2024年03月29日( 金 )

元「鉄人」衣笠祥雄氏が斬る!~宮崎キャンプ開始

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 最近では、2月1日のキャンプ解禁を待たずに、「自主トレ」という名目でキャンプ地のグランドで選手それぞれが練習を始めているから、何か「キャンプ解禁」という言葉にインパクトがなくなって聞こえてくる。だけど2月1日は、2月1日だ。この日から、今年のチームの成績、個人の成績に大きく関係してくる、1カ月間のキャンプ地での練習が始まる。
 何より1月31日夕食後に行われるチーム・ミーティングで、監督の口から監督の言葉で、今年のチームの「目標」や「戦う方向」「戦略」、それぞれの「役割」といった、いろいろな今年の重要事項を選手やスタッフに伝えるという、最も大切な儀式が行われる。
 野球というチームスポーツでの目標は「優勝」――これしかない。この優勝するための練習が明日から始まるのだということを、どこまで選手に伝えることができるか。それが監督の言葉の技量にかかっている。

baseball 今回は、そんなキャンプを行う場所について、とくに宮崎でのキャンプ地について、少し説明をしたいと思う。今年は1球団がアメリカに渡り(2月1日から14日)キャンプを行うが、後の11球団は宮崎、沖縄の、使い慣れた球場での練習が始まる。

 アメリカに渡る1球団――日本ハムがアリゾナに渡りキャンプを行うことには、同球団に若い選手が多いということも関係しているのだろうか。若い選手に、アメリカのキャンプ地の施設というものを見せ、ここに集まる選手の野球に対しての取り組みを見せ、機会があればメジャー・リーグのトップの選手の練習が見られるかもわからない。そのようないろいろな経験をさせてあげたいがために、行くのかもしれない。
 私も若いときには、球団の計画で24歳のオフのときにフェニックスの教育リーグに行かせていただき、次の年の春にはチームでアリゾナ・ツーソンのインディアンスのキャンプ地に行かせてもらい、この年のオフにはフロリダにあるパイレーツのキャンプ施設で練習をさせていただいた。アメリカのキャンプ地というものの凄さを目にし、選手の目の色の凄さを見せてもらい、若い選手が必死にメジャーにしがみ付いている姿を目の前にして、本当に良い経験をさせていただいた。
 それだけに、今回の日本ハムのこのキャンプが、若い選手に大きなインパクトを与えてくれると嬉しいと思う。そして2次のキャンプ地である名護市営球場での練習で、その成果を見せてほしい。

 宮崎で行われる巨人軍のキャンプ地は、メイン球場が内外野に芝生が貼ってある素晴らしい球場である。日本では、ここと広島の球場、神戸の球場の3カ所が、素晴らしい野球場と言えるのではないだろうか。ここで練習できる選手は毎日気持ちが良いことと思うが、それは見ている人間の感想であろうか。でも素晴らしいところである。
 ただ、ここの問題点はブルペンが遠いこと。このブルペンのそばには立派なドームがあり、これも素晴らしいのだが、少し遠いのが難点である。ドーム内は、少し無理をすれば内外野に一度にノックができるほどの広さがあり、人工芝も立派で、施設としては文句のつけようがない。だから雨が降っても、練習にはまったく支障が出ない。巨人軍はここでキャンプの前半14日まで練習し、16日から沖縄での練習に入る。キャンプの練習での前半戦で、どこまで高橋新監督の意思が選手に伝わるかが見ものだ。

 そのすぐ隣には宮崎市営球場があり、ここで2月1日から29日まで、昨年の王者・ソフトバンクが練習を行う。巨人が練習しているところが県営球場で、ソフトバンクが市営球場ということで、流石にキャンプ地・宮崎といったところである。
 ここの球場は県営と違い、コンパクトにまとまりを見せていて、メイン球場のすぐ隣に大きな広場という感じの四角いグランドがあり、2軍の選手が練習をしている。そしてレフト後方には立派なドームがあり、プルペンがあり、打撃練習マシンが備えられて、まったくもって満点のキャンプ施設と言えると思います。
 王監督、秋山監督、そして昨年の工藤監督と、このメンバーに共通しているのは、何度も複数回日本一の経験を持っているということではないだろうか。これは、根本監督が願っていた路線かもわかりません。勝てるメンバーを集めたら、勝てる監督を持ってくる。すなわち、勝つ経験をしてきた監督ということになると思われる。何よりこのチームの強さの元は、オーナーである孫氏の熱意だろう。今年も恵まれた施設で、選手たちは日本一を目指して練習すると思う。勝つということは、それほど素晴らしいということなのである。
 一つ心配することは、勝ち続けることの難しさ。人は、同じことをしていると、不安になることがある。新しいことに取り組むことで、時として歯車が狂うこともある。不安を挙げるとすれば、この点だろう。

 次に、日南市で練習を始める広島東洋カープ、ここ何年、多くのファンの皆さんをがっかりさせる終盤の戦いを今年こそは何とかしてほしいものだが、どんな練習をするのか――。
 この球場は少し前にリニューアルされて、観戦スタンドも、グランドの土も、以前に比べると本当に良くなった。このメインスタジアムとライト後方に立派な屋根付きのブルペン、その横に投手の守備練習ができるグランドがつくられた。長年使わせていただいているグランドだが、まだまだ改良をしている。レフトの後方のサブグランドに屋根が付いているのだが、少し古くなっているため、ここも改良したいところだろう。コンパクトな練習場だと言えると思うが、あとは打者の成績を上げるために、マシンの打撃練習の場所がもう少し欲しいところ。
 今年は緒方監督の2年目である。1月31日にどんな言葉で、選手やスタッフに自分の野球を伝えたのだろうか。今年は、自分の目指す野球に対して遠慮なく頑張ってほしいと思うだけに、このキャンプで、どこまで自分の言葉を使って練習するかが、ポイントになるだろう。

 そこから15分から20分ほど車で走ると、南郷中央公園野球場があり、ここが埼玉西武球団のキャンプ地である。昨年は開幕で失敗したシーズンを送り、選手もスタッフも苦しい思いしかなかったのではないだろうか。このチームは、もっと力があると思うだけに、残念な昨年と同じことを繰り返さないようにしてほしい。そこのところを田辺監督が、どこまでオフの間に原因を見つけられたか。キャンプでその点を修正することができるかを、しっかりと見てみたい。
 私が問題点と見ているのは、若さが感じられないことだと見ている。メンバーはまだ発展途上の選手が多いのに、変に落ち着いて見える点がある。もっと相手に向かっていく荒々しさが欲しいと思う。そこからこのチームの良さが生まれてくるような気がするのだが、田辺監督はどう感じているだろうか。

 今年は、5つのプロ球団が宮崎にキャンプに来た。昔々には近鉄が来ていて、ヤクルトも来ていた。さらには中日も来ていて賑やかだっただけに、オリックスが来るということを聞いた宮崎の人は喜んだことと思う。
 オリックスは、2月1日から28日まで清武総合運動公園に腰を落ち着けて練習に励むということだが、初めての球場で少しやりにくいところもあると思う。だが、地元の方も大いに喜んでいるだけに、プロ野球の練習を身近に、大人にも、子どもにも、しっかりと見せてあげて欲しいと思う。昨年、故障者が多く出て苦しいシーズンを送った福良監督だけに、チームの復活をかけてのキャンプを頑張って、良い練習をして欲しい。

 キャンプでは、監督が考えてきた今年のメンバーができる野球――「攻撃」「守備」「作戦」「戦略」――これらをしっかりと選手に定着してもらうために時間を使うときなので、これからテレビ、新聞等で流れてくる監督のコメントをしっかりと見て、今年のチームの準備を見ていきたい。

 

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