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「NISA」(ニーサ)に潜むリスクを検証する(4)
経済
2014年1月17日 07:00

b_10.jpg それまで民間の銀行に対する支援に及び腰だった政府も、金融危機回避のために公的資金の投入を決断し、ひとまず金融危機は回避されることになった。しかし政府も厚生年金や国民年金の積立金の一部を、財政投融資を通じて株式市場で運用していたため、大きな損失を出し、公的年金制度が崩壊するとの憶測から国民年金の納付率が悪化していった。また民間の銀行や企業が持つ有価証券は多額の含み損を抱えており、時の政府にとっても景気回復のバロメーターでもある株価回復が喫緊の政策課題となっていた。

 やがて銀行業界が金融秩序を取り戻していくと、次に政府が手を付けたのは低迷する証券業界の救済だった。株価の低迷により個人株主の多くは証券市場から離脱していった。大蔵省(宮澤喜一大蔵大臣)は不況に喘ぐ証券業界の窮状を受け入れ、政府自らも「預金から投資」を推奨するようになり、今まで禁じていた「一任勘定」を一転して容認するという政策転換に踏み切った。そこで証券業界の救世主として登場したのが個人投資家向け限定の一任勘定取引、「ラップ口座」だった。

 ラップとは英語の「Wrap(包む)」という言葉に由来しており、各種の売買手数料を年間の手数料の中に含む(包む)という意味から「ラップ」と名付けられたと言われる。
 ラップ口座は、「証券会社や信託銀行などの金融機関が、投資家と投資顧問契約(投資一任契約)を結び、投資家と相談して決めた投資方針に沿って、投資家の資金を国内外の株式や債券、投資信託、商品、ヘッジファンドなどで運用・管理する」商品であった。
 この「ラップ口座」は個人に限定した商品であり、証券会社に投資顧問業務参入と株式売買手数料の自由化を認め、かつ安定した手数料収入を得ることができると共に、今まで証券会社に禁止していた一任勘定を公に認める画期的な商品だった。
年金基金などの大口の機関投資家は、巨額の資金運用を投資顧問会社や生命保険会社、信託銀行などに委託するのが一般的であるが、個人投資家でも「ラップ口座」を利用すると、資金運用を証券会社や信託銀行などに一任することができるメリットもあった。

 小渕恵三内閣が発足した1年後の1999年10月、不況が続く証券業界の救世主として鳴り物入りでスタートした「ラップ口座」ではあったが、いざ蓋を開けてみると顧客に膨大な自己売買の記録を書面で開示しなければならなかったために事務負担が重く、参入する証券会社は限られ当初の思惑から大きく外れることになった。
 一方顧客も100万円を限度に運用ができるNISAとは違い、ラップ口座を利用するためには、比較的まとまった運用資金が必要であったし、野村証券等の大手証券会社には最低でも数億円以上という制限が加えられているなど、証券業界全体の足並みが揃わなかったこともあり、なかなか普及するには至らなかった。

(つづく)
【北山 譲】

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