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福岡の特選企業

『包装力』で地域貢献を目指す(前) 児島段ボール(株)
福岡の特選企業
2014年6月18日 07:00

<物流の変化に合わせて段ボール事業に乗り出す>
児島段ボール(株) 児島 圭多朗 社長 福岡市の老舗「児島洋紙」の系列として1959(昭和34)年に設立された児島段ボール(株)の歴史は長い。同社を創業した児島家は岡山県発祥で、仕えていた主君の黒田家に帯同して福岡に根を下ろし、1648年に「香具屋」の屋号で、現在の児島洋紙の本社がある中洲中島町に構えた。その後、お香の道具や薬、紙などを取り扱う大店として発展。明治維新後、八代目児島善三郎信真氏が日本の洋紙需要の伸びを予測し、洋紙の取引を開始した。これが戦後、「これから段ボールの需要が高まるので、つくって売る事業をしては」との勧めもあり、分社化するかたちで同社が設立された。
 同社の児島圭多朗社長は、「地域にどれだけ密着して、ご要望をいただいたことに細かくお応えしていけるかだと思います」と語る。

 紙パルプ産業は3用途に分けられる。第1は印刷物。情報媒体としての紙。第2に、産業用、物流梱包資材とも呼ばれる。段ボールや袋など包装に使う紙。第3に家庭向けの紙。ティッシュやトイレットペーパー、紙おむつといった生活必需品がそれに当たる。

 昭和30年代は家庭向けの需要は大きくはなかったが、これから物流が盛んになることを想定し、段ボール事業に乗り出した。当時は物を運ぶ際の梱包は、袋に詰めるか、木箱に入れるかであった。段ボールが急速に普及したのは、物流手段の変化も大きい。高度経済成長のなかで、汽車や船舶からトラック輸送が主流となり、梱包手段も木箱から軽量で折りたたみしやすい段ボールへと変わっていった。

<九州地区で1割のシェアを誇る同社>
 同社は、設立と同時に古賀市にある福岡工場が操業を開始し、段ボール生産を行なってきた。70年代に日本を襲ったオイルショックでは、石油不足のなか紙が流通しない状態に陥り、段ボールを取引している顧客に遅滞なく供給できるかどうかの瀬戸際にあった。段ボール産業は、一次・二次産業と連動して伸びてきた。とくに野菜などを生産する農業関係者にとっては、段ボールがなければ出荷できない。このとき全社を挙げて供給を続けたことで、得意先からの信頼を獲得した。
 「営業の社員には、『誠心誠意を持って物事を見つめ、挑戦する気持ちと努力を継続することが大事』と言っています。それがお客さまとの信頼関係につながり、仕事でも好循環につながります」(児島社長)。

 81年に佐賀県神埼町に佐賀工場が完成。これにより生産力が飛躍的に伸びた。児島段ボールの販売エリアは、九州全域と山口県の企業が大半を占める。九州外では、沖縄県および離島と、一部は広島県や島根県にも納入している。九州地区における段ボールの需要構造は、2割が農業などの第一次産業向け、6割が飲料水・焼酎などお酒を含む一般食品、残り2割弱がその他の工業製品。同社の取引先は、JAや地場の食品会社など地場企業がほとんどである。近年は、通販事業においての伸びが大きいという。
 「同業他社との競争は激しいですが、現在、同社の九州地区でのシェアは全体の1割に達しています」と児島社長。

 段ボールは、リサイクルシステムが確立されており、工場や量販店などから回収後、再び新しい段ボールの原紙に再生されるほか、家庭から出された段ボールも新聞雑誌とともに資源回収される。その循環サイクルが確立されているのは、稀だ。段ボールは環境にも優しい製品なのだ。
 同社は、国内の需要の急速な伸びが見られないなかで、新たな商品開発に取り組んでいる。一例を挙げると、物流資材として魚箱がある。そのほとんどは木箱か、発泡スチロールでつくられている。鮮度が問われる魚の輸送にもっぱら利用されているのは、発泡スチロールだ。同社は、陸揚げした鮮魚の保存に使える耐水段ボールを用いた魚箱の開発に成功した。これは船から魚やイカを入れ、冷凍しても5時間保つことが可能だ。
 電気関係部品も、段ボールが利用されることが増えてきたという。国によっては、発泡スチロールの持ち込み自体を禁じている国もある。段ボールは1枚の段ボールを組み合わせて緩衝材にも利用されることも増えている。資源化ということで、段ボール自体を薄くして、軽量化をさらに進めていくという。

(つづく)

| (後) ≫

<COMPANY INFORMATION>
代 表:児島 圭多朗
所在地:福岡市博多区博多駅東1-17-25 KDビル
設 立:1959年8月
資本金:4,200万円
TEL:092-452-0631
URL:http://www.kdb.co.jp/

<PRESIDENT PROFILE>
児島 圭多朗(こじま・けいたろう)児島 圭多朗(こじま・けいたろう)
1960年12月、福岡市生まれ。上智大学経済学部卒業後、83年4月に丸紅(株)入社。92年11月に同社を退社し、同年12月に児島段ボール(株)入社。93年7月同社専務取締役を経て、2007年6月、児島段ボール(株)代表取締役社長就任。10年7月、児島洋紙(株)代表取締役社長就任。


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