2024年04月19日( 金 )

最高裁、衆院選3たび「違憲状態」~違憲状態国会議員に正統性なし!

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 最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)が11月25日、2014年12月の衆院選の投票価値が憲法の求める平等に反し、違憲状態だったと判断した。
 一人一票を求める弁護士、市民グループが全295小選挙区を対象に選挙無効を求めた訴訟の上告審判決だ。最高裁は、選挙無効の訴えは退けたが、「違憲状態」判決は3回連続し、今回2人の判事が違憲無効と判断した。
 国会や内閣は、国会議員の活動の正統性、日本の国家権力の正統性が揺らぐ異常事態にあることを認識すべきだ。

 衆院選の投票価値の不平等をめぐって違憲状態とする判決は、09年、12年、今回の衆院選と3回連続。1票の価値の格差が拡大したわけではなく、今回は、12年に比べて縮小していた。司法が国民主権の発揮に不可欠な「投票価値の平等」に対して厳格に判断する流れが定着したと言える。
 千葉勝美判事は個別意見のなかで、違憲状態とした多数意見について、国民的意見を集約して国政を運営することが深刻に問われる状況によって、「国民各自の自覚的で明確な判断によるべきであるという主権者意識」を強く生まれ、政治の正統性、政府・内閣の政策活動の正統性が厳しく問われるようになったことを踏まえた判断だ、という見解を示した。

 また、鬼丸かおる判事は個別意見で「(憲法は)できる限り1人1票に近い平等を保障している」と指摘した。マスコミは、投票価値の不平等を「2.13倍」だとか「何倍」だとか相も変わらず報じており、1票に満たない選挙権が与えられていないという本質から目をそらさせている。投票価値が有権者の住所によって、1人「1票」だったり、「0.5票」だったりするのは、「男性は1票、女性は0.5票」とするのと同じく不合理だ。女性が0.5票より大きい「0.7票」「0.8票」なら、差が「2倍未満」だから構わないという理屈はない。「2倍未満なら合憲」という都市伝説はもはや成り立たない。

 一人一票の実現に情熱を傾けている升永英俊弁護士は、「違憲状態国会議員は、国会活動の正統性がない」と強調してきた。
 最高裁も、参院選挙区選挙の投票価値の平等をめぐって、14年判決で5人の判事が補足意見として、「投票価値の不均衡の是正は、議会制民主主義の根幹に関わり、国権の最高機関としての国会の活動の正統性を支える基本的な条件に関わる極めて重要な問題であって、違憲状態を解消して民意を適正に反映する選挙制度を構築することは、国民全体のために優先して取り組むべき喫緊の課題というべきものである」と指摘した。

 国会活動の正統性のない国会議員が、内閣総理大臣を指名し、法律がつくられていき、憲法改正の発議までしようとしている。この不条理は、最高裁が選挙を有効と判断しても、消すことはできない。
 「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来」(憲法前文)する。
 「国会活動の正統性がない違憲状態国会議員」の暴走を止められるのは、主権者しかいない。


【山本 弘之】

 

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