2024年04月25日( 木 )

久留米市・欠陥マンション訴訟、控訴へ~行政の建築確認の意義を問う

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「官を守る結論ありきの判決」

新生マンション花畑西(久留米市)

 福岡県久留米市の分譲マンション「新生マンション花畑西」の構造・施工の欠陥をめぐり、「久留米市がずさんな確認申請交付を行なったことにも責任がある」と訴えていた裁判の判決が4月13日、福岡地裁で言い渡され、裁判所は原告である管理組合および区分所有者の訴えを棄却した。この判決を不服とする同管理組合は4月16日、臨時総会を開催し、全会一致で控訴することを決議した。

 臨時総会では、原告代理人である河野聡弁護士から、判決内容の説明が行なわれ、出席者との質疑応答があった。出席者の意見や疑問は以下の通り。

 「久留米市を守るために、建築基準法や確認申請制度を公然と無視した判決だ。控訴し、世論にも訴えるべきだ」

 「我々は専門家に依頼して長時間かけて建物の構造的危険性を具体的に証明してきた。しかし裁判官は建築構造に対する知識不足と間違いに基づく判断でそれらをことごとく排除した。これでは始めから裁判所は同じ官である久留米市を守り、我々の訴えを棄却する結論ありきの裁判だったとしかいいようがない」

 「構造の専門家が建物の構造的安全性が著しく低いことを工学的に証明しているのに、専門家でない裁判長が危険性を認めないのはどういうことなのか」

 「裁判所が問題ないと認めた建物が地震で損傷や人的被害をおこした場合、どのような責任を取るつもりなのか」

 「久留米市擁護にあからさまに偏った一方的な判決を下した裁判長を訴えることはできないのか」

 自分たちの生活や生命に直接影響をおよぼす問題であるだけに、出席者の多くが、真剣な表情で、悲痛な訴えを続けた。ある女性は、「裁判所は、行政や大手企業を守るためには、弱者である市民を平気で切り捨てる。こんな裁判官を罷免できないのは悔しい。これからも、不安を抱いた状態で、毎日、生活しなければならないのかと思うともうやり切れない」と涙ぐんだ。

 河野弁護士から、「鹿島建設との裁判が本筋であり、鹿島建設との裁判が継続している以上、控訴し、我々は建物の危険性に対してさらに立証を追加すべきである」と説明があり、その後、採決となり、全会一致で控訴することが可決された。

 同マンションに関する裁判は各方面で注視されている。裁判の審査過程で久留米市の建築確認における審査能力の根本的欠如が明らかになったことで、同市内の分譲マンションの関係者のなかには、不安を覚える人が少なくはないようだ。久留米市のずさんな建築確認が招いた建造物の耐震強度不足は、今後、大きな問題に発展するかもしれない。

【伊藤 鉄三郎】

 

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