＜せめて最後の号だけは発刊してほしかった＞
　５月１日、弊社NET-IB編集部に、あるガリヤ関係者と見られる方からご意見が寄せられた。「５月号に関して、広告主から広告料は頂きません」という内容だった。実際、該当号に広告を掲載した企業に問い合わせたところ、請求書が送られて来ていなかったことを確認できた。よって、広告費を徴収する意図はなかったと言える。
　だが、一部の出稿先には、「５月号を心待ちにしていたのに、弁護士の破産通知のFAXで初めてガリヤの倒産を知った」というところもあった。事業の存続が切羽詰まった状況であったことは想定できるが、事前説明や謝罪がすべての取引先にはなされなかったようだ。

　ガリヤは５年前の2009年11月に、スタッフが大量離職する事態が起きた。その際、広告の集広から誌面づくりまで、長澤社長１人で行なうという厳しい試練を乗り越え、年末年始の発刊を無事終えた。その後、ボロボロの長澤社長を助けるために、１人、また１人とスタッフが加入し、誌面づくりを支えた。長澤社長の人徳により「ガリヤを復活させたい」「フリーペーパーを盛り上げたい」というスタッフに助けられた。一時期は広告誌面も充実し、「ガリヤが復活した」と喜ばしげに語る関係者もいたほどだ。取材の過程で、「ガリヤの営業の子たちはとても頑張っていた。その姿はとても印象に残っていた」という声が聞かれるほど、最後の最後まで発刊に向けて取り組んでいたことがうかがえる。

　これも、一見すれば美談に見えるが、広告主の立場になれば話は変わる。ガリヤの知名度と費用対効果に期待して会社の上司や経営者に稟議を通し、決済をもらい、企画を考え、記事の打ち合わせを行ない、取材、記事作成、校正といった工程を踏み、出稿を決断したところもあるだろう。ある出稿先の話になるが、「広告を出しませんか？とお願いされてお付き合いしましたが、取材しても広告原稿を持ってきてくれないので電話で催促したほど。しかし、持ってきたとしても間違いが多く、修正の対応など手間暇がかかりました」と不満を漏らす人もいた。電子書籍５月号のスタッフボイスを見てもわかるが、末期の社員は新人が多く、経験も浅いことから、出稿側に不憫な思いをさせていたのかもしれない。

　だが、お金を出す出稿側のなかには、事業の存続がかかっているところもあっただろう。そして数多くあるフリーペーパーのなかでもガリヤを選択し、希望を託していたところもないとは言えないはずだ。
　私は以前、フリーペーパーとタウン情報誌の記者をしていた。上司から「新聞は社会の木鐸だが、タウン誌は社会の一隅を照らす存在にならなければならない。光の当たらない人に光を当てるのが使命であり、一度創刊したなら廃刊は絶対に許されない」と教えられていた。その会社は法人名こそ変わってしまったものの、今でもタウン誌は途切れることなく発刊されている。この"社会の一隅を照らす"という言葉は最澄の有名な言葉であるが、「光のないところに光を当てる」のほかに、「スポイルされそうな人に光を当てる」という意味だと教わった。
　ガリヤのおかげで有名になった企業、飲食店、美容室はごまんとあるだろう。それゆえに今回の事態を惜しむ声も多い。だが、取材の節々で聞かれる「せめて最後の号だけは発刊してほしかった」という切実な声を、長澤社長はどのように受け止めているのだろうか。読者のために、そして広告出稿先のために、何が何でも情報誌というかたちで出版を果たすべきであった。

≪　（２）　｜　（４）　≫

※記事へのご意見はこちら