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SNSI中田安彦レポート

国家戦略「文装的武備」を(後・5) 
SNSI中田安彦レポート
2014年5月20日 07:00

 オバマ訪日で見えた日米関係の今後と
 あるべき「文装的武備」という日本の安全保障

副島国家戦略研究所 中田安彦

<日中関係の改善はあるか>
 安倍首相はこのまま日中首脳会談も行なえない状況であると、ますます米中の大国ゲームの渦の中に日本にとって割にあわない条件で巻き込まれていくことになる。

 連休中は、与野党の親中派の政治家たちが訪中団を結成して中国訪問を果たした。まず、自民党の高村正彦副総裁を団長とする「日中友好議連」が共産党序列第3位の張徳江・全国人民代表大会常務委員長と会談した。

 続いて、大平正芳元首相の女婿である森田一元運輸大臣らが幹部の自民党のアジア・アフリカ問題研究会(通称「AA研」)のメンバーが訪中し、今度は序列4位の兪正声・全国政治協商会議主席と会談している。AA研の訪中団のメンバーは計6人で、メンバーは全盛期が100人だったようだが、今は現役で20人程度だという。今回は野田毅・元自治大臣を団長にして行なわれた。いずれにしても親米派が若手人材も揃っているのに対して対中人脈は高齢化が著しい。

china_img6.jpg この訪中でも中国側は安倍首相が連休中欧州・ブリュッセルのNATO本部で行なった演説に対する批判を展開する一方で、兪氏は具体的に靖国神社参拝と沖縄県・尖閣諸島の2つの問題があると指摘。「1つ目は参拝をやめれば解決の道が開ける。2つ目は係争があることを認めてもらえればいい」と述べ、安倍首相に解決に向けた決断を促してもいる。

 兪氏は「安倍首相の靖国参拝の中止」「尖閣諸島の係争関係を認めること」を要求しているが、これは日本にとってもダメージが少ないまま認められるラインである。おそらく、この低めの要求についても安倍首相は無視するかもしれない。中国側は尖閣については単に「係争関係を認める」ということを要求しているだけであり、中国の主張を認めろとまで要求していない。ここは関係改善の緒になるはずだ。

 短期的に日中関係はAA研などの知中派議員団の活動によって、安定するかもしれないが、長期的には人脈のテコ入れが重要である。これまでアメリカの方に一方的にリソースを注ぎ込んできた対米交流の一部のリソースを中国やそれ以外にも欧州、アジアの国々にも振り向ける必要がある。だが、日米首脳会談のテーマやキャロライン・ケネディ駐日大使は日米の人的交流を大々的に推進する「トモダチ・イニシアチブ」を推進して若手をアメリカに呼び寄せようとしているから、路線変更はかなり難しいだろう。

 ただ、明るい話も無いわけではない。5月8日の日経新聞には、「日中版フルブライト 両国の懸け橋を育成 香港実業家が奨学金 」という記事が出た。この記事は次のように、日中の人脈を育成しようという運動を働きかけるようだ。

日中版フルブライト 両国の懸け橋を育成 香港実業家が奨学金

日本経済新聞 2014/5/8付

 【北京=島田学】日本での留学経験を持つ香港の実業家、曹其●(かねへんに庸)氏(75)が、将来の日中関係を担う人材を育成するため、私財1億ドル(約102億円)を投じて両国の学生を対象とする奨学金を創設した。
 奨学金名は「将来のアジア指導者育成奨学金」で、今年秋までに早稲田大や北京大など日中計6大学から学生約100人を選び支給する。奨学生は全員が毎年4週間のサマーキャンプに参加し、共同生活を通じて理解を深め合う。
 曹氏は6日、北京市内で開いた記者会見で「奨学生が様々な分野で指導者となれば(日中の)関係改善に向けた堅固な基礎となる」と強調。米国で各界リーダーを輩出するフルブライト、ローズ両奨学金などを挙げ「日中を中心に、アジア人によるアジアの未来のための奨学金にしていきたい」と話した。
 奨学金運営の諮問委員には、日本側から渡文明JXホールディングス相談役、九州経済連合会の麻生泰会長らが名を連ねるなど、日中財界が手厚い支援体制を敷く。
 渡氏は「企業としてもグローバル人材の供給源が新たに生まれることを大いに歓迎したい」と語った。


 このように、覇権国や、次に覇権国になろうとする国は、世界中から留学生を呼び寄せ、自分の国に有利になるように教育する。一方で、その周辺国はその一方的な影響を回避するべく人脈の多様化を図ろうとする。

 日本の場合は戦後、留学生が一方的にアメリカにだけ送り込まれてきた。「覇権国に擦り寄る」のは日本の外交といえばそれまでだが、これはあまりにもひどい。上の記事で紹介した日中フルブライトは「香港=中国」のイニシアチブで日本の財界がそれに乗っかった形であるが、日本側からも中国の留学生をもっと呼び寄せたり、日本から東南アジア、インド、欧州にも米国と同じバランスで若い人材を送り出す必要があるだろう。

 同時に、日中の間で環境問題などの協調できる課題を通じて、安全保障問題での緊張を緩和する技術協力のプロジェクトを行うべきだろう。それには福田康夫元首相が事務局長を務める「ボアオ・アジア・フォーラム」といった民間団体を通じての交流も可能だ。
 要するに日米同盟と並行して、日中協商を進めるべきだということである。

(つづく)

≪ (後・4) | (後・6) ≫

<プロフィール>
中田 安彦 氏中田 安彦 (なかた やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。


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