2024年03月29日( 金 )

ふくおかFGと十八銀行~経営統合は無期延期に

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 日経新聞の7月21日(金)付の朝刊で、「地銀統合 無期延期に」の見出しで、ふくおかFGと十八銀行が公正取引委員会との溝が埋まらず、経営統合の時期を「未定」としたまま再延期する方向で最終調整に入ったと報じられた。
 それに対して、ふくおかFG(柴戸隆成取締役社長)と十八銀行(森拓二郎代表執行役頭取)はそれぞれ、21日付で別紙の通り「本日の報道について」と発表した。

十八銀行の発表内容 (一部抜粋)

 本日、日本経済新聞において、当行と株式会社ふくおかフィナンシャルグループの経営統合の時期に関する報道がなされておりますが、これは当行が発表したものではございません。本件経営統合の形態として協議・検討を行っている株式交換の効力発生日および本件経営統合後に予定している株式会社親和銀行と当行の合併時期を、それぞれ平成29年10月1日および平成30年10月に予定しておりますが、これらの時期に関し、現在両社で延期することを協議しているのは事実であり、今後決定した場合は、速やかにお知らせいたします。

以 上

 ふくおかFGと十八銀行の発表内容は、「当社」と「当行」という言い方が入れ替わるだけで文面はまったく同じである。この文面の後半にある「これらの時期に関し、現在両社で延期することを協議しているのは事実」とし、「経営統合が無期延期」となることをやむなく認める内容となっている点だ。

 麻生太郎・副総理兼財務相は21日の閣議後の記者会見で、「期限を切らないイコール(可能性が)ゼロではない」と語り、両行が統合する方向性は変わらないとの見方を示したと伝えられる。
 かつて日銀出身者が頭取ポストに就いていた福岡銀行。一方、金融庁出身者が頭取ポストに就いていた十八銀行。今は両行(含むFG)ともプロパーが頭取となっており、経営統合する環境は整っていたと言えよう。
 麻生氏は福岡8区選出の衆院議員である。そのため、地元のふくおかFGが十八銀行と経営統合して、昨年誕生したコンコルディアFG(横浜銀行と東日本銀行が経営統合)を抜き、再び地銀トップの座に復帰する――その動きを後押ししていたと言われる。

 地方銀行は、人口の減少にともなう地域経済の縮小を受けて、厳しい経営環境に陥っている。それに追い打ちをかけたのは、日銀が昨年1月29日に導入したマイナス金利政策だった。
 ふくおかFGと十八銀行は昨年2月、電撃的に経営統合を発表。今後予想される地銀の経営統合のモデルケースと見られていたが、この経営統合が独占禁止法に抵触するとして、公正取引委員会が待ったをかけたのだ。経営統合を推進する金融庁に対し、シェアが70%以上になるとのことで審査に慎重な公取委との対立が、その大きな理由だ。「官 対 官」の戦いのなかで、公取委が筋を通したということになろう。

 いずれにせよ、近々ふくおかFGと十八銀行は正式に「無期延期」を発表することになる。麻生氏は、無期延期だから経営責任を問わないとも取れる発言をしているが、誰の目から見ても「経営統合は失敗」であり、トップが経営責任を負うことになるのは必定だ。
 果たして、プロパーがふくおかFG社長および十八銀行頭取のポストを継ぐことができるのか――。あるいは、これを好機ととらえ、失ったポストを再び取り戻したいとの思惑を秘める官のしたたかな動きも、今後の焦点となりそうだ。

【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

 

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