2024年04月20日( 土 )

注目を集めているバイオシミラー市場(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
health2-300x194 韓国では最近、「バイオシミラー(biosimilar)」という単語が頻繁に登場し、新聞紙上を賑わしている。とくに、サムスングループがバイオシミラーに多額の投資をし、グループの主力事業として育成していく方針を打ち出しているため、なおさら市場の関心が高くなっている。しかし、バイオシミラーを理解している方は、意外と少ない。
 今回、なぜスマホ、テレビなどを製造してきたサムスングループが、クスリの製造をしようとしているのか。バイオシミラーはどのようなもので、今後、どのような可能性を秘めているのか――を取り上げてみたい。

 医薬品には大きく分けて、「合成医薬品」と「バイオ医薬品」がある。合成医薬品は化学合成でつくられたクスリで、バイオ医薬品は生きている生物から得られた物質からつくられたクスリである。どちらの医薬品の場合も、新薬を開発するためには多くの時間と巨額の費用を必要としており、15年前後の歳月と300億円程度の投資が必要になる。
 このように新薬は、莫大な投資を回収しなければならないため、どうしても高額にならざるを得ない。最近は、医療費を少しでも抑制しようとする政策の一環として、「ジェネリック医薬品」を使おうとする傾向がある。
 ここで、合成医薬品の場合は、オリジナルのものを「先発医薬品」といい、特許が切れた先発医薬品を複製してつくられたクスリを「後発医薬品(ジェネリック)」という。一方のバイオ医薬品の場合には、特許が切れたものを複製してつくったクスリを「バイオシミラー」という。この「バイオシミラー」とは、生物を意味する「bio」と、似ているという意味の「similar」を合わせてつくられた造語である。

 新薬は、開発されると一定期間、開発者の投資が回収できるように、特許で権利の保護を受けることになっている。しかし、この期間が満了すると、クスリは主成分を複製して後発医薬品をつくることが可能になる。しかし、同等性試験などでオリジナルと有効成分の種類、含量、剤形、効果、容量が同じであることが認められ、ジェネリック医薬品として承認を受けて、初めて販売が可能になる。
 合成医薬品の場合は、化学合成で作られる低分子化合物であるため、同じ有効成分を化学的に合成することが可能である。だが、バイオ医薬品の場合には、生きている細胞で高分子のタンパク質をつくる過程を経るため、完全に同じ製品を複製することはできない。ただ、同じではないが似たような製品がつくられるので、「シミラー」という名称が用いられるようになったわけである。このように、複製の過程が少し理解できると、「バイオシミラー」という名称にも納得がいくだろう。

 バイオシミラーはこのような性質を持っているため、オリジナルを複製したという点ではジェネリック医薬品と同じである。だが、バイオシミラーでは承認を受けるためには、ジェネリック医薬品に比べて、もっと複雑な検証を受けなければならない。たとえば、ジェネリック医薬品の場合には臨床試験は必要ではないが、バイオシミラーでは臨床試験が必要になる。


(つづく)

 

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