インターネット上の仮想通貨「ビットコイン」の取引所を運営する「マウント・ゴックス」(東京都渋谷区)が先月28日経営破綻し、東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請し、受理された。
同社のマルク・カルプレス社長は、「2月初めに取引所のシステムに不正アクセスがあり、ビットコインが引き出された可能性があることが判明。24日頃までの調査によると、利用者が保有する約75万ビットコイン(BTC)と、同社保有の約10万BTCの、ほぼすべてが失われていた。さらにビットコインとは別に利用者からの預かり金が最大28億円失われていたため、事業運営が困難と判断した」と説明。計85万BTCは25日時点の同取引所の交換レートに換算すると円で114億円。しかし、米国やユーロ圏の主要取引所では、1コイン=約550ドルで取引されており、海外での時価なら500億円弱に膨らむ計算になる。
債務超過に陥ったのは不正アクセスによるものと説明してはいるが、同社の杜撰な資産管理が問題だと指摘する見方もある。利用者など債権者数は12万7,000人で、このうち日本人は0.8%程度という。ビットコインの主要取引所の経営破綻は世界で初めてとみられる。
同社による民事再生手続きの申し立てを受け、東京地裁は1~2週間程度で再生手続きを始めるかどうかを決定する。決定した場合、同社は3カ月以内に、債権カットや事業の再構築などを盛り込んだ再生計画案を作成。債権者が再生計画を可決すれば、事業を継続しながら計画に従って返済することになる。
関係者の間では、「日本航空が破綻し経営再建を果たしたケースとは違い、マウント・ゴックスの再建を引き受ける有力なスポンサーが出る可能性は低く、破産に移行する可能性が高いのではないか。もともと被害者自身もリスクがあることを知ったうえで参加しており、救済は難しいだろう」との見方が広がっている。
今回、同社が経営破綻したことで仮想通貨が世間の注目を集めているが、ビットコインや取引所自体は、「政府公認」でもなければ、「登録業者」でもなく、法規制の対象外にある。つまりインターネット上の仮想通貨であり「私設取引所」であるため、金融庁は手が出せないのが実情だ。
現時点で政府は注意喚起にとどめてはいるものの、海外では犯罪で得た収益をビットコインに換える資金洗浄(マネーロンダリング)に利用されたと疑われる事例も出てきており、仮想通貨はいずれ何らかの規制を受けることになりそうだ。
かつて世界最大手とされたマウント・ゴックスが運営する取引所の破綻で、米国やユーロ圏などで急速に普及したビットコインの利用者にも大きな波紋を投げかけている。
※記事へのご意見はこちら