2024年03月29日( 金 )

一概に否定できないトランプ新大統領米国重視主義

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、就任が迫り、改めて発言に注目が集まるトランプ米次期大統領が掲げる「米国第一主義」について考察した1月12日付の記事を紹介する。


保護主義が悪で自由貿易主義が善との決めつけは間違っている。
経済学者のリカードが明らかにしたように、それぞれの国が得意な生産物の生産に特化して余剰な財を交換し合うという意味での貿易は全体の効率を高める。

この意味での自由貿易にはメリットがある。自由貿易自体が否定される対象でもない。
しかし、近年問題とされている自由貿易主義、言い換えれば「新自由主義」と呼ばれるものは、上記の国家間の財の取引を行うという意味での自由貿易を超える含意を有している。
その最大の特徴は、資本の移動と労働力の移動という分野を含めて、これを完全に自由にしてしまうとの意味を含んでいるからだ。

一言で表現するなら、「世界統一市場」「世界単一市場」を形成してしまうということである。
このことがもたらす最大の弊害は、所得格差の際限のない拡大である。

「財」と「サービス」に分けて考察したとき、両者の最大の相違は、生産物の移動可能性である。
「サービス」は生産地と消費地が基本的には同一である。最終需要のある地でしか生産することができない。医療行為の輸入、介護サービスの輸入はできない。
これに対して、「財」の特徴は、生産物を輸送できることである。生産地と消費地が一致する必要がない。したがって、自由貿易の試みは、まず「財の生産活動」、すなわち製造業によって推進される。

農林水産業においても、生産物の輸送が可能になれば、製造業と同様の変化が生じる。「財」の生産を行う「資本」は世界の中から最適な立地を選ぶ。「最終的な消費地との距離」「労働賃金の水準」「労働の質」「政治情勢の安定性」「生産可能量」などを勘案して生産地を決める。

製造業の拠点が国境を越えて移動する場合、元の生産地では雇用が消滅する。資本は労働コストの低さに着目して海外移転するから、元の相対的に高い賃金の労働が消滅することになる。
他方、「サービス」の生産では何が起こるのか。「サービス」では必ず「消費地」が「生産地」になる。

※続きは1月12日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1639号「一概に否定できないトランプ新大統領米国重視主義」で。


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・植草一秀の『知られざる真実』

 

 

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