2024年03月29日( 金 )

いまだ延焼続く嘉麻市産廃火災、2万m3のごみが野積み

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事実上の“違法最終処分場”

 5月28日昼過ぎに出火した、福岡県嘉麻市の(有)エコテックが運営する産業廃棄物中間処理施設の火災は、6月2日午前10時現在、いまだ延焼が続いており、ところどころ火が出ているのを確認。県内の自治体と消防本部に対する福岡県の出動要請に基づき、県内の各消防本部からも消防職員、消防車、消防機材などが出動し、不休の消火活動が続いている。現場検証は鎮火後となるため、現時点で出火原因は不明。

 エコテックは、2003年8月に設立された産業廃棄物処理業者。工場や産廃収集業者のほか、一般企業や店舗の産業廃棄物の中間処理、塩ビ管のリサイクル、解体工事などを手がけていた。県によると、同施設の1日の処理量の14日分に相当する3,770m3が法定上限となっていたが、今回の火災発生時には、その5倍以上の約2万m3のごみが施設内に野積みされていたという。

 県は、上限を超えるごみの撤去および適正な処理を求め、12年5月22日、改善命令書をエコテックに交付して以来、履行催告書を計6回、厳重注意書を計2回にわたり交付し、改善を求めていた。また、同施設における出火は今回が4回目。06年8月に焼却炉から1回、15年3月にはごみから2回のぼやがあった。地元住民の不安が強まるなか、今年3月11日、県の仲介および立ち合いのもと、エコテックによる地元説明会が行われ、同社は今年度中の改善を約束していたという。しかし、それでも状況は変わらず、火災という最悪の事態に陥った。

 長年、福岡県の産廃問題に取り組み、今回の産廃火災でも現地視察を行っている福岡県議会 厚生労働環境委員長の原中誠志県議は、「問題視すべきは、5年の間、現場の状況を認知していながら、結果として状況が改善されず、大量の野積みのごみが放置されていた点にある。なぜ、県は、ごみの搬入を停止させなかったのか」と指摘する。背景にあるのは、環境問題や周辺住民への影響などから、最終処分場の増設が難しいなか、ごみの行き場がないという問題だ。エコテックは、エコやリサイクルをうたう中間処理業者のはずだが、実際のところ、中間処理は後回しで、施設内にごみを搬入し続け、大量に野積みしていたという実態が浮き彫りになった。事実上の“違法最終処分場”だ。

 ごみを大量に放置し続けてきた代償は大きい。ごみの燃え殻や灰は、最終処分場での処理が必要となり、多額の費用がかかる。汚染問題による損害賠償の可能性も低くはない。エコテックの資本力がもたなければ、県が代わって処理を行う行政代執行となることが考えられる。その場合、県民の血税が費やされることになるのだ。「同じ問題を繰り返さないためにも、火災の後処理を適切に行うとともに、すべての中間処理業者の実態を把握しておく必要がある」と、原中県議は警鐘を鳴らす。

【山下 康太】

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