2024年04月24日( 水 )

元「鉄人」衣笠氏が斬る!~エース・四番の育成と外国人選手

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 最近は、各球団外国人選手を登録可能な4人よりも数人多く獲得している球団が目立ちます。故障時の保険ということでしょう。また、多くの球団がお金の余裕があるということでしょう。昔はこんなことはできなかったのですから。それと外国人選手もこちらでキャリアを積んで、メジャーに帰ることを考えている選手もいるようです。それだけ日本プロ野球のレベルが上がったと考えると少しは嬉しいのですが、一方で各球団がフルで外国人選手をエントリーしているということは、日本の若い選手が出場できるチャンスが少なくなっているということにもなり、これはこれで心配です。

 実はこの点を少し前から心配していたのが韓国球界でした。その韓国球界から、こんな心配なニュースが飛び込んできました。

 以前から気になっていましたが、韓国プロ野球の多くのチームでは、エースが外国人選手、四番打者が外国選手です。オリンピックを始め、国際試合には素晴らしいチームを作ってきますが、単独チームだと日本の単独チームに勝てない。どこに問題があるのだろうか?と考えていたのですが、ここに問題が潜んでいたのです。

 外国人選手に頼りすぎて、韓国人選手が中心選手として機能していないのではないだろうか? そんな印象を持っていたところ、思わずなるほどと思わせられるニュースがこれでした。

 今年の韓国プロ野球で10球団開幕投手すべて外国人投手だった。という報道です。

 開幕戦を任せられる韓国人投手が何処の球団にもいないという現実。確かにWBCに参加している投手もいるでしょうが、全球団となると多すぎますね。

 ちなみに日本は3球団であった、広島のジョンソン投手。これは実績から見て当然でしょう。阪神のメッセンジャー投手、ここも良いでしょう(本来は藤浪投手に頑張って欲しいのですが)。巨人がマイコラス投手ということですが、これはWBCの関係(菅野投手という本命がいます)での登板と思いますから、実質2チームということです。

 韓国と違い、今のところ日本は投手が育つ、投手を育てる場所を持っていますから、大きな心配はしていません。

 それは、全国の高校球児の憧れる甲子園大会という素晴らしい大会です。出場したければ良い投手を揃えなければいけません。だから高校の各チームの監督さんは一生懸命に投手を育てようとします。これが、日本に優秀な若い投手が多い理由の一つです。
 韓国にもこの様な素晴らしい大会が生まれればこの問題は解決できるはずです。ここに気が付いて欲しいのですが。

 同じような問題ですが、こちらはどう解決するか?答えが見つかっていません。

 それは四番打者問題です。これは日本もまったく同じで、最近やっと筒香嘉智選手、中田翔選手という2人が出てきて、日本球界には少し光がさして来たかな?と喜んでいたら、WBCが終わってから、筒香選手は自分の打撃を見失い、中田選手は故障。さみしい限りです。

 チーム別に見ていきましょう。巨人は今年は阿部選手が頑張っていますが、年齢も高く故障が心配です。次の4番は?広島は今のところ鈴木誠也選手が出て来そうで楽しみです。ただ今年どこまで成長するか?今までのように精神的に楽なポジションではないということを今年経験して、乗り越えなくてはいけません。阪神は?見えません、はたして誰が掴むのでしょうか。DeNAは筒香選手にどうしても頑張ってもらいたい。日本の野球界のためにも、チームのためにも。中日は平田良介選手がいるのだけれど、今年あたり首脳陣から確たる信頼を勝ち取って欲しい、ヤクルトは?考えるとバレンティンをはじめとした外国人選手という結論を出します。確かに日本人選手と比べると体力、パワーが優っているだけに、4番打者に求める条件を満たしています。

 開幕時のパ・リーグの4番打者を見るとソフトバンクには内川聖一選手。後にはデスパイネ選手が控えています。日本ハムは長年中田選手が頑張っています。ロッテはパラデス選手。西武は中村剛也選手が頑張って欲しいと思うと同時に、そろそろ浅村栄斗選手に次の4番打者としての準備に入って欲しい。楽天はまだ若い球団だけに難しいところがありますが、優勝したシーズンのアンドリュー・ジョーンズ選手の姿を思い出して、次の若い選手たちに頑張って欲しいと思います。オリックスにはロメロ選手が加入。こうして見るとやはり、各球団で「日本人四番打者」が順調に育っているとは言い難いですね。このまま何も考えないで行くと韓国の投手事情と同じようになる危険性が潜んでいるでしょう。

 私の見方ですが、1番打者や2番打者は比較的短い時間で教育でき、育てることができると思います。しかしパワー溢れる打球を飛ばす中軸打者は失敗も多く、時間がかかると思います。その間、はたしてチームの首脳陣は待てるでしょうか? 選手獲得時にしっかりとした計画を立てて、将来の中心選手の育成をして欲しいと思います。選手は一人では成長できません。しっかりとした理論、経験を積んだ指導者に責任を持って指導させることを忘れないでほしいですね。そして試合の中で経験を積ませ、考えさせて鍛える。

 待てる球団は中軸打者を育てることができますが、待てない球団は外国人選手を呼ぶことになるという現実。球団フロントとしては自分のチームの戦力をアップし、成績を上げるための仕事をしているわけですから当然です。しかし日本野球界の未来を考えると、この問題も同じことを繰り返すのではなく、各チームが自前で育てるということを考える時期に来ていると思います。
 何としても今回この問題を解決する方法、努力を見せて、将来に繋げたいものです。
 4月23日(日)、この日行われた6試合の先発投手12人のうち、5人が外国人投手でした。
 「明日は我が身」という言葉を忘れてはいけないと思います。

2017.4.23
衣笠 祥雄

 

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