2024年04月26日( 金 )

GK川島永嗣が続けた「準備」のすばらしさ

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 サッカー日本代表は28日、ロシアワールドカップ最終予選でタイ代表と試合に臨み、4-0で勝利を飾った。FW久保裕也が2アシスト1ゴール、MF香川真司とFW岡崎慎司がそれぞれ久しぶりにゴールを決め、「快勝」といってよい試合運びでグループ首位に立った。
 この試合でクローズアップされるのは、前述したように大量得点を達成した攻撃陣だろう。FW大迫勇也のケガで先発に返り咲いた岡崎とゴールに恵まれなかった香川がそれぞれ結果を出し、これまで代表を引っ張ってきたFW本田圭佑を押しのけてスタメンを勝ち取った若い久保裕也が、ベテラン勢とも素晴らしいコンビネーションを披露した。「世代交代」と「若手とベテランの融合」という、過渡期にある代表チームが抱える課題に一定の回答を見せたわけだ。

 しかし、注目したいのは23日のUAE戦から続いてゴールを守るGK川島永嗣の存在だ。この2試合で失点は0。とくにタイ戦では貫禄のPKストップとゴール前の混戦からのシュートをはじき出したビッグセーブを見せ、高いモチベーションで90分攻撃を試み続けたタイの攻撃を見事にシャットアウトしてみせた。
 今回の代表に川島が招集されたときは、口さがないサッカーファンからは非難の声が上がった。かつて川崎フロンターレでの活躍で代表入りし、2010年の南アフリカワールドカップではグループリーグ突破の原動力となった川島だが、15年にベルギーの名門スタンダール・リエージュを退団してからは移籍先に恵まれず、現所属のフランスのFCメスには「第3GKだ」と明言されて移籍。トップレベルでの試合経験がなく、日本代表には「経験がある選手は必要だ」というエクスキューズ付きでの招集だった。ネット上には「Jリーグで試合に出ている若いGKを呼ぶべき」という比較的まっとうな意見から「盛り上げ役なら芸能人でも呼んだらどうだ」などという罵倒めいた声までがあふれていた。

 代表レギュラーの西川周作の不調や代表常連のガンバ大阪・東口順昭の負傷によって出場機会を得た川島は、しかしそんな声を吹き飛ばすような活躍を見せて2試合連続完封という素晴らしい結果を掴んだ。不遇の時期が続いた川島が、久々にめぐってきたチャンスをしっかりつかむことができたのは、やはり「準備」を怠らなかったからだろう。無所属の時期も、黙々と練習を続けて移籍先を探し、出場機会が得られなくてもふてくされずにチャレンジを続ける。言葉でいうのは簡単だが、プロのトップレベル、日本代表レベルでそれを続けるのはどれだけ難しいことだろうか。
 サッカーにはGKというポジションは1つしかなく、しかもとくにクラブチームではコミュニケーションが重視されるため、監督はGKの交代には慎重になる。つまり一度出場機会を失うとそれを取り戻すのは非常に難しいのだ。川島が続けてきた準備も、日の目を見ない可能性も十分にあった。にもかかわらず、川島は怠らなかった。それが報われたことを心から喜びたい。

 2試合連続完封という結果によって、川島が代表不動のGKになるというわけではない。まだ厳しいポジション争いは続くが、高いレベルの競争状態を保ったまま、ロシアワールドカップへの切符を勝ち取ってほしい。

【深水 央】

 

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