消費税8%の増税実施から、はや2カ月が経った。6日に内閣府が発表した4月の景気動向指数は前月比3.4ポイント低下。そろそろ5月の街角景気指数、消費者態度指数が発表される頃であるが、好転は望めないだろう。筆者の実感としては、いまだにコンビニで飲み物や食べ物を買う際に、レジで提示される金額が自分の感覚で予想していたものを上回っていて驚いてしまう。たとえ小額であれど、その都度「3%の重み」を感じずにはいられない。
そもそも、今回消費税を8%に引き上げたのは社会保障財源の確保のため。所得税や法人税を引き上げるのでは、一層現役世代に負担が集中することとなってしまう。よって特定の者に負担が集中せず、高齢者を含めて国民全体で広く負担する消費税がふさわしいとのことだ。「増収分はすべて社会保障費にあてる」とされている。
これはもっともらしく聞こえるが、"巧妙なウソ"である。政府の言い草では、これまでの社会保障費に増収分が上乗せされると思ってしまいがちだが、実際は今まで社会保障費にあてられた財源が別のことに回されるだけ。下のグラフは、2013年度および14年度の一般会計予算である。
消費増税にともない、14年度の消費税収入(見込み)は15兆3,390億円で、13年度10兆6,490億円から4兆6,900億円増えている。一方、歳出では社会保障費が14年度30兆5,175億円で、13年度29兆1,224億円から1兆3,951億円しか増えていない。社会保障費は前年費で伸び率わずか4.8%である一方、公共事業費は13.0%と福祉の3倍も伸びている。消費税の増収分はほとんど福祉にまわっておらず、公共事業費などの景気対策費にあてがわれていると言える。
そもそも、消費税は所得の少ない者ほど負担が大きい「逆進性」が指摘されているが、なぜ法人税や所得税の増税にはしなかったかというと、「景気に左右されない安定した財源」であるからという。
誰にとって「安定」しているかといえばもちろん国。消費税は最終消費者が払うのみでなく、すべてのサービスの流通にかかるもので、企業が税務署に払う。今回の消費増税でアップした3%分を価格に転嫁できないという中小企業・自営業も多くあると聞くが、消費税はたとえ赤字であっても払わなくてはならない。だから、「安定」した財源なのだ。
また、日本の法人税が世界的にみて高いという話も、とくに大企業には租税特別措置をはじめとする多くの税控除が適用されているためにあやしい。所得税も以前は15段階の刻みがあったが、いまは6段階だ。富裕税は50年代に廃止されて以来鳴りを潜めている。
消費増税は、言わば強きを助け弱きを挫く行ないである。「みんなのことだからみんな平等に」と、社会保障を盾に国民を脅す日本政府に、福祉の精神などない。
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