭雄弁護団長が批判した。「頭を下げるふりをするのは結構だ。今までどこが悪かったのか真剣に反省し、今後どうするか示すのが、世間でいう謝罪するということだ。ごめんと言ったふりして、陰では舌を出しているのが農水省の姿だ。絶対に許さん」。
 その直後、退席しようとする農水官僚。馬奈木弁護団長が一喝した。「ここに座って、聞いておきなさい」。

<怒りを通り越して、あきれ、残念、悔しい>
 漁業者は次々と抗議の声を突きつけ、共通して「怒りを通り越した」と表現した。あきれた、残念だ、悔しい・・・。その先にあるのは、無力感ではなく、どのような激しい表現にも表せない怒り。巨大な障害物に立ち向かう決して折れない「鈍角」の怒りがあった。

 普段は声を荒げることのない、佐賀県太良町の漁業者、平方宣清さん(61)の声は怒りに震えていた。
 「3年間、(防災、代替農業用水確保の)工事をきちんとやれば、営農者、背後地の洪水対策はできた。それは私たちの要求でもあった。国にだまされ、欺かれ、漁業者は生活を追われている」。集会の朝、漁の準備をしている漁民が「12月は1銭も稼いでなかもんな」と話していたという。
 「このような厳しい立場に追い込んでいるんですよ。あなた方に日本の国を任せられない失望感でいっぱいだ。海が元気になる可能性がある限り、開門へたたかっていく」。

 長崎県の漁業者もいる。長崎県島原市の中田猶喜さん(63)は、ここ数年、長崎県内が対立しているのを避けるため、表舞台に出て発言するのを避けてきた。
 「一生懸命、有明海再生までやらないといけないと、今日(集会に)やってきた」と語った。
 最盛期には、クツゾコ(ヒタビラメ)漁なら1回の漁で100キロ、7,000~8,000匹の漁獲があったのが、その前々日はたったの15匹。「15匹で油代が出ると思うのか!貧困のどん底。もうお金を借りるところもない。ここまで衰退させたのは、営農者ではなく、この人たちと諫干(諫早湾干拓)だ」。

(つづく)
【山本 弘之】

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