2024年04月17日( 水 )

配布資料に嘘? 高島市長の出資不要論の危険性~福岡市空港出資問題

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議論が平行線をたどるワケ

 福岡空港の運営を国から委託される民間事業者(以下、新運営事業者)への出資をめぐり、11日から翌朝早朝まで続いた福岡市議会で見えてきたのは、議論の深耕を図ろうとする議会側の求めに応じようとしない高島宗一郎市長の幼稚な政治姿勢だ。

 自民党市議団が高島市長に新運営事業者への出資を求めるよう提案した「活力ある福岡空港づくり基金条例案」は、福岡市民クラブからの修正を加えて3月28日の本会議で出席議員60名(2名棄権)のうち、議長票を除き、賛成39、反対20で可決された。これに対し、市長側は同日の市政運営会議で再度、議会に議決を求める再議を決定。同31日付で議会側にその旨を伝えた。

 再議に付された条例案は、議会の3分の2以上の同意が必要となる。可決の時点で、すでにその条件を満たしていた(議長票は賛成に回るため)ことから、4月11日に行われた本会議では、出席の是非に加え、再議の意思決定に至る経緯や市長側の議会に対する姿勢も問われた。

 争点となったのは、新運営事業者に対する福岡市の関与のあり方だ。市長側は、国の方針が、民営化ではなく国からの民間委託である点を強調し、市街地のなかにある福岡空港の安全対策などについて、わかりやすく言えば「国が監督するから大丈夫」と主張。国交省の通達による法定協議会や「市独自の協議の場」によって立地自治体として関与するとしている。ただし、「市独自の協議の場」については、検討中とするのみで、その詳細は明かされることはなく、実現性は不明。

 一方、議会で出資を必要とする側からは、前議長の森英鷹市議(自民党市議団)が、経営のなかに入り、空港運営に関する情報をいち早くつかみ、それを市民に伝え、市議会における議論を行い、必要とあれば、新運営事業者に意見する必要があると説いた。

 市長側は自治体が口を出すことで民間運営のメリットを阻害するとの懸念を示すが、出資を必要とする市議側は、過度の関与を求めているわけではない。参考までに「(自治体が伝える)地域のニーズを反映することで、民間運営の効果を最大限に発揮させる」という小川知事の方針も示された。しかし、議会側の声を高島市長が一旦受け止めて、そこから議論が発展するようなことはなかった。

 それぞれ市民の代表者であるはずの市長と市議会の議論が、なぜ、平行線を辿るのか。これまでのプロセスを振り返れば、その答えは容易に見えてくる。前述の通り、福岡県が出資する方針を固めたのは昨年6月。一方、福岡市は、今年5月に運営事業者の公募を行う予定を立てていた国から、タイムスケジュール的な問題でせっつかれる形で、議会に諮らず、昨年10月3日に高島市長が出資しない方針を決定し、同13日に出資をしない旨を議会に報告。議会無視といえる重大ミスを後から理屈を付けてごまかそうとしているからである。

最終局面で嘘?

 高島市政の歪んだ政治姿勢の証拠ともいえるのが、4月11日の第3委員会で配られた資料だ。市長側は、本会議で、国が3月24日に出した空港運営の民間委託に関する実施方針について、すでに福岡県のみの出資を前提としている旨を主張。委員会で配布された資料には、スキーム案からの変更点として「関係地方公共団体は、(中略)議決権株式の10%以下の取得」(参照(1))とした。ところが、実施方針の原文では、「関係地方公共団体合計で、本議決権株式10%以下の取得」(参照(2))となっており、「合計」の文言が削られている。国があえて「合計」としたのは、関係地方自治体が複数になる可能性をふまえた結果であると見るべきだろう。

 福岡経済や市民生活にとって福岡空港の重要性を理解し、出資の是非について真剣に考えている市民は決して少なくはないはずだ。一見、出資不要の意見の代弁者に思える高島市長だが、その実態に刮目してほしい。福岡空港の運営に関する無関心。議会側の議論に頑なに応じない逃げの姿勢。一部の市議への圧力ともとれる働きかけ。最終局面の嘘ともとれる事実誤認。とても昨年10月の出資不要の結論が真剣に考えられた結果とは思えない。

 真に市民のためを思い、熟考した末の結論であるならば、なぜ、胸を張って議会側が求める説明に応じないのか。疑惑をかけられ、やましいことがなければ、すぐに潔白を証明できるはずだ。高島市長の出資不要論は、その動機が極めて不純であるとしか思えない。高島市長が永遠に市長であり続けることはない。その失政のツケを払うのは福岡市民である。

参照(1)

参照(2)

【山下 康太】

 

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