ネットアイビーニュース

NET-IB NEWSネットアイビーニュース

サイト内検索


カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

環境

諫早開門義務不履行に抗議(中)~漁民・農民・防災共存の道
環境
2013年12月26日 11:13

<「2つの法的義務」「漁民vs農民」・・・渦巻く対立>
 諫早湾干拓(長崎県)をめぐるキーワードはいくつかある。「2つの法的義務」、「漁民vs農民」、「佐賀vs長崎」、「(開門派)3県vs(開門反対派)長崎」、「開門と排水」、「常時開放と開門調査」などだ。いかに「対立」が渦巻いているかを物語る。

開門義務不履行に抗議する原告漁業者・弁護団=12月21日、長崎県諫早市 有明海4県漁業者は、諫早湾閉め切りが有明海の環境悪化と漁業被害の原因だとして、開門を求め、集団訴訟(よみがえれ!有明訴訟)を起こした。福岡高裁の確定判決(2010年12月)もそれを認めた。一方、干拓地営農者、干拓地周辺(背後地)の農業者・住民は、開門に反対している。干拓地営農者らの申し立てを受けて、長崎地裁の仮処分決定(11月12日)は開門差し止めを認めた。
 しかし、開門派の漁業者には、4県が含まれており、佐賀県だけでなく、福岡県、熊本県、そして長崎県の漁業者もいる。佐賀対長崎でもなければ、3県対長崎でもない。一方、開門に反対する諫早湾内の漁業者もいる。
 佐賀県の古川康知事は開門を求め、国が確定判決を守らない事態を「法治国家としてあり得ない」と批判。長崎県の中村法道知事は開門断念を国に強く求め、国の呼びかけている協議にも応じない構えだ。「開門するかしないかの二者択一だ。話し合い解決は難しい」とも語っている。

 対立と混乱は深まった――。誰もがそう思うのも無理はない。1997年の諫早湾閉め切りから16年余、長期化した有明海・諫早問題は解けそうにもないのか。

<「対立」をほどくカギ>
 「対立」をほどくカギは、長崎地裁仮処分決定と、長崎県知事の対応に隠されていた。

 干拓地営農者らが開門に反対する理由のうち、仮処分決定は開門差し止めの主張として認めた主なものは、(1)農業用水に使用している調整池に海水が流入するため塩水化し、農業用水の水源を失い農業ができなくなる(2)調整池の水位が諫早湾の干満により下がったときしか排水できなくなるので、大雨時の排水不良によって湛水被害が拡大する、(3)排水によって諫早湾内のアサリ養殖などに漁業被害が起きる――の3つだ。

 福岡高裁の確定判決と長崎地裁の仮処分決定。農水官僚は「2つの法的義務がある」と、しきりに苦悩を語る。これに対し、馬奈木昭雄・「よみがえれ!有明訴訟」弁護団長は、「ハムレットのふりをしている」と厳しく批判する。
 長崎地裁の仮処分決定は、開門を求める漁業者らにとって、国と開門反対派の「馴れ合い訴訟」の結果であり、国が開門しないために、自ら望んだ結果にしか見えない。「開門するための対策を何もせず、諫早湾閉め切りによって漁業被害が起きているという肝心かなめの言うべきことを言わず、あえて負けた」(馬奈木弁護団長)と指摘される。

<義務は衝突していない>
 そのような結果の産物でありながら、馬奈木弁護団長は「義務は衝突していない」と語る。

 開門のためには、農業用水を確保するための海水淡水化装置の設置や、洪水時排水ポンプの設置など、事前対策工事が必要だ。これまで3年間、農水官僚は「(対策工事は)期限までに間に合う」と言い続け、12月上旬という開門期限が迫っても「まだ間に合う」と言ってきた。その挙句、「努力をしてきたが、長崎地裁仮処分決定が出たので、開門できなくなった」(吉村馨九州農政局長)というのが、農水省の言い分だ。

 仮処分決定に言わせると、話は逆だ。長崎地裁は、農水省が対策工事を確実に行なうとは認められないから、将来被害が起きる恐れがあるので、開門を差し止める、と述べている。
 たとえば、海水淡水化装置は2014年5月完成、6月給水の計画だが、請負契約では、5月末以降の工期が約定されていて、計画通り完成できるか疑問だとし、農業用水が失われる可能性が高いとしている。また、全開門した場合、洪水時排水ポンプが設置されるとは言えないので、排水不良が起き、湛水被害が拡大する恐れがあるとしている。

(つづく)
【特別取材班】

≪ (前) | (後) ≫


※記事へのご意見はこちら

環境一覧
NET-IB NEWS メールマガジン 登録・解除
純広告用レクタングル

2012年流通特集号
流通メルマガ
純広告VT
純広告VT
純広告VT

IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル