2024年04月19日( 金 )

カンボジア視察レポート(4)~卒業証書授与式

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 データ・マックスは9月8日から12日にかけて、恒例のカンボジア視察ツアーを行った。今回の主な目的は、社をあげて支援してきたトゥールポンロー中学校(バンテイメンチェイ州)の卒業生たちへの卒業証書授与。成長を続ける同国の現状を、実際に見聞きする良い機会でもあった。
 カンボジアは経済成長と人口増加の勢いで活気に満ちているが、地雷問題、不十分な教育環境など現在進行形で取り組むべき課題が山積している。現地での体験から見えてきたものをレポートする。

中学校は地雷原につくる

2 1校目、佐世保JCが建設支援したコントラーイ夢中学校に到着。青い空の下、校庭に白いシャツに黒いズボンやスカートをはいた中学生たちが出迎えてくれた。車を降りると、湿度が高くもわっとした空気。さすがに昼間は暑い。一気に汗が出てきた。

 コントラーイ夢中学校は2008年9月に設立。当時CMCの駐在員が訪れた際、小学校からわずか200mの距離にある民家の庭で不発弾が発見された。地雷や不発弾が日常のなかに存在していた。

 中学校の建設支援をする際、通える距離に中学校がないという条件は当然考慮されるが、CMCが重視するのは地雷原につくる、ということ。そうした教育施設が建てば、その地域の地雷撤去の優先順位が上がるからだ。弊社が支援したトゥールポンロー中学校の地域もまた、かつては地雷原の真っ只中にあった。

 今年のコントラーイ夢中学校の卒業生は27名。そのうち23名が高校へ進学するようだ。卒業できない生徒も数名いるという。カンボジアでは、中学校を卒業するために「卒業試験」に合格しなければならない。落ちた場合、留年することもできるが、たいていは中退するという。卒業して高校に進学しない生徒は、家の仕事を手伝うことが多いと聞いた。カンボジアの学校制度は日本と同じく「6-3-3-4」制だが、生徒の年齢は入学遅延などの原因で同じ学年でもバラバラだ。

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 コントラーイ夢中学校の卒業証書授与式は校庭で行った。中学校建設支援を手がけた際に佐世保JC理事長を務めていた曽和英徳氏が祝辞を述べ、当時副理事長だった一田晶壽氏が記念品を手渡す。そもそもカンボジアに中学校を建てたきっかけは、プノンペンにある孤児院に1週間滞在した際、子どもが「自分の国で役に立つ人材になりたい。そういう子どもを育てる教育をしてほしい」と言われたことが、その後もずっと頭の中に残ったからだったそうだ。JCから身を引いた後も、こうして毎年卒業証書を渡しに訪れるのだという。

 全員で記念写真を撮影した後、次の目的地トゥールポンロー中学校へ向かう。車でおよそ1時間の距離。昼食をはさんで向かっていると、先ほどまでの青空が嘘だったかのように大雨が降りだした。国道6号線を外れ、舗装されていない道を行く。以前は歩いていかなければならない道だったが、ドライバーは強気にも車でぬかるみの中をガンガン進んでいった。

 幾度かスリップしながらも、無事トゥールポンロー中学校に到着すると、大雨のなか校庭で子どもたちがサッカーをしていた。卒業生たちは教室で待っていた。

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 弊社から卒業生たちに祝辞を述べ、記念品を贈る。卒業証書と記念品を手渡す際、一人ひとりの名前を呼んだ。コントラーイ夢中学校でも行ったが、これがよく盛り上がる。移動中の車のなかで練習していたものの、クメール語の発音は難しい。それでもなんとか伝わり、卒業生たちは急に日本人から名前を呼ばれたことに驚きつつも照れ笑う。いずこの中学校でも、生徒たちはみなシャイで控えめだった。

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 トゥールポンロー中学校の卒業生は20名、うち17名が高校に進学する。どちらの中学校も卒業生数が以前よりも増えていた。カンボジアは急成長を迎えているが、現状教育環境の整備が十分ではない。就職には英語や数学での一定の学力が必要とされるが、ほとんどの企業で入社後に再教育が必要な状況だ。

 揃って記念写真を撮影。その後、弊社から奨学金を支給する中学3年生になる男子タエム・レアウサーくんと中学2年生になるミエン・クンティアさんに話を聞く。2人とも現時点で優秀な成績を収めており、大学入学まで見通せそうだ。タエムくんは将来弁護士になりたいという。毎年言うことが変わるそうだが、この年頃ではよくあることだろう。ミエンさんは「高校の先生になりたい」と真っ直ぐな目で話す。まだ子どもながら確固たる意志を感じさせ、今後大きく成長していく予感を漂わせていた。

4 旅程の都合上、滞在時間は短く、子どもたちと遊ぶことはできなかったが、わずかな時間でも交流できたことが心に残った。シャイで控えめだが、子どもたちはみな明るい雰囲気で、屈託のない笑顔を浮かべていたのが忘れられない。佐世保JCのお二人が、いまだに毎年こうして卒業証書授与に来られるのに強く共感を覚えた。

 シェムリアップへ戻ると、もう日は暮れていた。ほとんどが移動時間で1日が終わったが、中学校2校をまわって、実際に卒業生たちと会い、笑顔を見たことで充実感にあふれていた。少し休憩したのち、佐世保JCの方々と「パブ・ストリート」へ食事に向かう。こうした新たな出会いこそ、旅の醍醐味だ。

(つづく)

 

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