NETIBでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、とうとう支持率が5割を切り、不支持率との逆転が確実となってきた安倍内閣について触れた、7月6日付の記事を紹介する。
安倍政権の政策運営を主権者国民がどのように評価しているか。民主主義の視点から言えば、これが一番大切である。主権者の判断を直接知ることは難しいが、ひとつの参考になるのが、メディアが実施する世論調査である。
しかし、世論調査には多くの問題があり、調査結果をそのまま鵜呑みにはできないという制約がある。例えば、主要論点に関する主権者国民の判断が、調査するメディアによって偏りが生じるからだ。集団的自衛権行使容認の解釈改憲に賛成のメディアが調査すると、賛成多数の結果が得られ、反対のメディアが調査すると反対多数の結果が得られたりする。各新聞の購読者を対象に調査しているというなら分かる話だが、主権者を無作為に抽出して調査しているというなら、メディアによる偏りは、本来生じないはずである。
したがって、世論調査は中立公正の調査ではなく、調査機関の意図や操作が入り混じる調査であるということになる。考えられるのは、質問の言い回しによって回答を誘導していることと、調査を実施するメディアが、調査に何らかの人為的な操作を加えていること。恐らく、その両者が実行されているのだろう。
こうした限界を持つ世論調査であることを念頭に入れて世論調査結果を見なければならない。
例えば、集団的自衛権の問題では、読売、産経、日経は、御用機関に堕落して、これに賛成の見解を表明しており、世論調査も適正に行われているとは考えられない状況にある。他方、朝日や中日は集団的自衛権行使容認の解釈改憲に反対の見解を明示しており、世論調査でも、幾分のバイアスがかかることが考えられる。
この意味で、比較的中立の立場から調査を行っていることが期待できるのが、通信社共同である。
安倍晋三政権は、共同通信を完全支配できないことから、新しい通信社を創設することを画策しているとも見られている。裏側で暗躍するのが読売である。つまり、読売が指揮して、共同とは別に、もうひとつの通信社を創設する企みが存在しているのだという。
通信社は日本全国の情報空間を支配する上で、決定的な役割を担う。全国47の都道府県に地方紙がある。地方では、新聞購読者数のシェアで、この地方紙が第一位になっているケースがほとんどである。読売、朝日、毎日、産経、日経の全国紙5紙のシェアは、地方ではさほど高くない。地方紙がNo.1の地位を占めているケースがほとんどである。この地方紙は中央の政治、国の経済政策などに関する記事を十分には供給できない。そこで、こうした地方紙は、通信社が提供する記事を、そのまま掲載しているのである。
したがって、日本のマスメディア情報空間を支配する上で通信社が持つ意味は極めて大きいのである。安倍政権は読売と結託して、新しい通信社を創設し、日本の情報空間の支配をさらに強めようとしていると、業界ではささやかれているのである。
さて、本題は主権者の判断である。共同通信社が6月21、22日に実施した全国世論調査は、足下の主権者の判断をそれなりに正しく伝えている部分があると感じられた。
6月23日付のブログ記事「主権者の意思に反する安倍政権暴走政策運営」および、メルマガ第895号記事「主権者の意思に基づく政権樹立の決定的条件」にその内容を記述した。
その共同通信社が7月1、2日に、全国緊急電話世論調査を実施した。
ここで、ひとつの重要な結果が得られている。それは、内閣支持率が50%を下回ったことだ。内閣支持率は47.8%、不支持率は40.6%となった。10日前の調査では、内閣支持率は52.1%、不支持率は33.0%だった。支持率の急落と不支持率の急上昇が生じたのである。
共同通信が提示した世論調査結果では、主権者は、集団的自衛権行使そのものに反対し、安倍政権の行使容認の範囲が今後広げられてしまう危険が大きい、解釈改憲に向けて検討が十分に尽くされていないとの判断を明示した。
さらに、衆院を解散して国民に信を問う必要性について、必要があるが68.4%、必要がないが24.6%の結果を示した。安倍政権の暴走に対する主権者の判断が、急激に厳しいものになっていることが示されている。
政治の主役は、本来主権者であるべきだ。しかし、いま、その主権者の手に主権が存在しない。主権者国民の手に主権を取り戻さなければならない。
※続きは6日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第903号「安倍政権の下で暗黒社会に突き進む日本」で。
▼関連リンク
・植草一秀の『知られざる真実』
※記事へのご意見はこちら