先月12日の福岡県議会定例会で、民主・県政県議団の井上博隆県議が、臨時財政対策債(臨財債)の返済にあてる償還金を一般施策に流用したとされる件について、質問を行なった。
今年4月に流用問題を報じたのは朝日新聞。同紙は、全国で23都道府県が臨財債の返済を先送りしており、その累積額が11年間で約3,500億円に上ることを指摘。臨財債は、地方交付税の不足分を自治体が地方債のかたちで穴埋めし、後年度に国が返済資金を地方交付税で配分するもの。福岡県では、1,525億円の配分額のうち1,177億円が償還金にあてられていることから、348億円の「流用」があるとされ、使途状況が問われた。
答弁に立った小川洋知事は「地方交付税は一般財源であり、使途は自由」としたうえで、「返済については公債特別管理会計においてしっかり積み立てを行っている」と説明した。
県の担当も、「知事が説明した通り。たとえば30年後に満期一括償還する地方債に関しては、元利の30分の1ずつを年度ごとに減債基金に計上しており、問題はない。国が算定する基準財政需要額と実際の会計とのずれが生じてしまうのは仕方がない」としている。
地方交付税の算定については国が個々の地方自治体についてそれぞれ具体的に検討するのではなく、人口などから想定されたいわば「架空の自治体」をもとに大まかに概算する。自治体の個別のニーズに合うよう、それに補正が加えられるものの、いざ自治体が予算を組むとなっては、国の計算と自治体が組みたい予算編成とでズレが生じ、今回のように国が臨財債の返済金として算定していた額と、実際の返済金額とが異なることがある。
臨財債の返済に問題がなかったとして、それにあてることになっていたカネは何に用いられたのか、について明らかにすることはできない。臨在債の返済資金が地方交付税のなかに組み込まれるという、制度上の問題である。地方交付税は自治体の裁量で使い道を決めることができる財源で、その中に返済資金が溶け込んでいる形。つまり、「流用」先は、ほかの基準財政需要額のどの項目にも当てはまることになり、具体的に突き止めることができないのである。それが返済よりも優先させるべき事項だったかどうかも検討しようがない。
臨財債の「流用」問題については、日本の行政上の大きな課題である、"不透明さ"が現れた1つの形であるといえるだろう。
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