2024年04月20日( 土 )

中国経済新聞に学ぶ~中国経済 三つの困難に直面

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 年に一度の中国全国人民代表大会(全人代、通常国会に相当)が3月3日から15日まで、北京の人民大会堂で行われた。中国経済新聞の取材班が今回の全人代について取材を行ったところ、中国経済の前途と面している問題について、依然として代表者たちが憂慮していることがわかった。2016年、中国のGDP成長率は6.7%であった。今回の全人代において、中国政府は2017年のGDP成長目標を6.5%に下方修正した。

 李克強総理の記者会見での説明によれば、中国経済が後退している根本的な原因は二つあるという。一つは中国政府が強心剤を注射するような刺激の政策で成長率を維持するのではなく、軟着陸式の経済発展を目指して産業構造を変化させていること。もう一つは、世界全体の経済・貿易の不景気によって交易量が低下し、中国経済に影響していることだ。

 それでも、李克強は依然としてこのように強調している。「去年、世界の経済・貿易成長率が7年来の低さという状況の中で、中国は依然として中高速の成長を維持している。この数年の実戦で、中国経済の「硬着陸」論は休めてもいいと証明できた。中国経済は「硬着陸」せずとも、長期的に中高速の成長を維持し、中高程度のレベルに向かっている」。

 中国経済にとって、今年直面している困難は2016年を超えるものである。

 国際環境からみると、トランプが推し進めている「アメリカファースト」政策、および中米間の巨額の貿易赤字から、貿易戦が引き起こされる可能性が高い。李克強が「2017年の世界経済には、多くの不安定性がある」と語ったとおりである。

 そのため、中国側は観察と協調が不可欠であり、同時にアメリカの貿易圧力に対抗する準備も必要になる。ただし、李克強はすでに記者会見で「もし中米間で貿易戦が発生するとしたら、最も損をするのは中国にあるアメリカ資本企業だろう」とトランプ政権に警告を送っている。

 中国国内については、生産性過剰の問題の解消にあたって、今年は最も重要かつ最も困難な時期に突入している。李克強総理の活動報告で提示された目標によれば、2017年に中国は鋼鉄生産量5,000万トン、石油生産1.5億トンを減少させるという。山西省は中国で最も大きな石炭・鋼鉄の基地であるが、山西省および河北省の代表によれば、2016年の生産性過剰の解消は、主に一部のゾンビ企業を排除しており、実体のある企業には触れていなかった。しかし今年の生産性過剰の解消目標では、一部の生産を行っている企業にも生産停止を行うのだ。これは多くの人員の失業問題だけではなく、莫大な政権問題を引き起こし、同時に経営者の権益保護の問題にもかかわる大事になりうると見られている。もし処理を間違えば、社会が大きく揺れ動くことになるだろう。

 第二に、不動産市場価格の高騰について、政府はお手上げ状態となっている。2016年の一年間で、多くの省都都市において一部地区の不動産価格が倍になっている。平米当たり2万元だった価格が、わずか1年のうちに平米当たり4万元(約66万円)に上昇したのだ。北京・上海の中心部のマンションでは、平米当たり10万元(160万円)にまで高騰しており、東京やニューヨークの価格を超えるほどである。

 しかし、中国政府が不動産市場を整理する決心を下せていないのは明らかだ。李克強の政府活動報告においては、不動産市場の「分類制御」政策による「安定的かつ健康的な発展」という目標を強調している。

 政府のこういった政策に対する中国民衆の読解はこうだ――「不動産価格は下がらない」。中国の著名な不動産開発企業のCEOである任志強は、「生きている間に中国の不動産価格が下がるところは見られない」と明確に考えているという。なぜ政府は現在の不動産市場を維持したがるのだろうか?任志強いわく、地方政府の巨額の債務は、土地を売ることによってしか返済できないという。また、銀行の大部分の貸付金も不動産に用いられており、不動産バブルが崩壊すれば銀行は破産してしまう、不動産が銀行を連れ去ってしまうという。そのため政府は不動産価格を下げようとしないのだという。

 中国の経済発展を阻む3つめの大きな要素は、実体経済、とくに製造業の負担が大きく、利益が出ないことである。今回の全人代会議において、中国の飲料企業・娃哈哈グループ総裁の宗慶后は、自らの企業から政府に治める各種税金・経費の合計が500種類、8,000万元(約12憶8,000万円)にものぼり、すでに企業が維持できないレベルにまで達していることを明らかにしている。

 宗慶后の発言に対し、中国財政部の回答はこのようなものである。調査によれば、娃哈哈グループが実際に納めた「税金」は317種であり、彼らの発表よりも少ないとしている。財政部のこの回答は中国のネット上で「317種って少ないのか?」といった大きな議論を巻き起こした。

 中国の企業家は政府の徴税行為を、最終的に企業を死に至らしめる「太腿の肉を切り落とす」行為と呼んでいる。事実、中国の製造業には「企業を経営するより不動産投資でもしていたほうがマシだ」というほどの困難が立ちはだかっている。企業経営の一年間の利益はゼロということも珍しくないが、不動産投資なら一年間で利潤が倍になるのだ。この現実は中国社会における実業企業の積極性を大きく損ない、その結果として中国製造業はずっとこの困難を脱することができていない。

 李克強総理は記者会見において、政府は5%の財政支出を削減し、1兆元(約16兆円)を調達して企業の負担軽減に充てるとしている。しかし、もし企業への課税が軽減せず、銀行の貸付金が実業に傾くことがなければ、中国経済の健康的な発展は依然として非常に困難になるだろう。


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