2024年04月25日( 木 )

元「鉄人」衣笠氏が斬る!~仕上げの時期

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 今年も、セ・リーグのペナントレースでマジックを最初に点灯させたのは、カープだった。
 高校野球もベスト16に入り、さすがに強いチームが絞られてきた。最近、私が感心しているのは、高校生の打球の速さだ。みんな、素晴らしい打球のスピードを持つようになった。投手の人も大変だと思う。だから、変化球が増えてきたように思う。もう少しストレートで押すところも見たい気がするが、プロ野球の影響か、ボールの握りが多彩になり、昔との違いがはっきりと見えるようである。

 8月に入り、すぐに「33」という数字が新聞に大きく載っているのを見ながら「今年も強いね~」「他球団は何をしているのかな?」といったような気がするペナントレースの進み方を見せているカープだが、シーズン前のキャンプに入るときには、3つの大きな問題があるように見られていたのではなかっただろうか。

(1)若手ばかりの先発投手で持つか。ジョンソン投手、野村投手しか実績というか安定感を感じられなかった投手陣(福井、岡田、大瀬良、九里)。この時点で、薮田投手、中村投手、床田投手は構想に入ってなかったと思う。ここの心配が、まず多くの新聞社、評論家の方にはあったはずだと思う。
(2)4番に育てる計画の鈴木選手が耐えられるだろうか、順調に育つだろうか。
(3)新井選手の疲労感が、どのぐらいで取れるだろうか。体調がいつぐらいに元に戻るだろうか(エルドレッド選手との使い分けがスムースにできるようになるにはどの時期になるのか)。

 簡単に見て、この3つは絶対に出てくる疑問ではなかったかな?

 というところで蓋を開けてみると、岡田投手は勝つわ、九里投手はフラフラしながらも勝ち星を拾い、昨年まで勝ち星にあまり恵まれなかった大瀬良投手が負けない投手に変身。先日初めて負けたが、投げれば勝つのだから。ジョンソン投手はもう1つ乗れていないが、あてにしなくても他の投手が頑張っている。野村投手は勝ち星にはそんなに恵まれていないが、自分の投球をしっかりとマウンドで出してくれ、相手打線を抑えている。そこに計算していなかった薮田投手、中村投手という投手がしっかりと勝ち星をチームに運んできて、まったく不安のない先発投手陣が完成。誰も不安を口にしなくなった。
 ここに中田投手、一岡投手、ジャクソン投手の中継ぎ、今村投手、中崎投手の抑え。このように、投手陣は安心して見られるだろう。

 3番目の新井選手が代打でしっかりと良い場面でチームに貢献し、チームを勇気付けている。先発での出場はまだ少し難しいようだが、まずまずだろう。

 その新井選手が昨年勤めていた「4番」のポジションだが、鈴木選手は、シーズンの最初のころはさすがに少し心配するような場面が見られたが、交流戦ごろからはすっかり馴染み、今では立派な「4番打者」に成長したと思う。数字の世界を見ても打率0.304、本塁打25本、打点はトップの88点と、首位を走っているチームの4番打者として相応しい成績を残している。そして何より、打席での雰囲気が「4番」になってきた。シーズン当初は甘い球を随分とファウルにしていたが、このごろは簡単にヒットにし、本塁打にするようになった。ファンの方も、この姿を見ると安心なことだろう。

 我々が入団したころによく言われた言葉に、「投手のスピードは天性のものだ」「打者の飛距離は持って生まれたものだ」というものがある。たしかに今でも、大谷投手の160キロは天性のものだろう。簡単につくることはできないと思う。だが今なら、練習によって145~150キロぐらいまでならつくれる方法論があると思う。
 この投手、野手の言われていた言葉が、最近では「投手の天性の部分は『コントロール』であり、打者の天性の部分は『選球眼』である」と言われるように変化してきた。両方ともに、精神的な部分を問題にしていると思う。
 投手のコントロールを生むのはバランスの良い投げかた、ボールを離すタイミング、体の中心のポイントの持って行き方、ここがうまくできれば良い回転ができ、素晴らしい投球ができると思う。
 では、打者の飛距離では、良いタイミング、良いポイント、そして体のバランスの3点を挙げる。これで間違いなく良い回転ができるから、飛距離は伸びる。よく考えたことだが、タイミングとポイントでヒットは打てるが、本塁打にはならなかった。本塁打にするにはバランスが必要になるということを、長年の打撃練習で学んだ。

 投手も野手もこの点を大事にすることにより、ここの部分の成績は伸びるだろう。そこのところが、鈴木選手には備わってきたように見え出した。だから、簡単なボールを簡単に本塁打にできるようになってきたと思う。この半年、ここが成長の跡として見える。

 ここから先、少しは勝つのに苦しい試合もあるだろうが、もはやカープのセ・リーグでの優勝は間違いないだろう。

2017年8月19日
衣笠 祥雄

 

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