2024年03月29日( 金 )

元「鉄人」衣笠氏が斬る!~祝・黒田投手200勝達成!

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 「次の200勝は誰が来るのかな?」――と長い間考えていたが、広島の黒田投手が日米通算200勝の記録を達成した。

 200勝投手が生まれにくくなってきた大きな原因は、登板試合の減少だろう。
 私がプロ野球に入団した頃の各チームの主力投手の登板数は、だいたい32~35試合が記録されていた。だが、最近の主力投手の登板数は、27試合ぐらいが多い方ではないだろうか。投球回数も、今では200回を投げる投手がリーグに1人か2人がいいところで、300回を超えて投げていた投手がいたことが嘘のように感じられる。

 そんな時代だから、200勝を記録する投手は当然少なくなり、出にくくなってしまった。そうしたなかでの黒田投手の快挙には、万歳と言うほかない。

baseball2 そしてもう1つ、今回の黒田投手の200勝達成には、最近の投手が200勝を達成するための方法論が隠されているようで、これから続く投手に、大きな勇気を与えることが含まれていると思う。
 それは、「一度も20勝を記録していない」点である。これが、いかにも今の時代の投手の記録という感じが私にはするのだ。昔の投手は、20勝は当たり前で、30勝を記録している投手も多く、スタルヒン投手や稲尾投手のように42勝という考えられない勝利数を記録している投手もいる。だが、今ではそんな数字はとんでもない世界で、絶対にできないと言える野球界になった。

 黒田投手は、1年目の1997年に23試合に先発、135回投げて6勝9敗、防御率4.40という数字を残している。これが200勝への道の始まりとなる。入団時に華々しく10勝、15勝という数字でスタートしたのではなく、6勝したが9敗という苦しい経験をして初年度を終えており、防御率も4.40である。これらの数字を見ると、今の若い投手も勇気が湧くだろう。
 ただ、評価できるのが、135回投げている点である。ここから、身体が強いというところと、手入れをしていた点がうかがえる。プロ野球の選手は、投手であれ野手であれ、試合に出るということが大切なのだ。その点が評価できると思うから、見習ってほしい。もちろんそのなかには、首脳陣の信頼という点も入っている数字だ。

 翌2年目はもっと苦しんだ。勝ち星は1つで、4敗。45回の投球回数で24個の四球。防御率は6.60。何度も心が折れそうになったことだろう。でも、頑張って前を向いていた。
 3年目に5勝8敗、87.2回の投球回数。4年目には144回の投球回数まで復活して、先発で9勝6敗。初めて、勝ち星が負け数を上回った成績を残している。この年は29試合に出ていて、投手陣の中心的存在になってきている。
 5年目には27試合に先発して、13完投。12勝8敗という数字を残して、190回を投げている。防御率も3.03ということで、セ・リーグのなかに出しても恥ずかしくない投手になってきた。面白いところでは、四球が45個と少なくなってきているが、死球が8個と相手打者に踏み込ませない威嚇をしているようにも見える数字が残っている。

 この5年間が、黒田という投手にとって、大きな財産になったことと思う。苦しみながらも、前に前に、どうすれば自分の投球ができるかを考えに考え、多くの人からアドバイスをもらいながら頑張っている姿が思い浮かぶようだ。
 人はどこかで、しっかりとした基礎や基本を、技術的にも精神的にもつくらなければならない時期が来る。その意味では、黒田投手のプロの投手としての基礎や基本は、この時期に構築されたのではないだろうか。だから、少々の不調に見舞われても、めげることなく頑張れるのではないだろうか。そんな気がしてならない。

 名球会がすべてではないが、良い区切りの数字だと思う。
 打者は2,000本のヒットを記録しなくてはならないのだが、1年間に150本のヒットを記録しても、13年半の時間がかかる。投手の200勝も同じように、時間のかかる記録だと思う。
 そして250セーブ。時代とともに野球の役割も変化してきており、入団早々から抑えの切り札投手の役目をする投手にもチャンスをということで、セーブ記録も名球会入りの条件に入ったということだ。試合数も我々の頃から見ると多くなり、打者の2,000本ヒットや、投手の250セーブは達成するのに楽になってきているが、先発投手の200勝はこれから苦しくなるのではないかと思われる。

 そんなときに、今回の黒田投手の姿は、若い投手たちに大いに勇気を与える記録ではないかと思う。なぜなら、年間20勝しなくても、200勝に到達できる見本のように見えるからだ。
 黒田投手は、最高に勝ったシーズンが2012年のヤンキース時代の16勝、次いで05年の広島での15勝という数字だから、飛び抜けたシーズンを持たなくても、身体のコンディションを整え、勝利に向かって努力を重ねていけば、200勝が見えてくる日が必ず来るというお手本ではないだろうか。
 今から頑張る多くの若い投手たちには、ぜひ最も身近なお手本として、苦しいときには頭のなかで黒田投手を思い出して、頑張ってほしいと思う。

 そして、おめでとう黒田投手!!!これからも頑張ってほしい投手である。

 

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